食を通じて生きる力を育てる
南・・・日本料理の基本であるだしのおいしさや、旬の食材をおいしく仕上げることを学んだ先に、子どもたちにはどのような影響があると思われます?食べていただく人のために、盛り付けや器も含めて心をこめて作ることを伝えます。
形は悪いかもしれないけれど、まず一番大切なことは、「料理を食べていただく人のために心をこめて作ること」。そして食べる側は、命をいただく食材や、作ってくれた人への感謝の心を持つことです。それを見失っては、日本料理、日本の文化を伝えることにはならないと思います。
これは道徳教育ですね。例えば武道や茶道、いろいろなアプローチがあると思いますが、我々は料理人なので食の授業を通じて、他者への思いやりや感謝の心、つまり生きる力を育てているんです。
今は小学生の子どもも、成長すれば大人になり、親になる。この地域食育事業を継続していくことで、未来の家庭や地域、社会が今より少しでも良くなってほしいというのが、我々の願いです。
自分を知ることで他者を認め合える
南・・・最後に、日本人にとって、日本料理とは何でしょうか?美意識、思いやりの心、歴史や行事など様々な要素が詰まった日本料理は、日本文化の結晶。
私たち日本人の料理、文化とはどういうものかというベースをきちんと知った上で、他国の料理の手法を学んだり、楽しんだりするのもよいでしょう。でも何もベースができていない段階の子どもたちが何でも受け入れてしまうと、どこに向かっていってしまうのか・・・。私は、たいへん心配しています。
日本人らしさとは何か、日本の文化を理解してこそ、他国の人との違いを知り、お互いに認め合えます。
南・・・確かに、私くらいの年代ですと、日本料理をベースに成長し、後から様々な国の料理が知ったわけですが、今の子どもたちのおふくろの味は、ハンバーグだったりします。グローバルな時代だからこそ、相手の文化を尊重するためにも、自分の足元の文化を理解しておくことが必要なんですね。
料理人というお立場ならではの視点で、たいへん貴重な深いお話を伺えました。ご多忙中にお時間をいただきまして、ありがとうございました。
協力/
山ばな平八茶屋
(所在地/京都府京都市左京区山端川岸町8-1)
日本料理アカデミー
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