土地や一戸建て住宅を購入するとき、敷地と道路および隣地との境界確認はたいへん重要で欠かすことができません。境界をめぐるトラブルは比較的多いため、できれば売買契約を締結する前にしっかりと確認しておきたいものです。
すでに境界標(境界ポイント)があるのかどうかにより確認の段取りや注意点は異なりますが、今回は境界標が存在する場合におけるその見方や、気をつけるべき境界標などについて説明することにしましょう。
境界標(境界ポイント)はその材質によって、石杭(御影石、花崗岩など)、コンクリート杭、金属杭、金属標、金属鋲などの種類があります。古くから設置されている境界標は石杭の場合が多く、たいていはその中心が境界点となっています。
ただし、摩耗などによって中心の窪みや印が判別できないものもあり、そのような境界標の場合には関係者によく聞いて確認することが必要です。また、工事中など一時的な境界標としてプラスチック杭や木杭などが用いられることもあるでしょう。
近年に設置された境界標であれば金属標または金属杭の場合が多く、摩耗や欠落することはほとんどないため、境界点が分かりやすくなっています。十字に溝が掘られているときは、その中央の交点が境界点になります。
金属標や金属杭にかぎらず石杭やコンクリート杭の場合でも、矢印が刻んであればその矢印の先が境界点になります。ただし、コンクリート杭は古くなって破損、欠落しているものも少なからず見受けられ、矢印自体が判別できないような例もあるので注意しなければなりません。
境界標があればそれでよいというわけではなく、境界標の表面のうちどこが境界点なのかを確認することが大切です。
また、矢印ではなくT字状になっている金属標などもあります。この場合には「T」の交点が境界点を示しています。さらに、原則として「T」の上辺および縦のラインがそれぞれの境界線に沿っていることが多いでしょう。
金属鋲にもいろいろな大きさ、種類があるものの、ほとんどの場合はその中心が境界点となっています。鋲だけのものもあれば、笠(キャップ)が付いていたり、ペンキで囲んであったりと、その設置方法もさまざまです。
一方で、矢印ではなく一本線が掘られているだけの境界標もあります。これは「境界点」ではなく「境界線」を明示するためのものです。この場合には、境界点がどこなのか別途しっかりと確認をすることが必要です。
このような金属標が境界点に接して設置されている場合もあるようですが、そのときでも赤線の上下どちらが境界点なのか確認しなければなりません。
自治体によっては、公道との境界などに独自の境界標が用いられている場合もあります。標準的な金属標などに自治体名を刻印したものだけでなく、さまざまなデザインが施されたものもありますが、たいていはどこかに矢印が刻まれています。
ところが、きちんとした境界標ではなく、赤いペンキが塗られただけの場合もあります。
そのような場合は境界としての信頼性は低く、隣地所有者などが境界として認識していないこともありますので、聞き取り調査などを含めて念入りな確認が必要です。境界点を示すものが何もない場合よりはマシでしょうが……。
境界標を確認するときには「それがあること」だけではなく、その位置についてもしっかりと理解することが大切です。
道路との境界を示す点が敷地内にあれば、「敷地が道路にはみ出している」ことになるため、原則として将来、建て替えをする際などにその境界位置まで敷地を下げなければなりません。
これらは敷地と道路の境界確定(境界査定)前に側溝などが整備され、それに合わせて塀などが造られた後に正式な測量が実施されたことにより、結果的に塀が道路へ突き出した状態となったものでしょう。
もちろんその逆で、側溝が敷地へ入り込んだ状態となっているケースもあります。この場合は将来的に側溝の位置が直されるでしょうが、前面道路が私道のときにはあまり期待できないかもしれません。
隣地との境界では、塀などの構造物が越境していないかについても注意が必要です。それが共用の塀であれば問題ないものの、単独の塀などが境界を超えていることが明らかなときは、それを十分に認識するとともに、隣地所有者の意向などについても確認しなければなりません。
隣地所有者は現状を容認している場合も多いでしょうが、隣地で建築計画などがあるときに撤去を求められたり、感情的なトラブルの火種になっていたりすることもあります。
また、まれに擁壁の途中に境界標が埋め込まれている場合もあります。これが隣地との間であれば「共用の擁壁」ということになりますが、道路との間の擁壁のときは「擁壁が道路にはみ出している」という状態です。
直ちに造り直しを命じられることはないとしても、将来的には建て替えの際などにその工事が必要となる可能性も考えなければなりません。
設置時期の異なる境界標が近接して埋め込まれている場合もあります。そのようなときは、両方とも有効な異なる2つの境界点なのか、あるいは古いほうが無効で新しいほうが正しい境界点なのか、しっかりと確認をすることが必要です。
ちなみに、刑法第262条の2では「境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と規定されています。
地上に突き出して通行の妨げになっているような古い境界標もよく見受けられますが、これを勝手に撤去すれば刑法犯となりますからご注意を!
なお、狭あい道路整備事業などにより、4メートル未満の道路のセットバック部分に標識が設置されている場合もあります。これはあくまでも敷地後退位置を示すためのものであり、後退部分を寄附などしていないかぎり、敷地境界(所有権が及ぶ範囲)とは一致しません。
境界標は常に地上に顔を出しているわけではありません。私自身の経験では、(所有者の了解を得たうえで)地面を50センチあまり掘って境界標を探し当てたこともあります。
過去の測量図などに記載され、あるはずの境界標が現地で見当たらないときには、自分で勝手に掘るのではなく、売主から売却の依頼を受けた不動産業者か、もしくは土地家屋調査士などに確認を依頼してください。
また、地上に浮き出して傾いたり、不自然な向きに回転したりした境界標が存在することもありますが、このような場合は境界標の移動が疑われるため、正しい境界点を示していない可能性も高いでしょう。
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