社会保険/社会保険の基礎知識

離職理由で大きく変わる失業給付の基礎知識(2ページ目)

激動の社会経済情勢下。従業員も、正社員だけでなくパート、アルバイト、派遣従業員など多様化の時代。退職理由もこれまた多様化しています。一般的な自己都合退職であっても、正当な理由があれば、給付日数が増える優遇措置が講じられることがあるのをご存じでしょうか。本記事では退職理由によって変動する失業給付の勘所をお伝えします。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド

特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要

倒産や解雇などの理由の離職には手厚い保護があります

倒産や解雇などの理由の離職には手厚い保護があります

では次に手厚く保護される対象者の範囲を具体的に見ていきましょう。離職を余儀なくされる場合や自己都合退職でも正当な理由がある場合など、具体例を一つ一つ確認してみてください。手厚く保護される理由がよくわかります。

特定受給資格者の範囲

1.「倒産」等により離職した者

(1)倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者

(2)事業所において大量雇用変動の場合(1か月に30人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職した者

(3)事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む)に伴い離職した者

(4)事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者

2.「解雇」等により離職した者

(1)解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)により離職した者

(2)労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者

(3)賃金(退職手当を除く)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2か月以上となったこと等により離職した者

(4)賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(又は低下することとなった) ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る)

(5)離職の直前3か間に連続して労働基準法に基づき定める基準に規定する時間 (各月45時間)を超える時間外労働が行われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者

(6)事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した者

(7)期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者

(8)期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記(7)に該当する場合を除く)

(9)上司、 同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者及び事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の措置を講じなかったことにより離職した者

(10)事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者 (従来から恒常的に設けられている 「早期退職優遇制度」 等に応募して離職した場合は、これに該当しない)

(11)事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者

(12)事業所の業務が法令に違反したため離職した者

特定理由離職者の範囲

次に特定理由離職者です。自己都合退職でも、下記2.のようなケースは要チェックです。

契約更新の合意がとれない場合には、給付日数が増加することがあります

契約更新の合意がとれない場合には、給付日数が増加することがあります

1. 期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者
(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。上記「特定受給資格者の範囲」の2.の(7)又は(8)に該当する場合を除く)

労働契約において、契約更新条項が「契約の更新をする場合がある」とされている場合など、契約の更新について明示はあるが契約更新の確認まではない場合がこの基準に該当します。

2.以下の正当な理由のある自己都合により離職した者
 
通常自己都合での離職は、給付されるまで3ヶ月の給付制限期間がありますが「正当な理由」があると認定されれば、給付制限はかからず受給が可能です。

(1) 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者

(2) 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者

(3) 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の介護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者

(4) 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者

(5) 次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者
  • 結婚に伴う住所の変更
  • 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
  • 事業所の通勤困難な地への移転
  • 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
  • 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
  • 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
  • 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
(6) その他、上記「特定受給資格者の範囲」の2.の(10)に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者

 まとめ

雇用保険は退職後の収入源ですから、実務担当者には正確な知識が求められます。多様な労働条件の従業員が混在する状況下ですから、離職理由もこれまた様々。上記の離職理由で給付内容が大きく変動しますから、迷ったら管轄のハローワークに事前照会をして手続きをすすめることが肝要です。

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