住宅は個人情報の宝庫!!
写真は、ワインボトルをキッチンカウンターに置くと、背後のモニターで産地などの情報がわかるようにしたもの。将来的には住宅内のHEMSによって、このような情報のほか、食品の在庫管理など様々なサービスが行われる可能性がある(積水ハウスのスマートネットワークプロジェクト実証実験住宅「観環居」内、クリックすると拡大します)
そうしないと住宅を建築したり購入したりできないからです。ましてや、より満足度の高い住宅を得ようとするのであれば、資産の状況や相続関係、家族それぞれの事情といった情報をハウスメーカーや不動産会社に提供する必要があります。
大金を支払うだけでなく、皆さんの貴重な情報も提供するわけですから、「依頼先選び」というのは大切なのです。そして改めて皆さんにご指摘するとするなら、それが住宅づくりの本質的な部分であることです。
話を戻すと、異業種が参入してきているのは、そうした生活者の情報、個人に関する情報を取得したいという思惑があるから。具体的にいえば、HEMSがあればエネルギー使用の状況がわかりますから、例えば家電業界なら家電の買い換えの時期やタイミングについて企業は貴重な情報を得ることができます。
また、家族構成と年齢の情報がわかれば、生活スタイルの変化(例えば子育てや進学、就職、結婚、死去など)に合わせて、様々なサービスの提供が可能になります。特定の個人情報ではなくても、ある種の傾向がわかればマーケティングの貴重な材料とすることもできます。
つまりスマートハウス化の議論は、そのような企業論理と強く結びついた産物であるともいえるわけです。ここにスマートハウスの問題点が集約されます。具体的には「その情報は誰のものなのか」ということです。
スマートハウスの善し悪しは「住宅の質」で決まる
明らかにスマートハウスを建築・取得した消費者のものなのですが、その情報を管理するのが誰で、その管理の仕方がどのようになるのか、まだ誰も答えを見いだしていません。施主の情報については、これまでハウスメーカーなり工務店なりが大切に守ってきたのですが、今後はそういうわけにもいかなくなることが考えられるのです。住宅は家族の個人情報の宝庫。スマートハウスによって住宅と社会のつながりが広がっていく中で、大切な家族の個人情報保護についてどのように取り組んでいるのか、といった視点もスマートハウス時代の依頼先選びには必要になるかもしれない(写真はイメージ)
ですが、一般的にはHEMSや太陽光発電、家庭用蓄電池などが搭載されている住宅とイメージされています。これらのアイテムはすべて設備であり、後付けも可能なものばかり。逆に言うと、それらのアイテムさえ搭載されていれば、スマートハウスとアピールされる可能性があるわけです。
しかし、これだけで本当にスマートハウスといえるのでしょうか。というのも、各種スマートアイテムを搭載していたとしても、耐震性や気密断熱性、快適性など基本性能をおろそかにした住宅であっては、本末転倒だと思うのです。
仮に創エネ・節電設備が搭載されているとしても、断熱レベルの低い住宅であれば、省エネ・節電効果は大きく損なわれてしまうからです。要するに、依頼先の姿勢を問わず、猫も杓子もスマートハウスをアピールする時代が来ることが予想されるのです。
つまり、スマートハウスが本格普及する将来であっても、私たちは住宅の質についてしっかりと認識し、善し悪しを選び取る力を身につけておく必要があるのです。アイテムはあくまでも設備。主役は建物であり、もっというと住まい手のはずです。そのこともまた、改めて確認しておきたい住宅の本質的な部分です。
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