非常用発電機や蓄電池で停電時も生活を持続
先の大震災では地震による揺れの激しかった地域などで、1981年以前のいわゆる「旧耐震基準」で建てられたマンションを中心に少なくない数の被害が報告されました。現行の新耐震基準による建物については、玄関回りやバルコニー側の「非構造壁」のひび割れなどは少なくなかったものの、建物を支える構造部分の深刻な被害はほとんど見られなかったようです。とはいえ、建物が激しく揺れたことで家財の被害や心理的な恐怖を感じたケースは少なくなく、また一部地域では地盤の液状化によるライフラインの断絶という「想定外」の被害に見舞われました。こうした事態を受け、デベロッパーがマンションの防災対策を強化する動きが広がっています。例えば停電対策として非常用発電機を増強するケースです。建築基準法や消防法では一定規模以上のマンションに非常用エレベーターや消火設備用の発電機を備えることを義務づけていますが、法律の規制以上の設備を導入するマンションも増えています。地震などで停電になっても、数時間~数日はエレベーターや給水設備を稼働できるようにするためです。
停電対策としては蓄電池を導入するケースも見られます。なかでも最近の特徴は太陽光発電パネルと蓄電池の組み合わせです。平常時の昼間は太陽光発電で共用部分の電力をまかない、夜間は蓄電池からの電力を照明などに利用する仕組みですが、いざ災害で停電になった場合にも蓄電池を活用しようというわけです。従来は省エネやエコの視点から一部で導入が始まっていた太陽光発電パネルと蓄電池ですが、ここへきて防災対策としての役割がクローズアップされてきました。
備蓄倉庫を増設したり飲料水を確保するケースも
災害時に備え、備蓄品を充実させるマンションも増えています。懐中電灯やラジオ、カセットコンロなどのほか、ロープや担架、マグネット式のホワイトボードといった備品が一般的です。これらの備品を備蓄する倉庫を建物内に設けるほか、各住戸に備品一式を配布するケースもあります。防災備蓄庫も従来は建物内に1カ所設ける程度が多かったのですが、最近では特に高層物件などで一定階ごとや各階に設置するマンションも見られるようになりました。自治体の条例で一定以上の備蓄庫の設置が求められている場合もあります。停電になると多くのマンションでは水の供給もストップしてしまうので、飲料水や雨水を備蓄する例もあります。敷地内に受水槽を設置している場合は、貯めてある水を緊急時の飲料水として利用可能です。近年では受水槽を設置せずに水道本管から増圧ポンプなどを使って給水する方式が普及していましたが、震災を機に受水槽方式が見直される動きもあるようです。
このほか、ライフラインが断絶した場合に備え、マンホールを利用する簡易トイレや、井戸水などを飲料用に利用するための浄水装置、焚き出し用のかまどベンチといった、いわゆる「防災3点セット」を常備するケースも増えています。