住宅ローン控除はリフォームでも受けられる
住宅ローン控除とは、おおまかにいえば、「返済期間10年以上の住宅ローンを組んでマイホームの新築・取得などをすると、そのローン残高に応じて所得税が優遇される」制度です。この住宅ローン控除、マイホームを新規で購入した際に対象となる、というイメージが強いでしょう。実は増改築をした、省エネ改修工事をした、バリアフリー改修工事をしたなど、リフォームをした場合でも住宅ローンの対象になりえます。<目次>
増改築した場合の住宅ローン控除
平成33年(2021年)12月までに、自分が住むために所有している家屋について、100万円を超える増改築等を行ったとします。さらに、下記のいずれかに該当していれば、年末ローン残高の1%を住宅ローン控除として受けることができます。●増築、改築、建築基準法に規定する大規模な修繕また大規模の模様替えの工事
●マンションなどの区分所有建物のうち、その人が区分所有する部分の床、階段又は壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事
●家屋のうち居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関又は廊下の一室の床又は壁の全部について行う修繕・模様替えの工事
●建築基準法施行令の構造強度等に関する規定又は地震に対する安全性に係る基準に適合させるための一定の修繕・模様替えの工事
なお、下記の点は通常の住宅ローン控除と同様です。確定申告に必要な書類や控除期間、控除限度額の計算方法も、通常の住宅ローン控除と変わりはありません。
●居住要件:6カ月以内に居住開始および適用を受ける年の年末まで居住継続している
●床面積要件:増改築等をした後の住宅の床面積が50平方メートル以上ある
●返済期間が10年以上のローンを組んでいる
参考:国税庁「増改築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」
省エネ改修工事をした場合の住宅ローン控除
省エネ改修工事をした場合の住宅ローン控除については、現行、平成33年(2021年)12月までの間に居住開始していれば適用を受けることができます。この「省エネ改修工事」とみなされる主な条件は次のとおりです。
●工事の額が50万円を超えるもの
●居室のすべての窓の改修工事、またはその工事と併せて行う床の断熱工事、天井の断熱工事若しくは壁の断熱工事で改修部位の省エネ性能がいずれも平成25年基準以上となること
●改修後の住宅全体の省エネ性能または断熱等性能が改修前から一段階相当以上上がること
居住要件や床面積要件は増改築をした場合の住宅ローン控除と同じです。ただし、ローンの返済期間が10年以上ではなく5年以上と緩和されています。
一方、省エネ住宅ローンの控除期間は5年、控除限度額も最高12万5000円と、通常の住宅ローン控除と比較すると条件が悪くなっています。
参考:国税庁「借入金を利用して省エネ改修工事をした場合」
バリアフリー改修工事をした場合の住宅ローン控除
バリアフリー改修工事をした場合も、平成33年12月までの間に居住開始していて、工事の額が50万円超かつ下記の内容であれば、住宅ローン控除が適用されます。●「バリアフリー改修工事」の内容
・介助用の車いすで容易に移動するために通路または出入口の幅を拡張する工事
・既存の階段の撤去を伴う階段の設置、またはその勾配を緩和する工事
・浴室を改良する工事で一定のもの
・便所を改良する工事で一定のもの
・便所、浴室、脱衣室その他の居室及び玄関並びにこれらを結ぶ経路に手すりを取り付ける工事
バリアフリー改修工事を行うのは、必ずもバリアフリー工事を必要としている本人でなくても、下記のような人も認められています。「身の周りの世話をする人」に含まれるといっていいでしょう。
●「バリアフリー改修工事を行う者」の定義
・50歳以上の者
・介護保険法に規定する要介護または要支援の認定を受けている者(と同居している者を含みます)
・所得税法上の障害者である者(と同居している者を含みます)
・65歳以上の親族と同居している者
居住要件や床面積要件、ローンの返済期間要件、および控除期間5年、控除限度額が最高12万5000円であることは、省エネ改修工事をした場合の住宅ローン控除と同じです。したがって、住宅ローン控除額の計算方法も、省エネ改修工事の場合と変わりありません。 参考:国税庁「借入金を利用してバリアフリー改修工事をした場合」
●控除額の試算
例えば、返済期間5年以上のローンを組み、600万円の増改築工事を行い、そのうち省エネ改修工事(またはバリアフリー改修工事)に該当するものは250万円、通常の増改築に該当するものは350万円だったとします。この場合、
・250万円×2%=5万円
・350万円×1%=3万5000円
の合計8万5000円の税額控除が受けられます。
ただし、省エネ改修工事もバリアフリー改修工事も、通常の増改築の住宅ローン控除と併用はできません。いずれか一方の選択適用となります。
通常の増改築の住宅ローン控除は、節税メリットを受けられる期間が10年と長いものの控除率は1%です。一方、省エネ改修工事やバリアフリー改修工事は、節税メリットを享受できる期間は5年と短いものの、控除率は一部優遇されています。その部分をケースバイケースで見極めるのがポイントになるでしょう。
また、確定申告の必要書類は、通常の住宅ローン控除の同じものに加えて、特定の省エネ改修工事もしくはバリアフリー改修工事であることを示す証明書が必要です。このような工事の依頼を検討しているなら、証明書の発行について別途、国土交通省や施工業者に事前確認をとっておくのもよいでしょう。
多世帯同居改修工事に係るローン控除の特例が新設
住宅ローンを組んで多世帯同居など多世帯が住むための改修工事をした場合、平成28年4月1日から平成33年12月まで控除が受けられる制度が上記に加わりました。所定のローンを組んで増改築を行った場合の税額が優遇されるメニューにバリエーションがひとつ加わったとおさえておくといいでしょう。
●「多世帯同居のための改修工事」の定義
「調理室」「浴室」「トイレ」「玄関」のいずれかを増設する工事で、改修後いずれか2つ以上が複数になるもの
●居住開始年月
平成28年4月から平成33年12月までの間
●ローン残高
1000万円を限度として、多世帯同居対応分250万円、それ以外の分750万円
●控除限度額、最大控除額
下記、図表のとおりです。
確定申告の際の必要書類ですが、通常の住宅ローン控除と同じものに加えて、多世帯同居改修工事であることを示すものが必要ですが、このあたりは省エネ改修工事もしくはバリアフリー改修工事の方法を踏襲しているといえます。リフォームにかかわる住宅ローン控除に新たなバリエ―ションが加わることになります。
なお、ここでは紹介しませんでしたが「一定の改修工事を行った」というだけで、つまり、住宅ローンを組むことを前提とせず、税額控除を受けられる制度(たとえば耐久性向上改修工事をした場合の住宅特定改修特別税額控除)もあります。
この制度は一度限りの適用ですが、限度額の最高は500万円(太陽光発電設備設置工事が含まれる場合は600万円)の10%なので、節税額は50万円(あるいは60万円)と大きくなります。住宅ローンが無くても、受けられる税額控除もあるのでおさえておくといいでしょう。
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