不動産売買の法律・制度/不動産登記の基礎知識

法務局に備えられた図面の基礎知識

法務局(登記所)にはいくつかの図面が備えられており、重要事項説明書の添付書類として地図(公図)、地積測量図、建物図面(各階平面図)などの写しも渡されます。これらの図面の特徴や内容についてもしっかりと理解しておきましょう。(2017年改訂版、初出:2012年4月)

執筆者:平野 雅之


法務局には登記記録(登記簿)だけでなく、登記に伴ういくつかの図面も備えられています。これらの図面は売買契約をする前に重要事項説明書の添付書類として渡されることになりますが、それぞれの特徴や内容などについてもよく理解しておきたいものです。

今回は、法務局に備えられた地図(公図)、地積測量図、建物図面(各階平面図)の3つについて、基本的なポイントをみていくことにしましょう。なお、それ以外に地役権が設定されている土地の場合には「地役権図面」もあります。


地図の種類について知っておきたいこと

不動産登記法第14条によって「登記所に地図を備え付ける」ことが定められています。

この「地図」とは国土調査法に基づいて高精度な測量・調査(地籍調査)を実施したうえで作成される地図で、土地の境界が現地で分からなくなっても、地図からそれを復元できるような「復元力」をもつものとされています。

現在は「14条地図」とも呼ばれていますが、不動産登記法が2004年に改正される以前は第17条にその規定があったため「17条地図」と呼ばれていました。なお、比較的早い時期に実施された調査による地図では、その精度が低いという問題点などが指摘される場合もあるようです。

この地図が規定されたのは1960年(昭和35年)ですが、その後の地籍調査がなかなか進んでおらず、2016年度末(2017年3月末)時点の地籍調査進捗率は全国平均で52%にとどまっています。1999年度末時点が43%でしたから、17年間で9%ほどしか進んでいません。

とくに大都市部での遅れが目立っており、東京都が23%、神奈川県が14%、千葉県が15%、大阪府が10%、京都府が8%、愛知県が13%などとなっています。

そのため、現在も多くの法務局では「地図に準ずる図面」として、明治時代初期の地租改正事業により作られた地図をルーツにする「旧土地台帳附属地図」を引き継いだものが使われている状況であり、これが一般にいわれる「公図」です。

地図に準ずる図面(公図)の例、数字は地番のみが記載されている

地図に準ずる図面(公図)の例、数字は地番のみが記載されている


公図は当初から不正確さを含んだものであり、これをもとに土地の形状や面積を判断することはできません。以前は畑や山林だったところを宅地に転用したようなケースでは、実際の土地がほぼ正方形なのに、公図上では細長い長方形になっていることもあります。

あくまでも、公図は隣接する土地などとの位置関係を知る手掛かりとして考えたほうがよい場合も多いでしょう。

また、区画整理などによって作成された図面が「地図に準ずる図面」として公開されている場合もありますが、これら一定の測量に基づく図面であれば、信頼度は比較的高いものになっていると考えられます。このような図面も含めて「公図」と呼ぶ場合もあります。

なお、地図の場合でも公図の場合でも、それぞれの土地区画に記されているのは地番であり、住居表示実施区域における住所の番号ではありません。

ちなみに、不動産登記法には地図上に建物の形状と家屋番号を記載した「建物所在図」を備え付けることも規定されていますが、これが整備されている法務局はまだ少ないようです。


地積測量図が備えられていない土地は多い

地積測量図とは、その土地の形状、地積(面積)と求積方法、境界点、区画の長さなどが記された図面です。しかし、すべての土地についてこれが備え付けられているわけではなく、地積測量図がない土地も少なくありません。

地積測量図は、土地の分筆登記や地積変更登記などをする際に、登記申請書の添付書類として提出されるものであり、過去にこのような登記がなかった土地については作成されていないことになります。

また、法律によって地積測量図の法務局への備え付け体制が整ったのは1963年~65年頃(法務局により異なる)のようですから、それ以前に分筆された土地などでは、やはり地積測量図が存在しないことになります。

なお、土地区画整理が実施された土地については地積測量図の提出がないため、その後に分筆などがされていないかぎり地積測量図はありません。

一方で、地積測量図があっても実際には測量されていない土地もあります。

以前は分筆による地積測量図の場合に、2つの土地に分けるのであれば片方の土地についてのみ測量および求積をし、残る片方の土地面積については従来の登記簿面積からの引き算によって求めること(残地法)が認められていました。

そのため、残地法の対象となった土地については、地積測量図があっても地積の信頼性は低いものになっています。なお、2005年に改正不動産登記法が施行されてからは、原則として分筆後のすべての土地について求積をすることになっています。

地積測量図の例、最近は座標による求積が一般的

地積測量図の例、最近は座標による求積が一般的


測量、求積がされた土地の地積測量図は、隣地の土地所有者との間で境界の合意があることを前提に作成され、たいへん重要な資料です。

しかし、必ずしも隣地の承諾を得て作成されているとはかぎりません。法務局に備えられた地積測量図があっても、売買の際には隣地の立会い印を含む確定実測図や現況測量図などの作成を求めたほうがよいケースもあるでしょう。


建物図面(各階平面図)は大半の建物に備えられている

建物図面とは、建物の登記簿に付随する図面として法務局に備えられているもので、一般的には1枚の用紙に「建物図面」と「各階平面図」が描かれています。

建物図面は敷地に対する建物の配置や形状を表し、各階平面図は各階ごとの形状および登記上の床面積を算出するための計算式などが記載されます。

建物の新築や増築による登記をする際には、この建物図面および各階平面図が提出されることになっているため、これが整備された1963年~67年頃(法務局により異なる)以降に登記された建物であれば、原則としてこの図面が備わっているはずです。

建物図面・各階平面図の例、右が建物図面、左が各階平面図

建物図面・各階平面図の例、右が建物図面、左が各階平面図


ただし、あくまでも登記事務を目的とした図面であり、間取りや構造設備などが分かるわけではありません。建物の形状によっては、各階平面図の部分に正方形や長方形が描かれただけの、たいへんシンプルなケースもあります。


関連記事

不動産売買お役立ち記事 INDEX

登記事項証明書(登記簿謄本)の見方
自分でもできる登記の調査とその手順
土地の公図は、ずれていることが当たり前?

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます