高齢者虐待は誰もが抱えるリスク

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高齢者虐待は5つの種類に分けられる

自分や夫・妻の両親が老いを迎え、家族の支えが必要になったとき、あなたならどうしますか? 世間の人はよく「産んでくれた親を子どもが介護するのは当然」「姑の世話をするのは嫁の務め」などと言いますが、現実に、老いて介護や援助が必要になった親の面倒を見ることは、大変な苦労です。当事者にしか分からない複雑な思いを抱え、孤独な気持ちになってしまう人も多いでしょう。

認知症が進んでくると、物をなくしたり、やったことを忘れてしまったり、被害妄想が強くなったりして家族は振り回されますし、ひざや腰を壊して車椅子が必要な状態になると、トイレやベッドの移動にも常に付き添ってあげなければなりません。さらにこうした状態が進行して10年、20年と付き合っていくと、いくら恩のある親とはいえ、顔を見るのも嫌になったり、憎らしさが募ってしまうこともあるのではないでしょうか。

そんな複雑な思いを抱えていると、知らず知らずのうちに親を傷つけ、気付かないうちにその行動が虐待に当たってしまうこともあるのです。それが「高齢者虐待」です。「高齢者虐待防止法」では、65歳以上の高齢者への養護者による虐待を次の5つの種類に分類しています。まずは、その定義を確認してみましょう。

1.身体的虐待
殴る、蹴るなどの身体的な暴力によって身体に傷や痛みを与えること。また、外部との接触を意図的、継続的に遮断すること。

2.心理的虐待
侮辱的なことを言ったり脅したり、無視したり嫌がらせをしたりして、精神的な苦痛を与えること。

3.性的虐待
同意していないのに性的な行為をしたり、強要すること。

4.経済的虐待
同意がないのに財産や金銭を勝手に使ったり、希望しているのに金銭を使わせないこと。

5.介護・世話の放棄・放任
必要な世話をしない、介護サービスを利用させないなどにより、生活環境や身体、精神の状態を悪化させること。

やり場のない気持ちが虐待につながる 

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自分ではどうしようもできない思いから虐待に及んでしまう

「虐待」と聞くと、自分には関係のない遠い世界のことのように思えてしまうかもしれませんが、実は何気なく行う行為が虐待に近づいている可能性があります。

たとえば、毎日親身に介護をしているのに、介護をされる親から心ない言葉をかけられ、たまらなく憎らしい気持ちになる。自分は十分な愛情をもらえた実感がないのに、どうして自分ばかり親の世話をしなければならないのかと思う。きょうだいや親せきに介護を押しつけられ、不公平感が募る・・・・・・。

こうした感情が溜まるとストレスがこみあげ、ある日、暴言が止められなくなったり、思わず叩いてしまった手を止められなくなってしまうこともあるかもしれません。

また、介護に専念しているために金銭的な余裕がなくなると、親の貯金を了解なく使ってしまいたくなることもあるかもしれません。介護に疲れ果てて世話をする気力が湧かなくなり、オムツや衣服を替えないまま放置したり、十分な食事を与えないままにしてしまうこともあるかもしれません。

このように、長年、また一人きりで介護をしていたりすると、たまったストレスのやり場がなくなり、また正しい接し方、してはいけない行動が判断できなくなり、思いがけずにひどいことをしてしまったり、傷つけたくないのに傷つけてしまうことも起こりえるのではないでしょうか。