もしも、おとぎ話の結末がハッピーエンドでなかったら……

子どもたちが出会うお話の中で、おとぎ話は欠くことのできない大切なジャンルです。「めでたし、めでたし」で終わる多くのおとぎ話は、子どもたちが安心して物語を楽しむ機会を提供してくれます。でも、もしも、結末がハッピーエンドでなかったら、お話はどうなってしまうのでしょう? 今回は、そんな「もしも」の世界を楽しめるハラハラ・ドキドキの絵本をご紹介します。

イギリスの絵本作家ジェーン・レイが絵で魅せる新しいおとぎ話

『魔女にとられたハッピーエンド』の表紙画像

もしも、大好きなおとぎ話の結末が変わってしまったらどうしましょう?!


森に住む少女ジュジュの仕事は、世界中の子どもたちに、おとぎ話のハッピーエンドを届ける事でした。ところがある晩、ハッピーエンドがぎっしり詰まった袋を魔女に奪われてしまいます。そのため、ハッピーエンドを迎えることができないおとぎ話に、子どもたちは泣き叫び、悲しみ、怖くて眠ることさえできなくなりました。

そんな中ジュジュは、その晩とても不思議な夢を見ます。夜空に字を書くことができる不思議な金色のペンの夢です。そしてもっと不思議なことに、ジュジュが目覚めるとテーブルにその金色のペンが置かれているではありませんか。ジュジュは、このペンを使いハッピーエンドを取り返そうと、意外な方法を思いつきます。さて、ジュジュは魔女からハッピーエンドを取り戻し、このお話もまた、ハッピーエンドで締めくくることができるのでしょうか?

読者の想像力を刺激する「もしもの世界」を描いたのは、イギリスの絵本作家ジェーン・レイです。絵本は、絵と文章のバランスが大切だと言われますが、この邦訳作品では、間違いなく絵が優っています。その絵は、ただ美しいだけでなく、絵自らがお話を語っていくような力強さを感じさせる挿画なのです。

それは、主人公の絵を見ればよくわかります。ジュジュは、魔女の恐ろしさに腰を抜かしてしまうようなところもありますが、その眼は凛としていて、彼女の内に秘めた強さと賢さがにじみ出ています。また、背景も素晴らしい。例えば空の描き方を見てみると、ジュジュが魔女と出会った瞬間の夜空は重苦しい利休鼠のようなグレーが支配しています。ところが、金色のペンを使う時には、まるで彼女の希望を託すかのように、同じ夜空がスミレ色に近い明るい青紫へと変化し、最後に描かれた空は瑠璃色で、その色合いは、穏やかで平和な森の様子を象徴しているかのようです。

絵をじっくり眺めて楽しみたい作品で、しかも少々長めのお話のため、大勢を対象にした読み聞かせより、親子でじっくり読むのに向いています。いろいろなおとぎ話を知っている、少し大きなお子さん(年長さんから小学生以上)の方が、より楽しめるでしょう。


【書籍DATA】
キャロル・アン・ダフィ:文 ジェーン・レイ:絵 さわちか・ともこ:訳
価格:1575円
発売日:2012/4/12
出版社:新樹社
推奨年齢:6歳くらいから
購入はこちらから




※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。