マンション住まい、東京都では4人に1人にも
マンション住まいは年々増加してきたが……
日本のマンションストック戸数は、これまで40年以上にわたり増え続けてきました。現在では、全国で約580万戸にも上っており、特に東京都のストック戸数は平成20年の段階ですでに140万戸超。4世帯に1世帯はマンション住まいなのです。
マンションは時間の経過とともに古くなり、安心して住み続けるには定期的な修繕や大規模修繕が必要です。それを見越して、住民は時間をかけて修繕積立金をプールしていきます。ところが修繕積立金が十分でない段階で地震など不測の事態で大きな被害が発生する可能性もあります。それでも終の棲家として購入されるマンションは生活の基盤であり、生活再建を図るためにいち早く原状回復しなければなりません。
しかしながら分譲マンションでは、価値観や経済状態の異なる複数の住民が、ともにマンション資産の保全を図っていくことになるため、そこにはさまざまな問題も存在します。
昭和56年6月より前の新築のマンションなら、まずは耐震診断・改修を
特に注意が必要なのは、昭和56(1981)年6月1日より前に新築されたマンションです。これらはいわゆる旧耐震構造といわれるもので、現在の建築基準法が定めた新耐震基準より緩い基準で建てられています。阪神・淡路大震災、そして東日本大震災では、旧耐震基準で建てられたマンションで大きな被害を受けているケースが多く、阪神淡路大震災では崩落したマンションもありました。
文部科学省の公式見解によれば、南関東でマグニチュード7クラスの地震が発生する確率は30年以内に70%とされています。ところが、東京都にある旧耐震構造の分譲マンションのうち約8割は、耐震診断すら受けていません。
建物の耐震基準は住民の命に関わる問題であり、耐震診断や必要な改修はすぐにでも行うべきですが、耐震改修が進まない理由に費用負担の重さも指摘されます。具体的にはどうなのでしょうか。
東京都の例で見てみましょう。マンションは建物の規模が大きいことから、地震で倒壊したりすると、周辺の地域に大変な影響が及びます。そこで東京都は、昭和56年6月より前の旧耐震基準で建設されたマンションの耐震化を促進、震災に強い都市づくりを進めるために、マンションの耐震診断・耐震改修等の助成事業を行う区市町村に補助を実施しています(「マンション耐震化促進事業」)。ただし、助成の有無や助成額は区市町村により異なります。
助成金で耐震改修工事 マンション修繕積立金の負担減少
さらに東京都都市整備局のホームページには、これらの制度を利用したマンションの耐震改修の事例がいくつか掲載されています。昭和53(1978)年築、平成22(2010)年に耐震改修を行った住戸数208戸の14階建てマンションでは、概算5000万円の耐震改修工事費用が掛かりましたが、約1400万円の助成が受けられたため、残額のみ修繕積立金を充当しています。マンション管理組合が耐震問題の検討を始めてから耐震改修工事を実施するまで、約4年に及んでいますが、その後発生した東日本大震災においても、クラック(ひび割れ・亀裂など)被害はほとんどなかったということです。
診断結果が悪ければ資産価値が下がるからと、耐震診断を行わないと耳にすることがありますが、逆に言えば、耐震強度を上げれば資産価値が上がるとも言えます。何より、一定の耐震強度が確保されているなら、住民が安心して暮らすことができるのです。
分譲マンション 専有部分と共有部分の地震保険契約者は違う
こうした減災策とともに、防げなかった損害で生じた修繕費用・再建費用のための資金準備策も重要です。
そもそも分譲マンションは、各住戸である専有部分と、そのほかの共用部分に分かれています。専有部分とは通常、壁や柱・床から内側の部分を指し、それより外側の躯体部分やエントランス・エレベータ等は共用部分となっています。専有部分はそれぞれ住民が、共用部分はマンションの管理組合がそれぞれ火災保険や地震保険の契約をします。
各住戸の地震保険は、火災保険金額の30~50%の範囲内かつ5000万円を上限に保険金額を設定する仕組みになっていますが、専有部分は内装・造作部分の建築費相当となるため、住民が個々に契約する火災保険金額は、マンションの分譲価格よりも低い金額になります。土地代や業者の利益分ももちろん含まれません。ですから5000万円・70平米ぐらいのマンションであれば、個々の住民が契約できる火災保険金額は1000万円弱程度、地震保険金額はその半分の500万円弱レベルというのが一般的です。
次のページは、気になるマンション専有部分の一戸当たり地震保険料と注意点について解説します。