コントロール液は血液を模したものです。濃度がありますから、容器の入口やフタの内側をティッシュペーパーできれいにしてから、きっちりと閉めます。再使用のときは最初の1滴を捨てること。
患者自身が行う血糖測定はすぐに我流になってしまうので、定期的にチェックしてもらうことを米国糖尿病協会や(米)内分泌学会などが勧めています。
例えば、自動車運転免許証を取得してから十分な年月がたっていれば、運転技術が下手なわけがありませんが、もし、もう一度試験を受けたなら、大半の人は不合格になるでしょう。交通ルールや安全確認の基本がおろそかになっている場合があるからです。
血糖自己測定も同じです。採血して測定するのは簡単なことです。しかし、効果的な血糖コントロールを行うためのツールとして血糖自己測定を行うには、次の3つの重要な条件が要求されるのです。それを再確認しておきましょう。
- 血糖自己測定を行うことの意味を理解し、納得していること
- 測定技術を習得し、その測定結果を自らの治療に活かせること
- 測定誤差を許容しつつ、測定の「質」に自信が持てること
糖尿病治療で一番難しいことは、患者が問題にぶつかった時の解決能力にはなはだしい個人差があることです。なぜ難しいかというと、医療プロバイダーが問題解決法を教えようにも、教えること自体が"難しい"からです。もし、血糖自己測定が不正確なら危険な低血糖の対処が遅れることだってあり得ます。血糖自己測定を治療に活かすのは慎重な行動と、血糖測定器を正しく使いこなすノウハウが求められます。
測定エラーを減らすノウハウ
今まで見てきたとおり、血糖測定器はパーフェクトではありません。更に、測定値に影響を与える因子はたくさんあります。採血した血液は指先からですか? それとも静脈? どうやって採血しましたか? 指先を浅く刺しましたか、それとも深く?
血糖測定器は指先の全血のブドウ糖量を病院の検査に合わせて静脈血の血しょう値に換算して表示します。血しょう中のブドウ糖は通常は全血の1.1倍に換算するのですが、食後にはその差はもっと大きくなります。
また、全血は不安定なので抗凝固剤を使えば数値に影響が出ますし、冷凍した血液も同じではありません。患者が採血したのか、熟練した検査技師かでも相違が出ますし、測定器によって異なる酵素法は、条件によってはブドウ糖以外の糖類をカウントすることもあります。これらは私たちが考慮すべき事柄というより、なぜ血糖測定器の正確度を比べられないか? の問いに対する答えの一部でもあります。本当に難しい問題です。
血糖自己測定で私たちが直面する問題と、それがもたらす結果には次のようなものが挙げられます。
- 血液が不足していた
測定値が低く出ます。血液が明らかに不足だとアラームが出る機種もありますが、機種によっては少なめでもエラー表示をせずに計測して、怪しい数値を表示します。自分のミスですから、新しいセンサーでやり直しましょう。
- センサーが電極チップ挿入口の奥までしっかりと差し込まれてなかった
測定不能。あるいは低過ぎる/高過ぎる測定値になります。電極の接触が不完全だとセンサーの全域を読み取れません。多くの測定器はエラー表示で測定しませんが、わずかな接触不良では異常値が出ることがあります。疑いを感じたら新しいセンサでやり直しです。
- 果物などを扱った手で採血をした
測定値が高く出ます。詳しいことは「血糖自己測定は最初の血の一滴でする? それとも2番目?」をご覧ください。
- 電池のパワーダウン
エラーマークが出ます。すぐに電池を交換してやり直しましょう。
- 測定温度が範囲外だった
エラーマークが表示される機種や表示されない機種があります。センサーは酵素作用を利用しているので、常温範囲外は正常に作用しません。機種によって低温あるいは高温に比較的耐性があるモデルもありますが、基本的に10~40℃を超えると低過ぎるか/高すぎるかと不正確になります。特に厳冬期の日本家屋の早朝は、室内でもかなり温度が下がるので注意が必要です。測定器とセンサーを適温の部屋に20分間以上なじませることです。
- 測定器が血液などで汚れている
血液や水が内部に入ってしまった測定器は誤作動の恐れがありますから使用中止です。また、汚れをふき取るときも市販のクリーナーの使用は原則的に禁止。取扱説明書で確認しましょう。
- 患者が脱水状態
測定値が高くなります。担当医の指示を受けること。
- 患者がショック状態
血糖値が低く表示されることがあります。担当医の指示を受けること。
- うまく採血が出来なかったので、指先を力を込めて搾り取った
実際よりも低い測定値になります。誰でも時々やりそうですが、基本ルールは新しいセンサーでやり直しです。
- センサーの使用期限が過ぎている
もちろん、使用禁止です。
- コード入力を正しく行なっていない
以前は患者の測定ミスの半分はこのコード入力の誤りでした。センサーにプリントされている酵素は、元々、体の中にあるタンパク質ですから、極端な乾燥や加湿、温度に弱く、センサーの製造工程でも若干の品質のブレが生じます。そのため、製造ロットごとにコードをつけて、測定器にそのセンサーのコードを入力して正しく補正する必要があります。今日では製造・出荷時にセンサーコードを統一したり、測定器がセンサーを差し込むと自動的に補正して、ユーザーのコード入力ミスをなくしたものがあります。いっぽうで、ロットごとの品質を詳細に公開して、コードチップやキーをセンサーに添付して正確度を維持しようとしているメーカーもあります。コード入力の有無は血糖測定器の大事な選択肢の一つですから、納得のいくまで担当者の説明を聞いてください。