チョコレート/チョコレートのおすすめ店

イルサンジェー(銀座)(2ページ目)

2012年1月4日、フランス・ジュラ地方アルボワの老舗パティスリー「イルサンジェー」が、海外初出店となる路面店のショコラ専門店を銀座にオープンしました。四代目当主でありフランス国家最優秀職人「M.O.F.」のエドワール・イルサンジェー氏へのインタビューと合わせて、お店の見所、お薦めのチョコレートなどをご紹介します。【2014年8月閉店】

平岩 理緒

執筆者:平岩 理緒

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「イルサンジェー」のボンボンショコラ。手前右から「プラリネ・サレ」「パッションフルーツのガナッシュ」「胡麻のガナッシュ」「グリーンペッパー」、奥:「カレ・オール」

「イルサンジェー」のボンボンショコラ。手前右から「プラリネ・サレ」「パッションフルーツのガナッシュ」「胡麻のガナッシュ」「グリーンペッパー」、奥:「カレ・オール」

フランス国内でもM.O.F.職人として有名なエドワール・イルサンジェー氏のもとには、当然、パリをはじめとする世界各地からの出店依頼があったそうです。しかし、「日本にはよいショコラティエがたくさん集まっています。そして日本人はセンスがよく、本当に価値のある物、美しい物を理解してくれる。今回、銀座という町に店を出すことができたのはとてもラッキーでした。」と笑顔で語るイルサンジェー氏。

ショコラについて1粒ずつ丁寧に説明してくださる中で、興味深いお話も伺えました。
「イルサンジェー」の「プラリネ・サレ」

「イルサンジェー」の「プラリネ・サレ」

プラリネ・サレ(1個 600円)

ヘーゼルナッツをキャラメリゼした香ばしい自家製プラリネに、ほんのり塩を加えた一粒。

最近、塩を使ったチョコレートを作るお店は増えましたが、実は「イルサンジェー」では、比較的新しく登場したそう。これは「Arc et Senans(アル・ケ・スナン)」という、本店から近い場所にある村で作られた岩塩を使ったもの。この地には、18世紀にルイ16世が設置した王立製塩所が設けられ、現在、世界遺産となっています。

表面にうっすらと見えるのは塩の結晶ですが、一般によくあるように、塩粒をのせているのではありません。一度、水に塩を溶かして「ソミュール液」と呼ばれるエキスを作り、その水滴をショコラの上に落とした後、乾燥させるという手の込んだ方法をとっているのです。そのおかげで、塩の塊が直接舌に当たることなく、あくまでやわらかに、隠し味としてじんわりと届き、サクサクとしたプラリネの旨味をより引き立てています。

ジュラの自然の恵みを大切に、地元の食材を活かしたショコラを数多く作り出しているイルサンジェー氏ならではの塩使いです。

パッションフルーツのガナッシュ(1個 800円)

卵黄やバターを加えることで、パッションピューレの酸味や香りがしっかりと感じられつつも、酸っぱすぎず、なめらかな口どけ、味わいとなっています。

胡麻のガナッシュ(1個 800円)

上にのせられた板状の胡麻ヌガティーヌがパリパリで香ばしく、中にはなめらかなガナッシュという食感の対比も楽しい。

現在は、胡麻で作ったプラリネ入りボンボンショコラの新作も考案中というイルサンジェー氏。試作は、お一人でラボに籠って黙々となさるんですか?とお伺いしたところ、「僕はそういうタイプじゃないんだ。試作品をまず最初に食べてもらうのはスタッフ、そして販売員、家族。みんなに意見を言ってもらいながら、和気藹々と作るんだよ。元々、家族経営でやってきたお店だからね。」とにっこり。
「イルサンジェー」本店の地下は、創業以来の古い道具や資料を保管した「イルサンジェー・チョコレートミュージアム」になっている

