独特のレイドバックした音質
ガイド:今回のアルバム『馬鹿ヌーヴェルヴァーグ』、音質が凄いです。レコーディングやマスタリングの高品質を追求する風潮に逆行しています。品質は捨て、質感を追求するAMIさんの潔さが伝わります。
AMI:
自ら望んで「逆行」したわけでなく、「逆行せざるを得なかった」と言ったほうが正しいです。オレもニューヨークのパワーステーションみたいなゴージャスなスタジオで録れるものなら録りたいわけです(笑)。トッド・ラングレンにエンジニアをやってもらいたいわけです。しかし、カネも機材もコネも無い。結局、全部自分でやるしかない。とは言え、今時、中学生でもパソコンにPRO-TOOLSをぶっ込んで使っている時代に、オレが持っているのは、10年以上も前に購入した小型の16TRハードディスク・レコーダーのみ。最新鋭のイージス艦に手漕ぎのボートで立ち向かうようなものです(笑)。まずは、レコーディングに関する技術書を読むところから始まり(笑)、マイクのセッティングからミックスダウンまで基本的に全部一人でやりました。近所の安いリハーサルスタジオに機材を持ち込み、あらかじめ作っておいた仮オケを流しながら最初にドラムを録音。次にメンバーの各楽器を順次録音し、ベーシック・トラックはほどなく完成したものの、その後、約1年近くに渡って続いた自宅での狂気のオーヴァーダビングと編集・修正作業では、あまりの過酷な作業のため、途中、機材がオシャカに。そして、オレのほうも何度もダウンしかけ、ドリンク剤を常に飲みながら、整体院に通いながらの正に命がけの(笑)1年でした。その血と汗と意地の結晶が、かの元祖宅録狂のロイ・ウッドもビックリという独特のレイドバックした音質というわけです。
設定は伊福部昭先生がガレージロックをやったら
ガイド:レイドバックした音質……言い得て妙!
「赤富士(エロチカ・ジャポン)」は、このアルバムのオープニングを飾るのに相応しい、いかがわしさでいっぱいのサントラのような曲。反復とリズムが美しいです。
AMI:
なぜか、伊福部昭先生がガレージロックをやったら、っていう意味不明な設定で作ったエキゾチックなインストです。