火災保険ってどうしても入らなきゃダメ?
火災はめったに起きるものではないが……
A:確かに、火災はめったに起きません。しかし、めったに起きない災害ではあれ、それがいったんわが身に降りかかったらどうなるでしょうか。
火災による被害を受け幸いにも命が助かった場合でも、住まいや財産などに損害を被ることがあります。最悪の場合、住むところを失い生活に必要な種々のものをすべて失うこともありうるのです。さらに、住宅ローン返済中の被災ということになれば失った家の住宅ローンの返済も必要ですし、一方で新たな生活をするための住まいの費用も発生してしまいます。失った住まいを再建し必要な家財道具を1つ1つ買い揃えていったとしたら、数千万円にのぼる損害額になることはいうまでもないでしょう。
こうしたときに、契約していた火災保険から保険金が受け取れれば、住宅ローン返済を継続することもできますし、住宅ローンがない場合は保険金で住宅取得をすることも可能でしょう。家財の火災保険があれば、新たに家財をまとめてそろえることも難なくできます。つまり、被災後の生活の新たなスタートを、火災保険金によってスムーズに始めることができるのです。ほとんどの世帯にとって、火災保険なしに生活再建をはかるのは、事実上困難でしょう。
このように、めったにないことだけれど起きれば家計が破たんするような大きな経済的ダメージに対して、多くの世帯は貯蓄で対応することは不可能です。ですから火災保険は、災害によるダメージからわが家を守る手段として不可欠なものといえるわけです。
Q2:わが家はたばこを吸う人もいないし、火事が起こることはまずあり得ません。だから火災保険はかけていませんが……。
A:火災がより恐ろしいのは、延焼被害が発生することがあるからです。つまり、あなたの住まいから火災が発生しなかったとしても、隣家から発生した火災により、あなたの住まいが損害を受ける可能性は十分にあるのです。
さらに留意が必要なのは、隣家がうっかり火災を発生させ、それによりあなたの住まいが被害を受けた場合であっても、隣家には損害を賠償する責任がないということ。わが国には民法の特別法である通称「失火責任法」があり、故意または重大な過失により発生させた火災でなければ、延焼先に損害賠償責任は発生しないと定められているのです。
つまり、自分に落ち度のない延焼被害であっても、火元である隣家には賠償請求はできません。火災保険に入っていないと、被害は誰にもカバーしてもらえない、ということになってしまうわけです。
セミナー等でこのお話をすると、「知らなかった!」という方は少なからずいます。火災の備えは各自で、これが基本だと覚えておいてください。
Q3:燃えにくい丈夫な家を建てました。まず、火災被害なんて考えられませんよ。
A:確かに、失火法が施行されたのは明治時代でしたから、そのころと比べると建物の不燃化は格段に進んでいるでしょう。ただし、たとえ燃えにくい住宅だとしても、火災による被害を受けることはあるのです。
例えばこんなケース。住宅に発生した火災による延焼を食い止める消火活動のため、近隣の住宅が破壊されることがあります。また近隣の住宅の消火活動により、大量の消火用水が住宅に入り込み、水濡れ被害が生じることもあります。
火災の火そのもので被害を受けなくても、このように火災を食い止めるための消火活動の過程で、近隣の住宅にも被害が生じることもあるのです。
火災保険はこうした被害についても対象としています。自分の住宅の火災でもないのに深刻な被害を受け、さらにそれも自己責任で修繕しなければならないとなれば、厳しいものがあります。
前述したように、火災は日常生活を脅かす恐ろしい災害だというのは、こうした間接的被害も含んでのことなのです。
次のページは、自然災害による被害について解説します。