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血液型の検査法「ABO式血液型」
血液型の分類は様々ですが、現在最もメジャーなのはABO式血液型です。性格と血液型に関係はあるのでしょか?
血液検査はどのようにするかご存知ですか? 当然ですが、採血して顕微鏡で覗くだけで、「ムム、これはB型の血液だな!」とわかるわけではありません。
そもそも血液は、白血球、赤血球、血小板などの細胞成分と血清と呼ばれる液体成分に分かれます。細胞成分の中で体中に酸素を運ぶための赤血球の型は一種類ではありません。輸血が必要な場合に型を合わせるためにも、自分の血液型を正しく知っておくことが大切です。
今最もメジャーなABO式血液型の分類法が発見されたのは1900年のこと。Landsteiner博士が、ヒトの赤血球と、血液の液体部分である血清を使い、赤血球が集まって塊をつくるかどうかで4つの型に分ける分類法を見つけました(当時はA、B、「C」、ABの4つに分類されていました)。
赤血球の表面には、A型抗原とB型抗原があります。液体部分の血清には抗A抗体と抗B抗体があります。ABO式血液型の血液型判定試験は、「おもて試験」と「うら試験」の2つを行います。おもて試験は赤血球の状態、うら試験は血清状態を見る検査です。
整理すると、
- A型の血球・抗B抗体の血清⇒A型血液型
- B型の血球・抗A抗体の血清⇒B型血液型
- O型の血球・抗A抗体と抗B抗体の血清⇒O型血液型
- AB型の血球・血清に抗体なし⇒AB型血液型
例えば、A型の人にA型以外の血液(血球と血清を含む)を入れると、赤血球が抗体で破壊されて溶血が起こり、発熱、倦怠感、腎不全などを起こしてします。
血液型と遺伝……日本人に多い割合の血液型とは
血液型は第9番目の染色体に情報があり、親子で遺伝します。血液を決める遺伝子は、父親から1つ、母親から1つで、2つ持っていることになります。A型、B型の遺伝子はO型の遺伝子より優性に出てくるため、A型とO型の遺伝子があった時にはA型、B型とO型の遺伝子があった時にはB型になります。A型の遺伝子とB型の遺伝子は優劣がなく、A型とB型の遺伝子があった時には、AB型になります。O型の遺伝子しかない場合は、O型です。
日本人の場合、A型:O型:B型:AB型の順番に多く、比率は4:3:2:1といわれています。
乳児の血液型がわからないのはなぜ?
血液中のA型やB型に対する抗体は、IgMと呼ばれる免疫グロブリンというものです。IgMは生まれてから作られるため、新生児や生後6カ月程度までの乳児では、血清中に抗A抗体も抗B抗体もありません。したがってこの時期には、ABO型血液型を調べる上での「うら試験」ができません。おもて試験でも正確とは言えますが、おもて試験はできるもののダブルチェックができないため、生まれた時に調べた血液型が1歳になってから調べると変わってしまう可能性があります。子どもの血液型を調べてくださいと言われますが、1歳までの血液型測定は、輸血などの緊急時を除けば避けた方がいいでしょう。輸血時には、血液型以外に、輸血の血液が合うかどうか、マッチテストをします。輸血の血液と患者の血液を少量混ぜて、血が溶ける「溶血」や、血が固まる「凝固」が起きないかを輸血前にチェックします。
Rh式血液型……「Rhマイナス」とは?
上記のABO式血液型に加え、1940年にLandsteiner博士とWiener博士が、アカゲザル(Macacus rhesus)の赤血球に対する抗体がヒトの赤血球に反応することを発見しました。アカゲサルの英語名の一部から「Rh式血液型」と呼ばれています。Rh式血液型は第1染色体にあって、陽性か陰性しかありません。Rh式血液型が陽性の人は日本人では99.5%で、残り0.5%がRh式血液型が陰性です。Rh陰性の人に、Rh陽性の血液を輸血すると、血液の固まりができてしまう凝集が起きたり、赤血球が壊れてしまう溶血が起きたりします。そのため、血液型はABO型だけでなく、Rh式も検査する必要があります。血液型にはその他にもP式、MNSs式などがありますが、ABO型とRh式が重要です。
血液型による性格・相性占いに信憑性はあるのか
血液型占いや血液型による性格の傾向は、残念ながら医学的には根拠がありません。しかし根拠がないとはいえ、血液型による違いや傾向についての報告が多くあるのも事実です。例えば、O型の人は蚊に刺されやすいのですが、理由は不明です。害虫防除技術研究所の白井良和先生は、2004年のJournal of Medical Entomologyで蚊はO型の血液型を好むと報告しています。O型が83.3%でA型が46.5%でした。また、血液型によって、罹患率が異なる疾患があることも報告されています。そして、ヒトの性格は遺伝と環境で形成されます。早期に血液型が判ると、「この子はA型だから神経質」と家族や周りが思い込んでしまい、そのような接し方や刷り込みをしてしまう可能性はあります。そのような環境で育つといわゆる「A型らしい性格」になる傾向があるのかもしれません。また、O型どうしの夫婦ならO型の子どもしか生まれないため、遺伝子的にも子はより親に似てくる傾向があります。したがってO型の性格は共通する部分があるのかもしれません。
血液型は遺伝するので、一部は性格に重要な遺伝子も遺伝するかもしれません。しかし、多くは親と同じような血液型が生まれる可能性が高いので、子は親に似ている。その意味では確かに遺伝するのかもしれません。
同様に、占いには暗示効果もあります。10のうち1だけ思い当たることがあると、全体的に当たっているかのように感じます。血液型占いは、当たるも八卦、当たらぬも八卦、どう信じて、自分をいかに活かすかが大事です。
血液型についての世の中で一般にいわれていることを、人に対して思い込み、性格や人格を判断し、人に不快な思いをさせることを、「ブラッドタイプ・ハラスメント」といいます。相手が不快に思えば、ハラスメント(嫌がらせ)になってしまいますので、注意が必要かもしれません。
ともあれ、血液型は酸素を運ぶために必要な赤血球の型で、貧血や出血で輸血を必要とするときには、赤血球の型を合わせないといけませんので、重要です。
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