世界基準のエコ住宅は「太陽光をバランスよく、通風も最大限取り入れながら、かつ光熱費を最小に抑えることができる性能で作る」ことを軸にしています。具体的には、「断熱」「気密」「通風」「日射取得(採光)」「蓄熱」など建物躯体に関わる部分の強化が大切なポイントになります。今回は「断熱」について詳しく見ていきましょう。
断熱材のサンプルモデル

断熱材のサンプルモデル 上部の温度は78℃に対して下部は29℃。断熱材が厚ければ厚い程熱の伝わるスピードが下がり室内側のエアコンが効きやすくなる


断熱材ってもともとどんな働きをするの?

断熱材は、床下や基礎部分、外壁、屋根または屋根の代わりに天井部分など、基本的に室内と外気を隔てたい位置に設置します。そうすることで、外気温が部屋の中に入ってくるスピードを遅めることができ、これが断熱材の働きなのです。

例えば、冬にエアコンで暖房をかけているとします。このエアコンの暖気が部屋の中に広がるスピードと屋外から外壁や窓を伝わって入ってくる冷気のスピードのどちらが早いかで部屋の暖まり具合が変わってきます。「いくら暖房をかけても部屋が暖まらない」という場合は、エアコンの暖房能力以上に外部から入ってくる冷気のスピードのほうが早いことを意味します。

そこで、登場するのが断熱材です。断熱材の性能が高くなればなるほど、小さな暖房能力で部屋を設定温度まで暖めることが可能になってきます。夏場の場合の冷房も同じ原理で、エアコンの効きは断熱材が大きな役割を果たしていることを知っておきましょう。

この40年近くで断熱材が日本の住宅に及ぼしてきた影響

しかし、断熱材に対しての歴史はまだまだ浅く、1970年代ごろの木造住宅の多くでは、断熱材を使用されていませんでした。「家のつくりやうは、夏を旨とすべし(家は夏向きに建てるべきだ)」という日本の古くからの考えが浸透していたからです。

その頃から、他の先進国では木造住宅の断熱材が広く普及していて、日本でも断熱材を取り入れる動きが1980年以降に活発になってきたのです。しかし、当初は断熱材を入れることで及ぼす影響などがあまり具体的に理解されていないまま断熱材を使用し始めたことが、今でも誤解を招くケースなどを生み出したのです。
その代表的なものがグラスウールという断熱材に対する偏見です。

グラスウールに対しての偏見が今でも広がっている理由

グラスウールは先進国の中で最も普及している断熱材の内の一つです。日本で断熱材が普及した当初にも多く使われました。しかし、このグラスウールを壁の中に設置したことで思いがけないトラブルが発生したのです。それは壁内結露です。

それまで、壁の中に断熱材を設けない家の場合は、当然家の中も寒かったので、室内側を暖房しても外壁内で急激な温度変化を起こしませんでした。しかし、外壁内に断熱材を設置したことによって外壁内に外部との急激な温度変化を生み出し、結露するようになったのです。氷水を入れたコップの表面に水滴がつくのと同じ原理だとイメージしてください。それが、当初の壁の中に起こってしまったのです。

そのことが原因で「グラスウール=結露をして壁の中をカビさせる、一度水分を含むと断熱材として機能しなくなる素材」というイメージが定着してしまったのです。そして現在でも、グラスウールに対してこのようなイメージを持っている専門家もまだまだ多いのが実情です。しかし、これから説明しますがこれは偏見なのです。

壁内が結露する大きな原因とは?

なぜ、壁内が結露するのでしょうか?それはグラスウールが悪いわけでもなんでもなく、「壁内に屋内側の空気を取り入れたこと」が大きな原因でした。少し難しい話になりますが、例えば、室内側の空気が20℃で湿度(相対湿度)が50%の場合、温度が9℃近くまで下がると結露してしまいます。これは、温かい空気のほうがたくさんの水分を空気中に保つことができるためで、冷たい空気になればそれが飽和して、結露してしまうからです。

壁内に屋内側の空気を取り入れると、まさに同じような現象が壁内で起こるのです。これは、どのような断熱材を使っても断熱性能が低ければ同じ結果を生み出します。断熱材が普及した当初は、グラスウールが使われることが多く、結露の原因=グラスウールというイメージが定着してしまったのです。しかし、今話をしたようにこれはどのような断熱材にも起こり得ることで、グラスウールに対する偏見だったのです。

結露をさせないために、絶対に押さえておきたいこと

では、壁内で結露をさせないためにはどのようにすることが大切なのでしょうか?それは、「壁内に屋内側の空気を取り入れないように空気を遮断すること」+「断熱の性能を高めて壁内で結露する温度まで下がらないようにさせること」です。壁内に屋内側の空気が入ってこなければ、壁内が結露する確率を格段に減らすことができます。

具体的には、断熱材の部屋側に気密シートを設置します。断熱材の種類によっては、はじめから気密シートが施された製品もありますが、そうでない製品の場合は別途気密シートを貼る必要があります。一つの例ですが「セルロースファイバーや羊毛断熱などは、湿気を吸放出するから気密シートをすると意味が無い」「発泡ウレタンは、断熱性能が高く気密性も高いから気密シートがいらない」という専門家がいます。しかし、セルロースファイバーや羊毛断熱材などは関東から九州にかけての太平洋沿岸や瀬戸内海沿岸など一部の地域を除いて気密シートを設けないと結露する可能性が高いので危険です。発泡ウレタン系の断熱材は、施工後10年ほどすると中に噴出されているガスが抜け、断熱性能が低下してくる可能性があります。

また、木造住宅は木が乾燥したり、強風や小さな地震などが起こると構造体がしなり動きますので、施工当初はしっかり発砲して隙間が無かったとしても、木部と断熱材の間に隙間ができて、断熱性能に影響が出る可能性があります。そうなった場合、気密シートが無いと壁内結露を起こす可能性が高まって非常に危険なのです。専門家の中でも情報が混乱しているところがありますので、「断熱材を選ぶときは部屋内側の気密シートは絶対にセットにしてもらうことが壁内結露を起こさないための最低条件」と私は考えています。