冴えない気分の原因は頭痛がひどいせいか? それとも、頭痛がひどいと感じるのは、気分が冴えないせいなのか? それはともかく、忘れる訳にはいかないのは、頭痛の原因には身体の病気もある事です
例えば、「腰が痛い」「手先が痺れる」といった事に気付いただけで、冴えない気分に襲われてしまうかも。もっとも、冴えない気分が、さらに増幅されてしまうか否かには、本人の性格的問題も関わってきます。
例えば、完璧主義者。あるべき機能を果たさぬ自分の肉体に思わず苛立ちを覚えてしまうかも知れません。実際、病気にかかると言う事は、それ自体、大きな心理的ストレスになりやすく、心の病気のきっかけになる事もありますが、時には、身体的病気そのものが、脳内環境を病的にしてしまい、精神症状を引き起こす事があります。
今回は、身体的病気が原因の心の病気について詳しく解説します。
身体的病気が原因でも気持ちは落ち込む
うつ病は脳内環境が病的になってしまった結果、冴えない気持ちを始め、様々な抑うつ症状が出現する病気です。うつ病は通常、本人の遺伝的、社会環境的、心理的要因がネガティブに複合作用した結果、発症しますが、場合によっては、以下のような身体的問題が原因で、脳内環境が病的になってしまい、抑うつ症状が出現する場合もあります。- 脳内の血管性病変(脳梗塞、脳出血など)
- 脳腫瘍
- 頭部外傷
- パーキンソン病
- 感染症(梅毒、髄膜炎菌など)
- 栄養不足(ビタミンB12欠乏症など)
- 内分泌系疾患(甲状腺機能低下症など)
- 脳に作用する薬物の影響(アルコール、ニコチン、カフェインなど)
- 血中電解質異常
不安症状、不眠、そして幻覚、妄想も
実は、以上のような身体的問題で生じる精神症状は、抑うつ症状だけとは限りません。不安症状、不眠、幻覚、妄想など、心の病気で見られる症状のほとんどは、身体的問題が原因で脳内環境が病的になれば、生じる可能性があります。例えば、聞こえるはずの無い声が聞こえてくる幻聴。統合失調症などで、よく見られる症状ですが、脳内の器質的疾患、例えば、脳腫瘍によっても、幻聴が生じる場合があります。また、褐色細胞腫。主に副腎に発生する腫瘍で、まれな疾患ではありますが、腫瘍細胞がノルアドレナリン、アドレナリンなどを産生するため、強い不安症状を伴いやすい身体的病気として、よく知られています。
また、脳内に影響を与える物質の影響で、脳内環境が病的になってしまった結果、精神症状が出現する事は少なくありません。例えば、アルコール依存症。長期間、アルコールを過剰に摂取する事によって、脳内環境が病的になってしまうと、抑うつ症状のみならず、強い不安症状、場合によっては、幻覚、妄想など精神病様症状が出現する事もあります。
身体の病気が治れば精神症状も解決!
こうした身体の病気が原因で、精神症状が出現している場合、その病気そのものを治療する事で、精神症状も同時に治療できます。例えば、甲状腺機能が低下してしまったため、抑うつ症状が生じている場合では、抗うつ薬など、うつ病に対する通常の治療薬は、抑うつ症状を軽減させる上で有効ですが、その抑うつ症状の根本的原因である、甲状腺機能低下に対する、内分泌科での治療が、その抑うつ症状を最終的に解決するカギなのです。それで、もしも、抑うつ症状や強い不安感など、心の問題で初めて精神科(神経科)を受診される際には、これらの精神症状が何か身体的問題によって生じた可能性を精査する必要があり、詳細な問診に加えて、血液検査や、MRI、CTなどの画像検査などが状況に応じて必要になります。例えば、血液検査では、甲状腺ホルモンのレベル低下の有無を確認できますし、また、MRI、CTなどの画像検査では、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などの有無を確認できます。
初めて精神科を受診される際には、受診目的である精神症状の原因が、身体の病気である可能性もあります。その際には、精神科だけでなく、その病気が担当の診療科と協力して治療する事になります。従って、初診の際には、なるべく、多くの診療科が揃った大学病院や総合病院などの精神科受診をおすすめします。
最後に、少々、言わずもがな的ですが、やはり、大事な事は、転ばぬ先の杖! 普段から身体の病気を遠ざけるような健康的ライフスタイルは、心の病気を遠ざけるためにも大切だという事は、どうか、お忘れなく!