ペプチドとは……たんぱく質がアミノ酸まで分解される手前の状態

ペプチドとは

牛乳たんぱくからつくられる「カゼインホスホペプチド(CPP)」はカルシウムの吸収を促す働きがあると考えられています

たんぱく質は、約20種類のアミノ酸がつながってできています。

私たちが肉や魚などの食べ物に含まれているたんぱく質のままでは吸収されません。ぺプチドは、アミノ酸まで分解される手前の、いくつかつながった状態です。消化酵素によってアミノ酸やペプチドに分解されて、吸収されます。

アミノ酸が2個つながっていればジペプチド、アミノ酸が3個つながっていればトリペプチド、10個前後つながっているものはオリゴペプチド、100個以上つながるとポリペプチドと呼ばれます。5,000以上のポリペプチドがたんぱく質となるといわていますが、この分子量の境は明確ではないようです。

アミノ酸は、それぞれいろいろな性質があります。さらにジペプチドだけでも、20種類のアミノ酸が2個つながっているので400種類(20×20)は存在ということになり、ペプチドはたいへん種類が多く、性質も多様といえます。
 

ペプチドは食品の美味しさの素も構成する

ペプチドは、私たちの体内で消化されて生成される他に、食品の発酵・熟成などの過程でも、微生物や酵素の働きにより生成されます。

たとえば、肉は死後硬直の後、自己消化によってタンパク質が分解され、肉質が柔らかくなり、またうまみが増します。これが「熟成」で、熟成をへて、風味のある食肉になります。

タンパク質そのものは、味はほとんどありませんが、アミノ酸に分解されると、それぞれに様々な味があります。ペプチドの味は、アミノ酸よりも複雑で、コクがあり、また異味異臭に対してマスキング効果があり、現在では動物・植物・酵母由来のタンパク質を酵素で処理して作られた調味料が利用されています。

ただし中には、苦味をもつペプチドもあるので、ペプチド全ての存在がおいしさにつながるわけでもありません。
 

体内で働く「生理活性ペプチド」に期待されている作用

ペプチドには、タンパク質やアミノ酸とは異なる作用があることが、様々な研究から見いだされています。中でも体内で重要な働きをするものを生理活性ペプチドと呼ばれています。

研究されている主な生理活性ペプチドの作用をあげますと、
  • 血圧降下
  • 抗酸化
  • ホルモン
  • 神経伝達
  • 免疫調節
  • コレステロール低下
  • ミネラル吸収促進
  • 抗菌
などがあります。

まだまだ未知数の部分もありますが、創薬分野での利用などに今後の期待が高まっています。
 

ペプチドは健康食品や美容食品、化粧品にも利用されている

酒粕ペプチド

酒粕から酵素分解されたペプチドも注目されています。

このようなペプチドの作用を生かして、魚や大豆などを初めとする食品の中に含まれているタンパク質を酵素で分解されたペプチドが、特定保健用食品や健康食品、美容食品、さらにペットフード、化粧品などにも機能性素材として利用されています。

webや雑誌などで、見聞きしたペプチドの名前だけでも、由来する食品は、牛乳、大豆、酒粕、ごま、イワシやカツオ、ワカメ、ノリ、コラーゲンなどがあげられます。

健康食品や美容食品の場合は、ペプチドが添加されているとはいえ、あくまで食品ですから、薬のような効果を表示することは禁じられています。というのは、効果に対する科学的な裏付けも、研究報告も動物実験レベルのものなども多く、薬と比べると信頼性が低いのです。
   

トクホにも利用されているペプチドの期待される作用

特定の保健の効果が科学的に証明されている(国に科学的根拠を示して、有効性や安全性の審査を受け、消費者庁の許可を得ている)食品が特定保健用食品(通称:トクホ)です。

特定保健用食品は、血圧、血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けたり、お腹の調子を整えるのに役立つなどの効果を表示することができます。この特定保健用食品にも、ペプチドが利用されているものがあります。

現在、特定保健用食品に利用されているペプチド性素材をみてみますと、特に近年増えている「血圧が高めの人に適した食品」で、主にサーディンペプチド、わかめペプチド、ラクトトリペプチドなどがあります。

これらのペプチドは、アンギオテンシン変換酵素(以下、ACE)を阻害することで、血圧の上昇を抑える作用があると考えられています。ACEは、アンジオテンシンI というペプチドを、昇圧作用のあるアンジオテンシII に変換する酵素。このACEの作用を阻害することで血圧を調節すると考えられています。

他にも、「歯の健康維持に役立つ食品」には「歯の脱灰の抑制と再石灰化を促進」に関与する成分としてカゼインホスホペプチド-非結晶リン酸カルシウム複合体、「体脂肪がつきにくい食品」には「食後の中性脂肪の過度の増加抑制に関係」する成分としてグロビンたんぱく分解物、「コレステロールが高めの方に適する食品」には「コレステロールの吸収を抑制」する成分としてリン脂質結合ペプチド、「カルシウムの吸収を助ける食品」には「カルシウムと結合し吸収を促進する成分としてカゼインホスホペプチド(CPP)などが利用されています。
 

ペプチド利用のトクホを利用する際のポイントと注意点

国が承認したとはいえ、特定保健用食品はあくまでも「食品の一種」。薬のように治療を目的に摂取するものではありません。また生活や食事が乱れていれば、これさえ食べればよいというわけではありませんし、期待する効果は得られません。あくまで今の食生活を改善するきっかけとして、適切に利用することが前提です。

こうしたペプチドを利用した特定保健用食品でも、上手に利用しなければ、効果が得られないこともあり、注意点をまとめてみます。

以下は、国立健康・栄養研究所の「特定保健用食品(通称:トクホ)の上手な利用法 (Ver.110825)」より「トクホの特徴と利用上の注意 (効果的な利用方法)」を抜粋して引用します。

「血圧が高めの方に適する食品」
このトクホの有効性を確認する試験では、二次性高血圧 (他の病気が原因で起こる高血圧) の人は除外し、正常よりも血圧が高い人を対象としています。
「コレステロールが高めの方に適する食品」
このトクホの有効性を確認した試験では、コレステロール値が正常よりも高く、脂質の摂取量も平均より多い人が、トクホを一定量連続して摂取した結果、コレステロール値を下げる効果が得られています。しかし、実際の食生活の中で毎日連続して同じ食品 (特にマヨネーズやマーガリンなど) を食べ続けることは考えにくく、また、トクホの種類 (油脂類) によってはコレステロール値の低下と引き換えにエネルギーを摂り過ぎてしまう可能性も否定できません。

特定保健用食品には、基本的に個別の診査を行い、例えばコレステロール値が正常より高い人で試験を行った場合というような条件があります。単純に「コレステロールが下がるだろう」というイメージだけで、むやみに使用するべきではありません。

また特定保健用食品は、食品とはいえ医薬品同様に作用するものもあり、治療薬との併用、また複数の特定保健用食品をとることで、特定の成分を過剰摂取し、作用が強くなる可能性もあるので、気をつけてください。

また高血圧やコレステロールは、遺伝的体質もありますが、食生活や生活習慣が原因である可能性もあります。特定保健用食品を利用する前に、まずは運動不足や生活リズムの改善、食生活の内容等、現状を見直すことが重要です。


参考/
・特定保健用食品 (通称:トクホ) の上手な利用法 (Ver.110825)(健康食品の安全性・有効性情報/国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
・食の今(日本獣医生命科学大学 食品科学科)
・ペプチドの多様な機能性(食品工業センターニュース)
・アミノ酸・ペプチド・タンパク質:生命を支える主役たち(富山大学工学部)
・健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック(第一出版)
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