ゲームと物語の関係
物語を雄弁に語ることが、本当にゲームを面白くするかは、場合によって変わるかもしれません
イラスト 橋本モチチ
しかし武器を貸した後、武器屋としてのゲーム進行が強制的に止められて、冒険者達のその後を追う形になっていたら、レンタル武器屋deオマッセの物語はこれほど面白くは感じないかもしれません。それはゲームのテンポを悪くし、プレイヤーはお話を見させられてるというような気分になる恐れもあります。
ドナイナッターは、もしかしたら物語を頭からお尻までしっかり見せることができないかもしれませんが、とにかくプレイヤーの興味をそそります。逆に見逃すと、どうしても気になって、スマートフォンでTwitterを見るのと同じような感じでタッチパネルを上下にこすってスクロールさせ、見逃したテキストを探したくなります。
その時感じているのは武器屋の気持ちそのもので、自分の作った武器でピンチになればすごく心配しますし、武器が雑に扱われれば怒り、華麗に敵を倒していれば惚れ惚れします。そして冒険者が帰ってくれば、ドナイナッターで見てたよ、お疲れ様! という気分になります。物語を見せることがゲームの中心ではなく、物語がツールとして考えられていて、武器屋のロールプレイをするというゲーム性にリアリティを与えています。
ここに、映画や本と、ゲームとの大きな違いがあるのではないでしょうか。ゲームと物語の関係というのは色んな議論があります。しばしば、ゲームは物語を語ることに夢中になりすぎてユーザーを置いてきぼりにしている、という指摘もあがります。実際、物語がクリエイターの押し付けに感じられてしまうゲームというのもあるでしょう。
本作のあっけらかんとした雰囲気からすると、こういう言い方はやや大仰な感じもしますが、レンタル武器屋deオマッセは、ゲームと物語の関係に対して非常に面白い提案をしていると言えます。しかし、一生懸命にお話作りに取り組んでいるクリエイターほど、取りにくい方法論かもしれません。このディレクションをお笑い芸人の平井善之氏が担当しているというのが、また実に興味深いところかもしれません。
物語が面白く、それをしっかり語ることがゲームを面白くさせることも確実にあります。しかし、より自由に物語とゲームの関係を考えることができれば、まだまだ色んな表現の可能性が残されているのではないでしょうか。
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