食と健康/食と健康の基礎知識

プロの料理人が伝える「食で育む生きる力」(2ページ目)

日本料理は、見た目の美しさや多様な食材、独自の文化性、優れた栄養などから世界から評価され、世界無形文化遺産化へのプロジェクトが進んでいます。老舗料亭の主人であり、京都で食育活動にも取り組まれている山ばな平八茶屋 園部晋吾氏に、日本料理や食文化についてお話を伺いました。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド


「だしはおいしい!」を伝える

味覚教育,だし

食育活動の3つの柱の一つ「味覚教育」で、日本料理の基本となるだしや、五感で味わうことの大切さを伝えます。

地域食育活動では、主に小学校の家庭科・総合学習の時間を活用した公開授業形式で行われ、小学3~6年生の児童、およそ100人が授業を受けます。授業では、「味覚教育」「食材教育」「料理教育」という3つの柱で構成されています。

「味覚教育」では、日本料理の基本となる「だし」を使い、五感の重要性を説明します。そして、1.昆布だし、2.かつおと昆布のあわせだし、3.水に薄口醤油を加えたものを飲み比べ、だしのうまみや香りを体験してもらいます。

「食材教育」では、壬生菜や、聖護院蕪などといった京都の伝統野菜をはじめとする食材を取り上げ、旬の食材や、特性を活かした使い方などを学びます。

「料理教育」では、食材教育で学んだ野菜や学校菜園の野菜を活かして、おいしいだしのうま味と、素材の個性を活かした料理に仕上げる調理実習を行います。

シンプルに伝える方が心に響く

・・・食育授業は、全国でも積極的に行われていますが、プロの料理人による授業というのはたいへん贅沢ですね。しかも、授業内容の構成はよくできていると思いますが、どのようにまとめられたのでしょうか。

伝統野菜,食材

京都の伝統野菜などを使い食材教育を行います。

園部・・・まとめる前は手探り状態でアイデアを出し合っていましたが、日本料理アカデミーでは、大学の研究者の方々とも調理化学の勉強会を行うなど、幅広いネットワークを築いています。教育関係の先生方からフランスのピュイゼ博士考案の「ピュイゼメソッド」と呼ばれる味覚教育があるということを教えていただきました。

それをベースに、さらに日本料理として「だしのうま味」を伝えるためには、どのように構成したらよいかを議論し、現在のような形になりました。初めは、いろいろと盛りだくさんにしていたのですが、あまり情報が多すぎると散漫になり、かえって子どもたちの心に印象が残りにくくなってしまいます。

・・・日本料理のように、無駄なものを削ぎ落として削ぎ落として、シンプルな方が心に響くんですね。

園部・・・そうです。だしのおいしさを伝えることにしぼることで、3つの柱をよりしっかりと伝えられるようになってきたと思います。

何から何まで授業内容を決め込んでいるのではなく、3つの柱をベースに、だしの魅力、さらにおもてなしの心や感謝の心を伝えることを目的とするということだけを決めて、後は担当した料理人が個性を発揮しそれぞれの方法で実施しています。

子どもから大人が食育の大切さに気づくことも

・・・子どもたちの反応はいかがですか?

昆布,だし

昆布や鰹のだしのおいしさ、使い方などを伝えます。

園部・・・授業を始める以前は、「現代っ子は濃い味が好き」とか、「味がわからない子どもが増えている」というような味覚の危機が、よくメディアで取りあげられていましたので心配していました。

しかし実際に子どもたちと接して反応を見ますと、子どもたちはちゃんと味も、授業の内容も分かっていると嬉しく思いました。

まず昆布だしを飲んで「おいしいと思う子は?」と聞くと、クラスの1~2人が手をあげます。鰹だしとのあわせだしを飲むと約半分の子どもたちが手をあげ、最後に塩と薄口醤油で調味してお吸い物にすると全員が手を上げます。お吸い物の吸い口に柚子を添えたら、「先とはまたおいしさが全然違う!」と大喜びです。

昆布やかつおのだしのおいしさは、海外の人も磯臭さが苦手という人がいるように、経験で学んでいくものです。大人やプロであっても、昆布だしだけというものは、それほど明確なおいしいさを感じるものではありません。

今の子どもたちの味覚はちゃんとしている。そう確信しました。授業で「だしはおいしい」と感じてくれた子どもたちは、授業後のアンケートをみると、実際に家庭でだしをとってみた、京野菜を使ったおかずを調理してみた、好き嫌いがなくなったというような意見が多くありました。

親にインスタントではなく、だしからとったらおいしいと伝えている子もいます。大人はついつい日々の暮らしが忙しく、言い訳から入りますが、子どもに言われて食育の大切さを見直すことにつながることも多いようです。

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