最近は自動車を持たない世帯が増えてきたとはいえ、一戸建て住宅にとって車庫など自動車の置き場所は大きな要素の一つです。車庫やカーポート、カースペースがない一戸建て住宅は、中古物件として売られるときの流通性に影響することもあるでしょう。
しかし、車庫やカーポートなどがある物件でもそれぞれの敷地の条件などによって、その形状や形態はさまざまで、単にあればよいというものではありません。
自動車の格納スペースが独立した建物、または建物の一部に組み込まれているときには「車庫」(ガレージ)といい、柱や梁を備えた屋根付きの駐車スペースは一般的に「カーポート」と呼ばれています。
それに対して、柱や屋根のないものが「カースペース」で、ゆったりとした敷地の低層住宅地に多くみられます。
比較的大きな開発分譲地などでは、ほとんどの敷地を「カースペース」にしている例もあり、自動車を持たない世帯であれば庭として利用することができる場合もあるでしょう。
なお、このようなカースペースも含めて「カーポート」と総称しているケースもあり、明確に区別されているわけではありません。
すこし変わったところでは、敷地内に機械式の駐車場を設置する例や、道路より低い敷地で住宅の2階部分に接続する駐車スペースを設けている例もみられます。
敷地の狭い都市部の住宅では、建物の1階部分を開放式の車庫にしたり、道路より地盤面の高い敷地で擁壁の代わりに鉄筋コンクリート造の車庫を設けたりする場合も多いでしょう。
一方で、旗ざお状の敷地の場合にはその敷地延長(路地状)部分をカースペースにしている例も多くみられます。このとき敷地延長部分の幅が3メートルほどあれば、ゆったりと駐車することができるほか、その長さによっては2台、3台と停めることもできます。
しかし、敷地延長部分の幅が建築基準法による最低限度の2メートルちょうどしかない場合などでは、「カースペース有」といいながらも実際には駐車をするのが難しかったり、駐車をした後に横を通り抜けるのが窮屈になったりすることもあります。
運転テクニックで何とかカバーしても、気がつくと自動車が擦り傷だらけといったことにもなりかねません。
このような旗ざお状敷地の住宅を検討するときには、実際に自分が乗っている自動車を出し入れしてみて、使い勝手に無理がないかしっかりと確認することが大切です。
また、道路に平行して縦列駐車の要領で出し入れする形状の車庫やカースペースなどの場合もあります。このとき、その長さが十分にあれば何度も切り返しをする必要はなく、使い勝手もたいへんよいでしょう。
しかし、駐車スペースの長辺が短いときには、自動車の出し入れのたびに何度も切り返しをしなければならないケースや、なかにはいったいどうやって駐車したのかと、逆に感心させられるほどのものもあります。
住宅の広告などに「カースペース有」と書いてあっても、単純に安心することはできませんし、利用可能な車種がかなり限定されることもあるでしょう。
また、坂道の途中に設けられた車庫などの場合にも注意が必要です。車庫内の平面部分と道路面の間のスロープが無理なく造られている場合は、慣れてしまえばさほど困ることもないでしょうが、傾斜角度と車種の組み合わせによっては車体の底面を擦りやすいことも考えられます。
車庫やカースペースなどの使い勝手は、前面道路の幅にも大きく影響されます。車庫などの間口が狭くても、道路幅が広ければ自動車の出し入れは比較的容易ですが、いずれも狭い場合には何度も切り返しをしなければなりません。
また、都市部では敷地の有効利用のため、半地下の車庫を設けている場合も多いのですが、このような物件のときは周辺の地形や下水道の処理能力についても十分な注意が必要です。
台風などによる大雨はもちろんのこと、近年は局地的な集中豪雨(ゲリラ豪雨)により、地下や半地下の車庫が浸水、水没する被害が増えています。
まわりよりも低い地形では水が集まりやすいほか、下水道の整備時期が早かった都心部ほど大雨のときの処理能力が低いことも多く、道路冠水や住宅への浸水といった「都市型水害」も起こりやすくなっているでしょう。
たいていは排水ポンプなどが設置されているでしょうが、少しの浸水なら排水ポンプで何とか対応できるとしても、急激な増水で車庫が水没すればとても追いつきません。
その排水ポンプが正常に作動するかどうか、実際に浸水させてテストすることも困難でしょう。止水板の設置や土嚢(どのう)の保管を勧めている自治体もあります。
ところで、最近は街でときどきみかけるようになってきた電気自動車。まだ車種が少なく、本格的な普及はまだしばらく先でしょうが、電気自動車が増えてきたら一戸建て住宅の1階の間取りの一部として「カールーム(自動車部屋)」を備えた物件が出てくるかもしれませんね。
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