内側の傷や、古くなった容器にご注意
食中毒は、細菌やウイルス、自然毒などによるものもありますが、化学物質が原因の場合もあります。私たちが調理、保存に使う器具や容器には、アルミニウムや銅、鉄など様々な金属でつくられており、これらは酸性の食品に接触すると金属が溶け出すことがあります。短時間では溶け出す金属の量はごく微量ですし、また器具や容器の内側をコーティングして食品が直接接触しないようにするなど、金属が過剰に溶け出さないような工夫が施されています。
しかし、水筒などは、うっかり落としたりぶつけたりするものです。目には見えづらい部分が傷ついていたり、破損している場合に、酸性飲料を長時間入れているうちに、金属成分が飲み物の中に過剰に溶け出していることがあるのです。特に、銅は多量に摂取すると中毒を起こす可能性があります。
実際に、東京都福祉保健局によると、
「内側に傷がついた水筒による事例」
水筒の内部が破損しており、飲み物を入れて長時間置いたことで、通常は飲み物が直接ふれない保温構造部分の内部まで飲み物が染み込んでしまったこと、さらにスポーツ飲料が酸性だったため、そこに使われていた銅が溶け出したことが原因。
「古くなったやかんによる事例」
アルミニウム製のやかんで長期間にわたって繰り返しお茶などをわかしたことで、水道水等に含まれる銅がやかんの内側に大量に付着・蓄積し、そこに酸性の乳酸菌飲料を入れたため、飲み物の中に銅が溶け出したことが原因。
という食中毒の事例が報告されていました。
銅以外の金属製の容器でも、表面に傷がついていたり、酸性度が高い食品で使用したりすると、同じように食品中に微量の金属成分が溶け出すことがあります。アルミニウムや鉄では、溶け出す金属で中毒を起こすことは考えにくいですが、容器が腐食することがあります。
金属製の容器を使用する際の注意点
東京都福祉保健局では、次のようなアドバイスをしています。- 容器の内部にサビや傷がないか、よく確認しましょう(外見上異常がないように見えても破損していることがあります)。
- 酸性度の高い飲み物や食べ物を金属製の容器に長時間保管しないようにしましょう。
- 定期的に新しいものに交換しましょう(古くなった容器は、劣化により内部が破損していることがあります)。
詳しくは、「食品衛生の窓」(東京都福祉保健局)をご参考になさってください。学校などでは夏場の熱中症対策の水筒持参の注意事項の中に、スポーツ飲料を持たせる際には専用ボトルを使用するように通達しているのも見受けられます。