手紙の書き方・文例/敬語の使い方

「~してもらってもいいですか?」という敬語表現は間違い?

「~してもらってもいいですか」という言葉は、相手に何かを依頼する際によく使いますが、違和感を覚えたり不快に感じる人が多いようです。ではこの敬語表現を使うのは間違いなのか、なぜ不快に思う人が多いのか、例文を交えつつ考えてみましょう。

井上 明美

執筆者:井上 明美

手紙の書き方ガイド

<目次>
 

「~してもらってもいいですか」という敬語表現は間違い?

~してもらっていいですか?と言われても言葉に困るという人も多いものです

~してもらっていいですか?と言われても言葉に困るという人も多いものです

次のような言葉はよく耳にしますし、自分でも使っているという人も多いのではないかと思われますが、言われたほうは実は何だか気になる、不快、押しつけがましい……などと感じることも多いと聞きます。

1「こちらにお名前を書いてもらってもいいですか?」

2「こちらにお名前を書いていただいてもよろしいですか?」


1と2は、公共機関の窓口や受付などでよく耳にします。これはいずれも相手にその行為をしてもらおうとする場合に、婉曲に表現することによって配慮を表しているととらえることはできます。「~してもらってもいいかどうか」と、相手に伺う、相手の判断や許可をあおぐような言い方をすることにより、相手への配慮を表すというわけです。

日常生活で 「ちょっと貸してもらってもいい?」というのに同じく、「書いてもらっていいですか」「書いていただいてよろしいですか」ということで敬語表現に言い換えているという点では、言葉遣いとして間違いというものではないでしょう。

しかし、実際にはたとえ2のように言われても、何だか不自然だと感じたり、適切でない言葉に響くのは、次のような点が原因なのではないかと思われます。
 

「~してもらってもいいですか」違和感や不快感を与える理由とは?

「お名前を書いていただいてもよろしいですか」以外にも、「こちらに印鑑を押していただいてもよろしいですか」「カードを入れていただいてもよろしいですか」なども同じような例として挙げられます。

この言葉が使われている場面を考えると、これらは、名前を書いても書かなくてもいいわけではなく、カードも入れても入れなくてもいいわけでない。どちらもそうしてと依頼しているわけですね。もっといえば、特に制限をもうけず任意でというのではなく、そうしてもらわなければならず、相手に選べる余地はないのです。

そのような点から考えて「~してもらっていいですか」と許可を求めるのもおかしいと感じるのも理由のひとつのようです。

また、もうひとつは「~してもらう」というのは、相手に何らかの手間を掛けるということですから、きちんとお願いの気持ちをこめた言葉を用いるべきだという点でしょう。それらの理由から、もっと適切な言葉に言い換えるならば、次のような言い方ができるでしょう。

 

「こちらにお名前を書いてもらってもいいですか」の言い換え例文

「お手数お掛けしますが(ご面倒をお掛けしますが)こちらにお名前をお書きいただけますか」「こちらにご署名願います」……と、言い換えることができます。

また、「こちらにカード入れてもらっていいですか」も言い換えるならば、「恐れ入りますが、こちらにカードをお入れいただけますか」「こちらの機械にカードを差し込んでいただけますか」「こちらにカードをお入れください」……などの言い方ができます。

ほかにも、「デジカメのシャッター押してもらってもいいですか(旅行先で)」「もう少し上にあがってもらってもいいですか(美容院で)」「これ渡してもらってもいいですか(会社で)」など、挙げたらきりがないほど「~してもらってもいいですか?」という言葉はあふれています。

しかし、どれもみな選べるものでも断れるものでもない雰囲気が漂っています。相手に依頼する言葉も色々ですが、場面に応じて適切な言葉を使い分けるのも相手を不愉快にさせない心配りですね。
 

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