今年の夏は西高東低の予報。電力不足に悩む関西地方には打撃
ご存じ、5月5日に北海道の泊(とまり)原子力発電所が運転を停止したことで、現在、わが国では原発は1基も稼動していません。“原発ゼロ”の状態です。その結果、関西電力の今夏の電力需給見通しは、福井県にある大飯(おおい)原発の再稼動がない場合、マイナス14.9%になることが予想されています。九州電力のマイナス2.2%、北海道電力のマイナス1.9%を抜いて、ダントツのワーストワンです。にもかかわらず、気温上昇により電力需要が高まるのは皮肉以外の何物でもありません。
政府は関西電力管内での電力使用制限令の発動は見送る方針を固めたものの、関西電力による計画停電の実施については、その可能性を否定していません。すでに関電は電気を多く使う鉄道や製造業などの大口顧客を中心に15%以上(2010年比)の節電要請を始めています。各家庭にまで「節電のお願い」の範囲が広げられるのは時間の問題といえるでしょう。
東電管内では4月から企業向け、7月からは家庭向けの電気料金が値上げされる
ここで改めて、なぜ、こうまで列島各地が電力需給に振り回されなければならないのでしょうか?最大の原因は福島第一原発の放射能漏れ事故による「原発反対ムード」の台頭です。被災地の惨状、そして被災者の苦悩を目の当たりにすれば、反原発の声が高まるのは無理もありません。前述の通り、今、日本では原子力発電所は1基も稼動していません。原発に依存し過ぎていたことが裏目に出てしまった格好です。
と同時に、9つの電力会社による電力の地域独占体制にも問題があるといえます。低圧引き込み(下表参照)の一般家庭では地域電力会社からしか電気を買えません。電気事業法の改正により、2000年から段階的な電力の自由化は進展しているものの、住宅については6000V以上の高圧引き込み(=企業のような大口契約)の大規模マンションしか自由化の恩恵は享受できていません。電力の完全自由化が進み、相当数の電気事業者が存在していれば、地域独占による偏在の弊害は回避できたはずです。
そこで今回、自己防衛策として紹介するのが、マンション内にある受変電設備を「電力会社の所有」から「管理組合の所有」に変更して電気料金の値下げを図ろうという試みです。マンションなどの大規模建築物の場合、電気は発電所から高圧のまま敷地内に引き込まれます。そして、マンション内にある受変電設備で低圧に引き下げられ、最終的に共用部分と専有部分に配電されます。
この受変電設備を管理組合の所有にすることで、電気料金の大幅なコストダウンが期待できます。管理組合が自ら電気の受変電を一括管理することで、共用部分のみならず専有部分も電気料金が削減可能となります。これにより、今年7月から予定されている東電管内での家庭向け電気料金の値上げにも対抗できます。
はたして、どのような仕組みなのか?―― 次ページで、詳しく解説します。