なぜ、いま米国の不動産なのか?
アメリカの不動産といえば、リーマンショックの引き金を引いたのがサブプライムローンですから、まさに今の世界経済危機の元凶であったわけです。アメリカではローンの返済ができずに自宅が競売に付されて、多くの人が家を失いました。住宅価格は下がり続けていて、在庫も積み上り、まだに下げ止まってはいません。そんなアメリカの不動産市況にも回復の兆しが見え始めたというニュースをご紹介します。2012年4月26日のブルームバーグでは、次のようなニュースが流れました。
全米不動産業者協会(NAR)が発表した3月の中古住宅販売成約指数(季節調整後)は、前月比4.1%上昇した。ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査の予想中央値は1.0%の上昇だった。米住宅市場が安定化の兆しを見せつつある。住宅価格の下落ペースが落ち着きつつあるほか、住宅需要も改善を見せている。1930年代以来の落ち込みを示した今回の不動産市場について、一部のエコノミストは底入れを宣言している。
ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は「クラッシュ(崩壊)は終わりだ」と述べ、「新築、中古の両販売に加え、住宅着工件数が底を離れつつある」と続けた。4月24日に発表された新築住宅販売は予想よりも良かったほか、別の住宅統計では価格の下落率が縮小した。これを受けて、市場では持続的な回復に向かっているとの楽観が強まった。
ブルームバーグが引き合いに出したエコノミストのマーク・ザンディ氏は、 2007年にサブプライムローン問題が表面化したときから米不動産市場に対して弱気な見方を主張してきました。そんなザンディ氏の米住宅底入れ宣言に注目が集まりました。
事実、シアトルやシリコンバレー、マイアミ、ワシントンなどでは住宅在庫が減り、購入競争も起こっているらしいのです。住宅購入意欲に火がつき住宅争奪戦が始まったという報道もあります。
本格回復には住宅セクターの回復が欠かせない
アメリカ経済が本格的に回復するには、不動産市況の底入れが必須です。底入れは本当に実現するのか?アメリカで住宅販売が上がり始めたときには、株価回復にも火がつくと期待されますが、その期待がここまでは裏切られてきたのも事実です。物件価格の値下がりは止まっても、債務超過の家計がまだ多く、金融機関も住宅ローンに積極的ではない現状では、住宅在庫はいっぺんには減らない。だから、本格的な回復(物件価格の値上がり)にはまだ時間がかかるという慎重論もあります。
底入れが実現して、物件価格が上昇すれば、リートの基準価額は上昇し利回りは低下します。インカム収益に加えてキャピタル収益が狙えます。そうではなくて、市況回復が遅れれば、基準価額は低迷し、利回りが高止まりするでしょう。キャピタル収益が望めずともインカム収益だけは残ります。
さて、あなたはどちらのシナリオを選択しますか?いずれにしても、今後のアメリカの不動産市況が世界経済に影響を与えます。