嫉妬心は誰の心にも時に浮かぶものですが、そのわだかまりのエネルギーは心の健康を守るためにも何かポジティブな方向に向けてみましょう!
例えば、この季節、柿がおいしそうに色づく頃。そんな隣の柿を見て、「あら、嫌だ、ウチの柿より、おいしそうじゃない。頭に来る!」なんて腹が立ったせいか、後で、その家の庭にこっそり○○を投げ込んでしまうような事は、あってはならぬ事!
今回は、こうした妬み心が原因で生じる問題行動の芽を未然に摘み取り、さらに、妬み心が原因で生じてくる心の様々な不調、例えば、イライラが止まらない……といった事態を回避するため、精神医学的観点から是非、知って頂きたい事を詳しく解説します。
妬み心は心の健康を損ないやすい
もしかしたら、「私は他人を妬んだりしません」と、はっきり断言する人もいるかも知れませんが、人は誰しも時に誰かを妬んでしまうもの。もっとも妬みの視線は通常、自分の見知らぬ人には向きません。例えば、テレビで世にもきれいな人を見たとしても、「あら嫌だ! 頭に来る!」なんて事はまず無く、大抵は、「何てきれいな人!」でおしまい。妬む相手は通常、自分の身近な人です。例えば、姉妹関係。仮に、妹は男子に大変人気がある、かわいい女子だとして、姉は、その正反対で全然、男子に人気が無いとします。そんな姉がボーイフレンドと楽しそうに、はしゃぐ妹を見たりすれば、思わず妬んでしまうかも。もっとも、人によっては、そんな妹を見ても、「あら、楽しそうにやっているわね」と、やさしく見守れる場合もあるでしょうが、もしも妹を妬んでしまい、こっそり意地悪をするようになってしまっては大変です。もっとも、こうなっていく背景には姉の心理に何らかの不合理性が生じているもの。
例えば、自分を妹と比べてみては、「自分の方が○○なのに、どうして妹だけもてるの?」と怒ってしまったり、場合によっては、自意識が強過ぎて、自分よりモテる妹が許せない場合もあるでしょう。でも、他人をいつも上から目線で見ていては、自分に寄って来る男子は、なかなかいないでしょうし、そもそも自己評価なんてものは、他人が自分に下す評価とは往々にして大変、違うもの。たとえ自分ではオードリー・ヘップバーンのように、いけてる女子のつもりでも、周りの自分を見る目は残念ながら、かなり厳しい場合だってあります。
このように嫉妬心は時に誰の心にも生じるものとはいえ、時に家族関係など、大切な人間関係を壊すポテンシャルがある事には皆さん、充分、お気を付けください。
妬み心には、うつ病、パーソナリティ障害などの可能性がある場合も
嫉妬心は時に、心の病気のきっかけになってしまう可能性もあります。その際、まず第一に気を付けておきたいのは、うつ病。うつ病は代表的な心の病気の一つで、一生のうちの罹患率は、10~20%前後もあり、誰でも何らかの要因によって、脳内環境が悪化すれば、うつ病を発症してしまう可能性があります。もしも嫉妬心が原因で何らかの悪循環に陥ってしまえば、脳内環境が悪化してしまい、うつ病を発症する可能性がある事には要注意です。次に、妬み心に関連する可能性がある心の病気に、パーソナリティ障害があります。パーソナリティ障害の症状は、一般に本人の気質による部分が大きく、簡単に言えば、「元々、そんな人なのです」と言って済ませる面もあります。しかし、その性格のために日常生活上、深刻な支障が生じやすくなります。例えば、妬み心が強くなり過ぎて、もしも、ちょっとした事で周りの人を妬んでは、その人の悪口を言ったり、意地悪をしていては、周りの人から白い目で見られてしまうでしょう。
こうしたパーソナリティ障害で見られやすい問題行動は、特にストレスが強く掛かっている時、強まる傾向があり、できるだけ早期に精神科(神経科)を受診して、心理療法などを受ける事が望ましいですが、本人が自分自身に問題行動がある事を認識する事は少なく、精神科を受診される事は少ないです。
それでは、チェックアウト!
では以上のまとめとして、嫉妬心が病的になる傾向を示す症状を箇条書きにします。- 特定の誰かが気にかかって仕方が無い
- その相手の悪口をよく言ってしまうだけでなく、何か意地悪をしてしまった事もある
- 周りの誰かから妬みっぽさを指摘された覚えがある
- 気持ちが冴えない事が多く、毎日を楽しめていない
- イライラして目先の事に集中できない
- 眠りが浅くなってしまっていたり、食欲が大きく変化している
- 何か深刻な心配事を抱えていて、不安が強い毎日になっている
- ギャンブル、飲酒、衝動買いなど、それに対する依存が強まれば、日常生活に多大な支障を起こし得るものが、イライラの解消手段になっている
嫉妬のエネルギーをポジティブな方向に向けてみて!
嫉妬心は誰の心にも時に生じる、言わば人間の自然な感情。状況によっては、嫉妬心がどうしても避けがたいものだとすれば、その時、生じた嫉妬心を病的にさえしなければ、嫉妬心を制した事になります。その際、まず心身に充分な余裕があるか否かは大切なポイント。仕事もプライベートも順調な時と、何か深刻な心配事を抱えているような時とでは、心の在り方は全然違うもの。とはいえ、この厳しいご時勢では、充分な余裕を持つ事自体、なかなか容易な事ではないでしょう。それでも、出来る限り、やるべき物事の効率を上げてみる、と同時に、心身のコンディショニングを整え、ストレス対策もしっかり取ってみる……など、出来る限り、心身に余裕を生み出していきましょう。
次に嫉妬心で、気を付けて頂きたい事は、誰かを妬んでしまった時、そのわだかまりをどう発散させているかです。もしも、その相手の悪口を言って、心のわだかまりを発散させたとしても、その効果は一時的。やはり、そのエネルギーは、何かポジティブな方向に向けたいもの。例えば、もしも自分が成し遂げたい目標が、しっかりあれば、そのエネルギーを注ぐ先ははっきりしてくるはず。
それでも、自分がどうしても欲しいものを身の周りの人が持っていたりすれば、思わず、うらやましく思ってしまうかも。その際、もしも、その妬み心が、「けしからん!」といったネガティブな方向に向かいやすい人は、その心的反応は、ご自身の心の健康を損ないやすい事は、どうかご留意ください。