労務管理/労務管理に関する法律

労働者派遣法改正による企業実務への影響(2ページ目)

経済が冷え込んでいる状況下で企業は人員削減策を取ってきました。その影響を直接受けているのが派遣事業に関わっている企業と派遣労働者の方々です。そうした中、派遣業界のルールである「労働者派遣法」が改正され規制が厳しくなりました。今回の記事では、その影響と実務ポイントを解説しています。正しい理解と適切な処理でトラブルを防いでいきましょう!

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド

グループ企業派遣の8割規制・実績報告の義務化
(派遣元への規制)

グループ企業への派遣は派遣割合が明確化されました

グループ企業への派遣は派遣割合が明確化されました

もともと労働者派遣法では、専ら特定の企業へ労働者を派遣する派遣事業が禁止されています。具体的にはグループ企業内に子会社である派遣会社(派遣元)を設立して親会社(派遣先)へ労働者派遣を専ら行うような場合です。このようなケースでは正社員の雇用をおびやかす状況が考えられますね。

このグループ企業派遣は、専らと言う表現がある通り曖昧な基準となっていました。今回の改正で基準が明確に示されたのです。グループ企業への派遣割合を80%以下とすることが義務づけされました。なおこの割合の報告(厚生労働大臣へ)は、所定様式にて毎事業年度終了後3ヶ月以内に報告することも義務づけされました。

■派遣割合(80%以下)の算定は次の算式で計算(労働時間の割合)

厚生労働省ホームページから抜粋

厚生労働省ホームページから抜粋

(実務上のポイント)
報告書の様式を見ると、時間を記載する欄が設けられています。1事業年度単位で算定するので、年度始めから、派遣労働者ごとの労働時間の集計管理を間違いなく行う必要があります。

離職後1年以内の労働者を元の勤務先へ派遣することの禁止(派遣元・派遣先両者への規制)

直接雇用されるべき労働者を、派遣労働者に置き換えることで、労働条件が切り下げられる恐れが生じます。こうしたことを防ぐため、派遣元企業は離職後1年以内の者と雇用契約を結び、元の勤務先に派遣することはできなくなりました。元の勤務先はその労働者を受け入れることもできません。従って派遣する前に、その労働者や派遣先に1年以内離職者かどうかの確認を確実に行うことが大切です。

また派遣先企業は、派遣元から派遣労働者の氏名などの通知を受けた際、離職後1年以内の受け入れ禁止に違反することになる場合、派遣元に通知しなければなりません。

・派遣元企業= 離職前事業者へ派遣労働者として派遣することを禁止
・派遣先企業= 該当する元従業員を派遣労働者として受け入れることを禁止
 

厚生労働省ホームページから抜粋

厚生労働省ホームページから抜粋

■例外があります
60歳以上の定年退職者
は対象外です。1年以内であっても元勤務先への派遣は可能です。「雇用の機会の確保が特に困難であり、雇用継続などを図ることが必要と認められる者 」とされているためです。定年退職者を、派遣労働者として受け入れることも選択肢になりえるのですね。

 マージン率などの情報提供・派遣料金の明示
(派遣元への規制)

■関係者(派遣労働者・派遣先など)への情報公開

派遣労働者や派遣先企業がより適切な派遣元企業を選択できるよう、インターネットなどによってマージン率や教育訓練に関する取り組み状況などの情報提供をしなければならなくなりました。

a

厚生労働省ホームページから抜粋

 ■派遣労働者への明示
雇入時、派遣開始時、派遣料金額の変更時には、労働者派遣に関する料金額(派遣料金)を明示しなければならなくなりました。

1.明示すべき派遣料金(次のうちいずれかを明示)
・派遣労働者本人の派遣料金
・派遣労働者が所属する事業所における派遣料金の平均額(1人あたり)
*該当者個々人の料金、平均額どちらを明示するのかを決めること、納得性のある内容がこれまで以上に求められることになります。

2.明示の方法
 書面・FAX・Eメールのいずれかです。

次のページでは、待遇に関する事項などの説明について解説しています。

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます