“最も背の低い”4ドアサルーン
イタリア、シシリー島。5月上旬ともなれば、もうすでに夏を思わせる日差しにあふれており、海は真青に映え、山々の緑は白く霞み始めていた。ちょっと埃っぽいなあ、というシシリアの印象は変わらない。街を走るクルマはフィアットがダンゼンに多く、小さな街では半分くらいはパンダ(新しい方)だ。
そんななかで見る実物は、写真よりもぐっとワイド&ローに映る。ホイールベースが113mm伸びただけで、ほかはクーペとほとんど変わらない。ルーフを格好よく伸ばすため、わずかに全高を持ち上げているけれども、1.4mを切った。初代CLSクラスに近い高さで、全長5m、全幅1.9mなのだから、低く見えて当然だ。全高世界で最も背の低い4ドアサルーンだろう。
既存の6シリーズとの最大の違いは、もちろん、ホイールベースが伸びてドアが追加されたことである。だから、まずは試しに、と、リアシートに乗り込んで、100km以上を過ごしてみた。
リアドアを開けようとすると、ウィンドウの向うにグランクーペのロゴが見えた。ちょうどウィンドウでラミネートされる格好で、なかなか格好いい。こうゆう“くすぐり方”をBMWはどこで覚えたんだろう……。日本人ならば、低いルーフをくぐって入ることも、ひとつの趣味だと考えるだろうか。乗り込んでしまえば、平均的な身長の日本人男性なら、頭上、足もとともに、スペース的な問題はない。さすがに5シリーズサルーンよりも乗り心地は硬いが、すっぽりと収まった感があって、100kmぐらいなら、どうってことはなかった。
ちなみに、後席センターにもシートベルトが付いているので、5人がけも可能というわけだが、実際にはコンソールがリアシートに接しているため、大きく跨いで座る格好になってしまう。中央席は、ベルトがあるだけの、本当に本当のエマージェンシー、“ちょっとそこまで”レベルであった。