「イルサンジェー」本店の地下は、創業以来の古い道具や資料を保管した「イルサンジェー・チョコレートミュージアム」になっている

店内に飾られた写真の中に、2003年に本店の地下を改装してオープンした、古い道具などを保存展示している「イルサンジェー・チョコレートミュージアム」で撮影した一枚があります。ご家族やスタッフが集まり、イルサンジェー氏が、まだ小さな息子さんを抱っこしているのが微笑ましく、皆さんで大切に守ってこられたお店なのだなと感じられます。

グリーンペッパー(1個 800円)

ミルクチョコレートベースのなめらかなガナッシュで、全体にはやさしい甘さが印象的ですが、ほのかに、清々しい胡椒の香りが鼻に抜ける一粒。

カレ・オール(1個 800円)

フランスのショコラティエの定番、丸形のシンプルなガナッシュに金箔を飾った「パレ・ド・オール」。これは、それを四角形=「カレ」にアレンジした一粒。
食べると、フルーツを使っているのかしら?と思うほど、さわやかな酸味が感じられますが、これは、BIO(ビオ)=有機栽培のオリジナルカカオ「クリオロ」種由来の風味。カカオ自体の持つ個性を存分に堪能できる一粒です。

実は「イルサンジェー」のボンボンショコラの4割ほどは、上掛け用などにペルー産のカカオ分70%のBIOチョコレートを使っているそう。しかし、BIOのチョコレートは味が安定しないといったケースもあり、プロのショコラティエでも扱いが難しいと言われます。その点を伺ったところ、こんな答えが返ってきました。
「確かに、BIOのチョコレートで美味しい物に出会うのは難しい。でも、ペルーの子供達が厳しい労働環境の中で働いているのを知り、経済的に彼らの生活を支え、子供達を救いたいという思いで、それを使っています」

さらに、「エコロジー」も気遣い、本店にはソーラーパネルを設置したり、雨水を溜めてトイレ用水として再利用したりと、地球環境にも配慮しているのだそうです。

自分達のことだけではなく、世界中の幸福を考えて具体的に実践しているイルサンジェー家の姿勢と実行力に、それこそ、名門と言われる所以ではないかと、深い感銘を受けました。
「イルサンジェー」のショーケースには、ヌガーやパート・ド・フリュイ、「ブション」と呼ばれるコンフィズリーなども並ぶ

「イルサンジェー」のショーケースには、ヌガーやパート・ド・フリュイ、「ブション」と呼ばれるコンフィズリーなども並ぶ

銀座の一等地で、店頭に価格も表示されていないと聞けば、大変な高級店、というイメージを持ちますが、イルサンジェー氏ご自身は、とても気さくで心のやさしい方でした。

この銀座のお店も、アルボワの本店同様、先祖伝来の歴史と、若き当主の熱い思いとが込められたショコラの価値を理解するお客様に、着実に支持されていくことでしょう。
店内には本店で使われてきた古いショコラの金型、木型なども装飾されている

店内には本店で使われてきた古いショコラの金型、木型なども装飾されている


フランスやベルギーの伝統菓子「スペキュロス」を使った珍しいボンボンショコラ。スパイス風味の焼き菓子の上に薄いドーム状キャラメルをのせ、チョコがけしたもの

フランスやベルギーの伝統菓子「スペキュロス」を使った珍しいボンボンショコラ(1個 800円)。スパイス風味の焼き菓子の上に薄いドーム状キャラメルをのせ、チョコがけしたもの


今後、夏場に向けては、アイスも提供したいというイルサンジェー氏。
その際には、ショップを代表するボンボンショコラを、アイスとして表現する予定とのこと。たとえば、冬場限定の人気ショコラで、バナナとトンカ豆、ラム酒を使ったフレーバーがあるそうですが、その味をコピーしてアイスに仕立てる、といったものだそうです。
今から待ち遠しいですね!

【2014年8月閉店】
<ショップデータ>
HIRSINGER イルサンジェー
東京都中央区銀座5-5-8 西五番街坂口ビル1F
営業時間 11時~20時
定休日 無休

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