同性愛者のための自殺対策ホットライン
この3月は、震災1周年というだけでなく、「自殺対策強化月間」でもあります。(名称でもめましたが)AKB48が出演するCMが流れたり、が流れたり、JRの車内TVでサンドウィッチマンの二人がアナウンスしたり、特設サイトが設けられたりしているのをご覧になった方もいらっしゃることでしょう。日本では毎年(14年連続で)3万人を超える方たちが自殺に追い込まれています。10万人あたりの自殺者数は24.4人で世界8位、先進国では1位です(2011年のデータ。詳しくはこちら)。正確な統計はありませんが、この中には多くのセクシュアルマイノリティの方たちも含まれているはずです。
京都大学大学院医学研究科(当時)の日高庸晴氏らが国の補助を受けてインターネット上で行ったアンケート調査(1999年以降、数回)によると、実にゲイの3人に2人がこれまでに自殺を考えたことがあり、14%は実際に自殺未遂を経験したことがわかりました(詳しくはこちら)。読者の方のなかにも、ゲイの友人・知人が自殺で亡くなるという悲しい経験をしたことがある方はきっと少なくないと思います。
ゴトウは以前から、友だちを自殺で亡くしたこと、うつになるゲイの人がとても多いこと、そして自分自身もうつを経験したこともあり、ゲイコミュニティにとって、HIVのことと並んでこの問題に取り組むことが大事なのではないかと思い、原稿を書いたり、mixiにコミュを立ち上げたり(あまり思うように活動できていませんが…)、できる範囲でいろいろやってきました。
震災後、ある精神科医の方が「日本全体がうつ状態に陥っている」と指摘しましたが、その後も先行き不透明な状況や経済的な低迷が続くなか、(そうしたことのしわ寄せはまず社会的弱者を直撃しますから)以前にも増してセクシュアルマイノリティのメンタルヘルスの悪化が深刻になっているのでは…と心配になります。
そんな中、これは素晴らしい!と思えるニュースが届きました。
3月11日、ゲイ&レズビアンも対象とした「よりそいホットライン」 という24時間電話相談がスタートするのです(運営:一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)。電話の自動応答システムの「4:性別や同性愛に関わる相談」を選べば、セクシュアリティについて専門的な対応ができるスタッフの方が相談に乗ってくれます。24時間無料で、全国どこからでもOKです。携帯や公衆電話からもつながります。(3/31までの期間限定です)
もちろん、この電話相談さえあればすべてOK!なわけではありません。重いうつを患った方が「運命の波」に襲われたとき、果たして電話などできるのか? 電話くらいで「死にたい」という思いが払拭されるのか? などと思う方もいらっしゃることでしょう。
しかし、たとえ地方の方、周りに誰も相談できる人がいないような方であっても、24時間無料でこの「よりそいホットライン」を利用できる、そのことの意義は決して小さくないと思います。
また、この「よりそいホットライン」が(自殺対策強化月間だから、ということもあるでしょう)「厚生労働省の社会・援護局の補助金を受けたモデル事業」であることに注目したいと思います。国が(たぶん初めて)同性愛者向けの本格的な自殺対策を支援しているのです。
アメリカでは「Trevor project」というセクシュアルマイノリティの若者のための24時間ホットラインが、多くの企業の協賛を得て運営されています。この「よりそいホットライン」も、期間限定ではなく、1年中開設されるようになったらどんなに素晴らしいことでしょう。
今の時代、いつ誰のもとに訪れるとも限らない、心の危機。そのとき、もし周りに頼れる人がいなかったりしたら、ここに電話をかけてみてください。
また、直接セクシュアリティに関係なくても、日頃抱えている悩みなどあれば、この機会に相談してみてはいかがでしょうか。きっと力になってくれるはずです。