高所は恐怖症で、よく見られる対象の一つ。高所が苦手な人は、もしも恐怖症のレベルになっていたら、治療が望ましいですよ!
では、なぜ、それが苦手になったのかと問えば、その御方が苦手な理由は、たちまち頭に浮かんで来ても、雷が苦手になった理由は、意外にはっきりしないかも。場合によっては、意外な心の葛藤を反映している事があります。
もっとも、雷の音に驚いて、思わずテーブルの下に潜り込んだ位では、心の病気の心配は要りませんが、もしも、曇り空を見ただけで、これから雷が落ちそうな気がして、外出を控えるようになっていたら、要注意。恐怖症の可能性があります。
今回は恐怖症の特徴、症状、原因、治療法を詳しく解説します。
恐怖症の特徴・症状
恐怖症は、うつ病、アルコール依存症などと共に、心の病気のなかでは頻度が高いものです。一生の内の、発症率は約10%前後、女性に多くなっています。恐怖の対象は多様です。自然現象または、その類である雷、水、火、動物などや、何らかの状況、例えば、エレベーターなどの狭い空間や広場、高所といった状況、さらには、注射や血を見る事も、恐怖の対象になります。恐怖症の発症ピークは、自然現象または、その類に対する恐怖は10歳未満の小児期にあり、エレベーターなどの狭い空間や広場に対する恐怖は20代にあります。
恐怖症では、その病名通り、恐怖の対象に接すると、強い不安、恐怖が生じます。場合によっては、パニック発作が起きてしまう事もあります。一旦、強い恐怖を覚えてしまうと、その対象を本人は出来るだけ避けるようになり、また、恐怖の対象と遭遇する事態を予期しただけで、不安が生じやすくなります。もしも症状が深刻化すれば、その対象と遭遇するのを恐れる余り、自分ひとりで外出できない……など、日常生活上、深刻な不都合が生じてきます。
恐怖症の原因
恐怖症では、その対象に恐怖を抱くようになったルーツとして、幼少期、例えば、蜂に刺された体験、交通事故など、何らかの恐怖体験がある場合もありますが、そうでない場合もあり、そうした場合、何らかの心の葛藤が反映されている可能性があります。精神医学の大家ジークムント・フロイト(1856~1939)の説によると、恐怖症の原因は、幼児特有の、母親への憧れであるエディプス・コンプレックスが解決されていない事。その有名な症例は、馬を非常に恐れていた、5歳の男児ハンスです。フロイトが精神分析した結果、ハンスは母親への憧れを父親に罰せられる事を非常に恐れていました。ハンスは父親を恐れる事が出来ないので、無意識の内に、父親の代わりに、恐れる対象として、馬を選んだのでした。
また、恐怖症の原因として、体質的要因が関与している場合もあります。例えば、注射恐怖では、血管迷走神経反射というものが関わっています。血管迷走神経反射とは迷走神経を介して、反射的に血管壁のトーンが緩んでしまう現象。急に頭から血が引いていく感じがするものですが、この血管迷走神経反射の強さは基本的には遺伝子レベルで決まるもの。血管迷走神経反射が強い体質の人は、睡眠不足や強い不安感があるなど、その時の状態によっては、注射中やその直後、血管迷走神経反射が生じやすくなり、その時の不快感が、注射恐怖へのルーツとなる事があります。
恐怖症の治療法
実は怖いものには、単に近づかなければ良いわけで、もしも恐怖の対象を完全に避けても、日常生活上、何の問題も生じなければ、治療の必要は無いと思います。例えば、蛇を見ると、頭が真っ白になるほど、強い恐怖を覚える人。街中で暮らしていれば、蛇には、そうそうお目にかかる機会は無いはず。治療は特に必要ないでしょうが、もしもテレビに蛇が出ただけで、不安症状が出るようなら、やはり、精神科受診が望ましくなります。ただ、恐怖を覚える対象によっては、避ける事が難しくなります。例えば、飛行機に強い恐怖を覚える人。仕事上、どうしても飛行機を利用しなくてはならない状況では治療が必要になります。
恐怖の対象を避ける事が出来ない以上、実は、それに慣れるしか無く、それが治療のゴールになります。通常、心理療法で、そのゴールに向かっていきますが、個人個人の病状によっては薬物療法も必要になります。例えば、気持ちの落ち込みが強い場合は抗うつ薬、不安症状が強い場合は抗不安薬といったように、治療薬は個々の状況に応じて選択されます。
恐怖症は、実は、なかなか精神科を受診しにくい病気ですが、うつ病、アルコール依存症など合併症を伴いやすく、出来るだけ早期に治療を開始するのが望ましいです。もしも、何かへの苦手が高じて、恐怖を抱くようになり、日常生活に何らかの不都合が生じている人は、まず、そうですが、もしも、身近な人で、何かをどうしても避ける為、仕事などに支障を来たしているのに気付かれたら、是非、精神科(神経科)受診を、おすすめ下さい。