絵本には子どもの心を知るためのヒントが詰まっている

絵本を読んでいる時に、お話の主人公がわが子そっくりで、びっくりした経験はありませんか? 絵本には、子どもの心の成長や、自己との対話が驚くほど的確に描かれていることがあります。絵本は、子どもの心を知るためのヒントが詰まった宝庫なのです。今回は、そのことがよくわかるフランスの絵本『おこる』をご紹介します。

子どもの「怒り」を真正面から捉えた絵本

『おこる』の表紙画像

子どもの心に湧き上がる激しい「怒り」の感情に迫ったフランスの絵本

男の子は怒っています。吊り上った眉、カッと見開いた目、両手の握りこぶし、表紙を見るだけで少年の激しい感情が伝わってきます。怒っているときは、大人でさえ自分の感情をコントロールするのが難しいものです。では、幼い子どもたちの心に怒りがこみ上げてきたとき、子どもたちはその感情にどう向き合っているのでしょうか? 絵本の中で主人公は、自分の心の内の全てを、私たちに見せてくれます。

お母さんに、怒っている姿が「ゴリラみたいだよ」と言われた男の子は、自分の心の中からゴリラ(怒り)を追い出そうと一所懸命です。男の子は、ゴリラが暴れるとどうしようもなくなることに気付いています。男の子にとって、ゴリラを追い出すのはなかなかたいへんですが、どうすれば自分の気持ちが落ち着くのかについてもちゃんとわかっていて、私たちに説明してくれます。「小さな子どもたちも、大人と同じだなあ。」 絵本を読んだ大人たちは、きっとそう感じることでしょう。

本書での怒りの象徴“ゴリラ”のイメージ画像

あなたは心の中の「怒りのゴリラ」を上手くコントロールできますか?

作者の1人カトリーヌ・ドルトは、フランスに子育て革命をもたらしたと言われる、精神分析家フランソワーズ・ドルトの娘で、小児科医です。作者たちは、「子どもは決して未熟なだけの存在ではなく、1人の人格ある人間だ」と主張し続けたフランソワーズ・ドルトの考えを継承し、その主張を絵本の中にきっちり盛り込んでいます。その上で、子どもだけでなく大人の読者に対しても、「怒り」という付き合いにくい感情について説明し、理解を得ようとしています。

そのやり方は、まさに直球勝負。一見自分勝手と思われるような心の動きや、怒りをしずめるヒントなどにも言及しながら、怒りについて小さな読者にストレートに語りかけています。本書を読んだ子どもたちは、主人公に共感すると同時に、自然に「怒りのメカニズム」を理解することになるでしょう。それは、この作品を読む私たち大人も同じこと。いえ、むしろ大人にとってこそ、より深い学びを得られる作品に思えてなりません。


【書籍DATA】
カトリーヌ・ドルト/コリーヌ・フォール=ポワレ:作 フレデリック・マンソー:絵
安積みづの/越智三起子:訳 綾部さつき:専門協力
価格:1200円
発売日:2012/11/1
出版社:株式会社エスコアール出版部
推奨年齢:3歳くらいから
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