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どうぶつの森のダウンロード版が売り切れる意味(2ページ目)

2012年11月8日、ニンテンドー3DS用タイトル「とびだせ どうぶつの森」が発売されました。ニンテンドーDSで500万本以上の大ヒットとなった人気タイトルの続編ということで瞬く間に店頭から消えてなくなり、売り切れの店舗が続出しました。ここで、少し変わったことが起こりました。というのは、売り切れたのはパッケージ版だけではありませんでした。なんと、パッケージ版と併売されたダウンロード版までもが売り切れたのです。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

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任天堂やお店の予想よりも遥かにダウンロード版が売れた

コンビニの図

売れ残りのリスクがないこともあり、コンビニエンスストアなど販売場所も大きく広がっています。

ダウンロード版が売り切れた理屈というのは説明した通りなんですが、それでも、異常事態には代わりありません。というのも、ダウンロードカードはお店に仕入れのリスクがない商品です。置いてある時点ではただの紙で、お客さんが購入した時点でそれが登録されてお店に仕入れが発生します。売れ残れば不良在庫になってしまうパッケージ版とは違い、リスクがありませんし場所もあまり取らないので、基本は多めに仕入れておくはずです。

これまで発売されたタイトルのダウンロード版とパッケージ版の比率を見た上で、多めに仕入れておけば機会損失をすることが無くなります。今回のどうぶつの森の出荷はパッケージ版約60万本に、ダウンロード版約20万本。Wiiで発売された前作の「街へいこうよ どうぶつの森」は初週約30万本。累計500万本以上の大ヒットとなったニンテンドーDS版の「おいでよ どうぶつの森」も初週約30万本。その実績から考えればパッケージ版とダウンロード版あわせて80万本が消えて無くなるなんて普通は想定しませんし、それこそダウンロード版だけで20万本も売れるとは考えないでしょう。全体80万本の内4分の1がダウンロード版というだけでも、かなり多めに仕入れている数字です。

お店からすれば、これまで売れていたパッケージ版の25%がダウンロードに流れていくという現象が起きてるとすれば、今後パッケージの仕入れについて少し考え方を改めなければいけない、というぐらいの数字です。

毎日ちょっとずつ1年中じっくり遊ぶゲーム

どうぶつの森の図

くだものとって、お花に水やりながら雑草とりが日課で、後は気分で住人とお話したり、魚釣りしてみたり、なんていう遊び方ができるゲームです

おそらく、というか間違いなく、どうぶつの森はこれまでのコンシューマーにおける、パッケージサイズのソフトをダウンロード販売したケースにおいて異例の数字を残したタイトルでしょう。では、何故どうぶつの森のダウンロード版がこんなに売れたのでしょうか。

それは、任天堂がダウンロード版に対する価値の置き方にポイントがあります。というのも任天堂が何度も説明していたのは、毎日ちょっとずつやって、ずっと手元に置いておくタイトルはダウンロード版がいい、ということでした。他に遊んでいるソフトととっかえひっかえせずとも、つねにソフトを持ち歩かなくとも、3DSの中にインストールしてしまえば、いつでもどこでもちょっと時間が空いた時に気軽に遊べると、こういうわけです。

どうぶつの森はまさにそれで、1日30分ぐらいのプレイでも十分満足できて、でも毎日毎日少しずつ変化があり、さらには冬になれば雪がつもって、春にはサクラが咲き、夏になればカブトムシがとれ、1年中季節にあわせて様々な変化やイベントがある、まさに毎日ちょっとずつ1年じっくり楽しめるゲームです。ここにユーザーが大きく反応したと考えられます。

任天堂の提案がうまくユーザーの心を掴んだ形になったわけですが、ここで強調しておきたいのは、価格を下げて販売せずに、ダウンロード版の価値づくりをしたという点です。
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