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どうぶつの森のダウンロード版が売り切れる意味(3ページ目)

2012年11月8日、ニンテンドー3DS用タイトル「とびだせ どうぶつの森」が発売されました。ニンテンドーDSで500万本以上の大ヒットとなった人気タイトルの続編ということで瞬く間に店頭から消えてなくなり、売り切れの店舗が続出しました。ここで、少し変わったことが起こりました。というのは、売り切れたのはパッケージ版だけではありませんでした。なんと、パッケージ版と併売されたダウンロード版までもが売り切れたのです。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

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ゲームの価値を守りたい

岩田社長の図

ゲームの高い価値を認めてもらうことが重要であると提言した岩田社長。(イラスト 橋本モチチ)

多くの場合、ゲームのダウンロード版がパッケージ版に勝る点として取り上げられるのは価格です。1つには、流通を通さずに購入できるため、パッケージ版よりも安く販売するというパターン。もう1つは、パッケージで流通できないような規模の小さいゲームを、低価格で販売するパターン。スマートフォンのゲームアプリというのは圧倒的に後者のモデルが多くなっています。これはゲームにかぎらず音楽などでも同様のことが言えますが、流通に乗らないサイズのものを小額決済で販売できるというのは、オンライン販売の強みです。

任天堂の岩田社長は2011年の3月にサンフランシスコで行われたゲームデベロッパーズカンファレンスで、スマートフォンなどのプラットフォームで展開されるゲームに対して、自分たちはゲームの価値を守りたい、という趣旨の発言をしました。その時は、スマートフォンのゲームの質が低いと批判した、というような勘違いを受けましたが、その真意はユーザーにゲームの高い価値を認めてもらい相応のお金を払って貰える環境を維持したい、というものでした。

任天堂はパッケージのダウンロード版を販売するにあたり、パッケージに対する価格優位性を打ち出さず、ダウンロード版にはダウンロード版の高い価値があることをユーザーにどうやって伝えていくか、というところで試行錯誤を開始しました。そして今回どうぶつの森で、ゲームの価値を守っていきたいという宣言を実行に移し、1つの成功事例を作ったと言えるでしょう。

おそらく現時点において、どうぶつの森はかなりレアなケースで、20万本ものダウンロード版が売り切れることはそうそうないでしょう。どうぶつの森がきっかけで、価格優位性ではない、ダウンロード販売の価値を新たに創造することができるのか、それとも特別な事例として広がりを持たずに終わってしまうかは、今後の展開にかかっています。

しかし、ゲーム業界がオンライン販売に対してどういう姿勢で臨み、どんな未来を描くのか、その指針の1つとなる出来事であることは、間違いないと思います。

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