損害保険/損害保険関連情報

東日本大震災 損害調査の現場から その1

東日本大震災では、損害保険会社から多くの社員や鑑定人が現地に赴き、損害調査を行いました。地震保険の損害調査の歴史上これまでなかった規模の地震だっただけに、保険会社の皆さんにも大変なご苦労があったようです。今後私たちが地震保険を請求する時に慌てたり困ったりしないよう、知っておきたいことを損害調査の担当者、Fさんにインタビューしました。とても興味深いお話です。

清水 香

執筆者:清水 香

火災保険の選び方ガイド

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歴史的に初めての地震損害調査を経験

たくさんの家屋が損害を被った今震災

たくさんの家屋が損害を被った今震災

清水:今震災では、多くの契約者の方が被災されましたね。現地で損害調査に携わったFさんも、大変なご苦労をなさったのではないでしょうか。

Fさん:今震災への対応は、損害保険業界全体においても歴史的に初めての経験でした。調査するためにヒトやモノを集めるなどさまざまな準備があり、また交通網の乱れもあって私たちが実際に被災地に拠点を設けるのには、しばらく時間を要しました。本社に対策本部、被災現地には対策分室を立てて、現地には4月頭から8月まで2週間交代でスタッフが約4カ月間滞在しましたね。

清水:契約者の方の請求に基づいて損害調査を行ったのですか?

Fさん:契約者の方からのお申し出だけではなく、こちらから契約者の方への積極的な声掛けも行いました。当社には仙台に営業所が2カ所あり、それらの営業所に勤務している営業社員たち自身も被災者でしたが、各インフラが整ってからお客様のところへ回って声掛けをしていました。

清水:ご自身も被災されていたのに……。
 

「だいじょうぶですか?」…手紙や避難所訪問などで契約者へ声掛け

Fさん:とにかく「どうにかしなければ」という状況だったんです。その後、契約者の方には「だいじょうぶですか? 損害はありませんか?」という趣旨の手紙も出しましたね。被災地の契約者に対しては、どの保険会社もフォローしていたと思います。

清水:つまり、待っているだけでなく被災者への直接訪問や手紙で、保険金の請求をしていただくようお知らせをなさっていたということですね。

Fさん:それでも連絡が取れない方もいました。避難所を探しても探し出せない場合もありました。一方で、「ここにいたんですか!」というケースもあったりもしましたね。

先ほども言いましたが、今回は契約者の方からの申し出だけでなく損保業界で全損と認定する地域を決めたりしてこちらから動いていましたが、それでも、保険金を支払いたくても契約者の方をすぐに見つけることもできなかったんです。そもそも役所が被災していましたから転居の手続きができないでしょうし、郵便屋さんはずいぶん活躍してくれたのですが郵便局も通常の機能は失っていましたから、手紙を出しても戻ってきたりしたこともありました。

清水:すべてが機能停止になってしまった状況だったわけですね。

Fさん:そうです。それに損害を受けたお宅がほんとうに多かったので、私たちが訪問するまでに1カ月以上お待ちになった方もおられたと思います。本当にご迷惑をおかけしてしまいました。
 

震災1~2カ月後の訪問、片付けられた後の損害状況の把握

清水:1~2カ月の間、被災された住宅や壊れた食器などをそのままにしておくわけにはいかないですよね。そうした場合、どう対応されたのですか?

Fさん:そこは今回、とても困ったところです。そもそも損害保険というのは、どのような損害が発生しているかを確認したうえで保険金が支払われる仕組みです。ですから本来であれば、損害が確認できないと保険金を支払うことができません。

そうはいっても今回の地震の後、倒れそうな家や壊れた家財をそのままにはして暮らすことは不可能です。ですから多くの世帯では壊れたモノを片付けたり、住宅についても当座の修繕をしていた状況だったんです。

清水:お客様の損害の状況をそのまま確認できなかったということですか?  

Fさん:そういうことです。ですから今回は、例えば家財の損害であれば、炊飯器、食器類、箪笥類などはどのうちにもあったと思われるので、それらが壊れて処分したということであれば、お客様のご申告やお写真・現場の様子から損害の認定や請求手続きを進めざるを得ないという、特殊な状況をのりきらなくてはなりませんでした。

そもそも地震保険は、何が壊れていくらで直るだから保険金がいくらです、という保険ではありません。修理費を支払うわけではないですから、何が壊れましたかという話をもとに当時の状況を書類上で再現するしかなかったのが実際でした。

次は、損害認定をスムーズに進めるためには。
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