宝塚ファン/宝塚歌劇団 トップスターの変遷

星組・涼 紫央――退団(2ページ目)

2012年8月5日――星組スター・涼 紫央さんが『ダンサ セレナータ』『Celebrity』千秋楽にて宝塚歌劇団を卒業しました。宝塚をこよなく愛した別格のスターでした。

桜木 星子

執筆者:桜木 星子

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宝塚音楽学校入学試験の合格倍率が史上最高の48.2倍の年に合格。
初舞台後、星組に配属され、麻路さきさん、稔幸さん、香寿たつきさん、湖月わたるさん、安蘭けいさん、そして柚希礼音さんらのトップスターの元、過ごしました。

2002年、『プラハの春』の堀江亮介役で新人公演初主演。2003年、バウワークショップ『恋天狗』の弥太でバウホール公演初主演を果たします。

ドイツ・ベルリン公演、中国公演、韓国公演のメンバーに選抜され参加。
2006年『ESpecially!!』と2011年『DREAM TRAIL~宝塚伝説~』に外部出演し、現役生徒の代表としても活躍しました。

宝塚歌劇代表作の『ベルサイユのばら』には何度も出演しました。その際、演じたのが、オスカルかジェローデル。決してアランやアンドレではなく、ブロンドのロングヘアーに軍服の貴公子が、ノーブルで美しい涼さんにぴったりでした。

正統派の星の王子様ですが、『エル・アルコン-鷹-』では復讐心に燃えるエドウィン・グレイムを、『太王四神記』では大長老プルキルを熱演。口跡の良さも相まって、魅力的な悪役となりました。
また『激情』では、全く違う色の二役、メリメとガルシアを見事に演じ分けました。

『オーシャンズ11』

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

誰もが驚いたのが、ヘアースタイルを白髪のベリーショートにして挑んだ『ロミオとジュリエット』のベンヴォーリオ。これがお似合いだった!
親友・ロミオを思うベンヴォーリオの感情は、朋友・柚希礼音さんを思う涼さんの思いのようで感動を覚えました。

また同じくショートヘアーで挑んだ『オーシャンズ11』では、映画ではブラット・ピットの演じたラスティー・ライアンを好演。スマートな身のこなし、若造には出せない熟成された大人の魅力をふんだんに味あわせてくれました。

テレビドラマなどを見ていても、その俳優さんの性格が何となくわかるものです。どんな役を演じていても「この人、きっとシャイだろうな」「この人、キツそう……」。涼さんからはひたすら「優しい人」「温かい人」。
笑顔も素敵な人で、その笑顔は「宝塚歌劇にようこそ!」といつも迎えているかのようでした。

トップスターより上級生ではあるけれども、脇役ではない、魅力的な二枚目を演じた涼 紫央さん。その存在は、芝居の深みを増し、幅を広げ、輝きを与えました。
それは舞台上のみならず稽古場でも楽屋でもそうであったでしょう。星組の生徒たちは、涼さんの大きさに包まれ、涼さんから学ぶことがどれほどたくさんあったことか。
そして涼さんの存在の心強さ、有り難さを一番強く感じていたのは、下級生の頃から共に切磋琢磨し、比較的若くしてトップスターとなった柚希礼音さんかもしれませんね。

また、ファンをとても大切にした涼 紫央さん。大劇場のセンターにはなれなかったけれど、常に光り輝く涼さんを観るたび、ファンの方々は「涼 紫央のファンでよかった……」と思ったに違いありません。

ただ我侭を言わせていただければ、もっとずっと宝塚にいて欲しかった……。観客にも下級生たちにも、男役の真髄や、宝塚歌劇の魅力を、もっと伝えて欲しかったなぁ……と。

宝塚をこよなく愛し、これまでにない別格であり格別のスター、涼 紫央。
その足跡を私たちは忘れません。 

とよこさん……
お疲れ様。そしてありがとう。

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