賃貸物件オーナーにとって、火災保険とは
火災保険は、賃貸オーナーにとっても重要なリスクヘッジの手段
個人の一般世帯では、住宅建物を所有している場合、建物と家財それぞれに火災保険をかけています。マンション一棟など建物を丸ごと所有している賃貸物件オーナーや、分譲マンションの一室を所有するオーナーも、所有する建物部分についてそれぞれ火災保険をかけているでしょう。そして、個人の一般世帯にとって大切なのと同様、賃貸オーナーにとっても火災保険は、不測の事態が及ぼす事業上のリスクに対する重要なリスクヘッジの手段です。
なお、建物一棟を丸ごと所有する賃貸オーナーの場合、専有部分や共用部分の区別なく建物全体に火災保険をかけます。一方、分譲マンションを一室所有するといったオーナーの場合は、専有部分の建物について火災保険をかけ、マンションの管理組合が管理する共用部分は、管理組合で火災保険をかけることになります。いずれにしろ、賃貸物件オーナーがかけるのは建物の火災保険で、家財については入居者自身が火災保険をかけることになります。
賃貸物件オーナーは、被災者生活再建支援金を受け取れない
さて、昨今では地震や風水害をはじめとした自然災害が頻発しています。オーナー自らがコントロールすることが不可能な災害で被害を受ければ、賃貸オーナーの所有物件には多額の修理費が発生することもあります。さらに、借入金のある賃貸オーナーの場合には、所有物件が滅失して収入の手立てがなくなったとしても、借入金の返済義務はなくならないという、最悪の事態を招くことすらあります。
そもそも、一定の災害で一般世帯が全壊等の被害を受けた場合、最大300万円までの被災者生活再建支援法による支援金を受け取ることができますが、一方で賃貸物件オーナーが賃貸物件に深刻な被害を受けても、支援金を受け取ることはできず、自力での再建が求められます。
こうした厳しい状況に陥れば、その後の事業再建どころか、自身の生活再建についても、困難を極めることになるかもしれません。
入居者がいる限り、建物修繕は待ったなし
自然災害のみならず、火災をはじめとした各種災害や犯罪被害等にも注意が必要でしょう。所有物件に自身にはまったく責任のない延焼被害を被った場合でも、失火責任法の適用により原則として火元から賠償を受けることはできません。仮に損害賠償を請求できるような案件であっても、放火など加害者が特定できない災害には、損害賠償を求めることも不可能です。
そのような状況であったとしても、所有物件に入居者がいる限り、建物の修繕は待ったなし。だからこそ、ある程度の不測の事態にも資金繰りに慌てずに済むよう、賃貸物件オーナーこそ火災保険や地震保険を適切に用いることが必要なのです。
めったに起きることではありませんが、ひとたび起これば事業に壊滅的なダメージを与えかねない各種災害への備えとして、保険は合理的な手段。火災被害をはじめ、風水害などの自然災害、車両飛込みなどの突発的な被害など、建物をめぐる種々の深刻な災害に備えることが可能です。
次のページでは、地震保険の適用範囲と、入居者が起こしたトラブル対応について解説します。