逆子・骨盤位とは
赤ちゃんは子宮の中でくるくると遊んでいるため、逆子(骨盤位)はよくみられる
妊婦健診では逆子の状態はわりと多く見られますが、赤ちゃんは一定の時期まで子宮の中でくるくると動くもの。逆子の状態だった赤ちゃんも、大部分はお産が近づくと頭位に落ち着きます。
▽参考記事
逆子とは?骨盤位が治る確率・逆子体操の効果・帝王切開が必要な理由
逆子だと自然分娩は無理?
逆子だと必ず帝王切開での出産になる?
通常の「頭位」では、赤ちゃんの部位で一番大きな頭さえ娩出すれば体もそれに続いて比較的スムーズに産道を通過することができます。ところが、逆子の場合はお尻が出ても、お尻より大きな頭がなかなか娩出できない場合があり、赤ちゃんが仮死状態に陥る危険性があるため、帝王切開が必要となります。
足が先進している場合は、産道が十分に広がらず、臍帯脱出といって、足と産道の隙間から、臍帯が出てきてしまう緊急事態になる危険性も持ち合わせています。そのため、赤ちゃんの足が先進している場合は、以前よりほとんどが帝王切開での分娩となっています。
かつては、逆子でも帝王切開をせず、条件がよければ経膣分娩も可能でしたが、今は安全性が最優先。ほとんどが帝王切開での分娩になっています。
▽参考記事
逆子とは?骨盤位が治る確率・逆子体操の効果・帝王切開が必要な理由
逆子の帝王切開はいつ決まる?
妊娠28週から分娩に至るまでの逆子の頻度と、そのうち、分娩までに赤ちゃんが自然に頭位に回転する自然回転率の推移を調べた調査が、日本人を含むアジア人女性2,112人を対象に行われました(「妊娠28週以降の骨盤位の頻度と自然回転率」平成29年7月)。 妊娠28週では、逆子の確率は全体の24.2%。そのうち分娩時には逆子の状態から頭位に自然回転していた割合は82.2%です。妊娠週数が進むにつれ、逆子の割合と分娩時までの頭位への自然回転率は下降していくものの、それでもまだ妊娠33週目では、約4割くらいは分娩時までに自然に頭位に戻ります。ところが、妊娠36週目では逆子の割合は5.6%となっており、逆子から頭位への自然回転率は10.2%と約1割です。この時期で逆子の場合は頭位に戻るチャンスは低いので 、多くの産院では妊娠34~35週目で逆子の場合は帝王切開の予定を組みます。
実施日は他の予定帝王切開と同じで予定日の約2週間にあたる妊娠38週で、その病院の手術(曜)日になるでしょう。ただし、予定を組んだ後に頭位に戻った場合は帝王切開はキャンセルとなります。
▽参考文献
「妊娠28週以降の骨盤位の頻度と自然回転率」(平成29年7月)
埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科 東原亜希子, 聖路加国際大学大学院 堀内成子, 聖路加国際病院 女性総合診療部 山中美智子
▽参考記事
逆子とは?骨盤位が治る確率・逆子体操の効果・帝王切開が必要な理由
逆子が治る週数別確率
妊娠32週でも、まだ約6割は頭位に戻るチャンスがある
妊娠34週では、分娩時までに逆子が治るチャンスは低くなり、約3~4割くらい。妊娠36週目では、逆子から頭位への自然回転率は10.2%と約1割です。この時期で逆子の場合は頭位に戻るチャンスはかなり低いものとなっています。
▽参考文献
「妊娠28週以降の骨盤位の頻度と自然回転率」(平成29年7月)
埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科 東原亜希子, 聖路加国際大学大学院 堀内成子, 聖路加国際病院 女性総合診療部 山中美智子
▽参考記事
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帝王切開以外に逆子を治す方法は?
「逆子体操」で逆子は治る?
鍼灸なども逆子を治すのに有効とよく言われています。足にある「三陰交」「至陰」などのツボにお灸をすると赤ちゃんがよく動くようになるようですが、逆子を治る効果は科学的に証明されているわけではありません。
医師によっては、お腹の上から胎児を回す「外回転術」という技で逆子を治そうとする場合があります。お腹の上から医師が軽く力を加え、赤ちゃんが頭位に戻るように回転させる手技です。妊娠34週以降に行う場合が多いですが、成功率は3~5割くらい。頻度は少ないですが、胎盤剥離を起こし緊急帝王切開になる危険もあり、保険適応がなく自費のため、費用はその施設により違ってきます。また、外回転自体を施行している医師、施設は現在、ほとんどないのが現状です。
▽参考記事
逆子とは?骨盤位が治る確率・逆子体操の効果・帝王切開が必要な理由
帝王切開の流れ
帝王切開の手術直後から母子同室が可能な施設も増えてきています
手術日が決まると、妊娠36週前後に血液検査などの手術前検査が試行され、入院は手術日前日、または当日朝の施設もあります。入院後、赤ちゃんの状態を検査し、血圧、脈拍、体温などをチェックします。
麻酔は背中からの脊髄くも膜下麻酔(脊椎麻酔、腰椎麻酔)が主流。麻酔が十分に効いていることを確認後、手術が始まります。おなかの切開はお臍の下の縦切開か、恥骨上の横切開で、15cm前後の切開。手術が始まってから赤ちゃんが生まれるまでの時間は約5分、手術時間は30~60分くらいです。脊椎麻酔では、意識があるので、赤ちゃんの産声がわかり出産後すぐに対面できます。
最近は手術直後から直接母乳をあげられたり、母子同室が可能な施設が増えてきています。経過が良ければ、2時間後から飲水、手術翌日から食事を始める施設も増え、手術翌日には尿管カテーテルを抜去し、体調にあわせて動いたり、シャワーを浴びることも可能です。経過が良ければ、点滴は長くても手術後2~3日。帝王切開での入院期間は1週間前後が目安です。
▽参考記事
帝王切開の流れを解説!入院準備・手術による出産・術後まで
帝王切開の費用、保険は適用?
帝王切開の費用は医療機関により異なりますが、約40万~100万円です。自然分娩の場合、入院期間は出産後4~5日間ですが、帝王切開では5~10日ほど必要です。そのため医療機関で計算される出産費用は自然分娩に比べて高額になりますが、自己負担分については、
- 出産育児一時金(42万円)
- 健康保険の高額療養費制度による払い戻し(収入による)
- 入っていれば民間の医療保険
▽参考
出産育児一時金の支給額・支払方法について(厚生労働省)
高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚生労働省)
帝王切開後、次の妊娠・分娩は?VBACとは?
帝王切開後、次の妊娠までは半年から1年くらい開けるとよいでしょう。かつては2年開けることが推奨されていましたが、2年以上開けることの安全性に医学的根拠がないこと、35歳以上など比較的高齢では第二子不妊のリスクも出てくるので、母体年齢、家族の状況などにもよりますが、お子さんをもう一人と考えている場合、あまり間をあけない方がいいかもしれません。また、妊娠した場合の次の分娩ですが、児頭骨盤不均衡や狭骨盤が理由の帝王切開ではないので、骨盤位でなければ経腟分娩(VBAC)は可能です。ただし、最近は安全性が重視され、前回が帝王切開の場合は、その理由によらず次回の分娩も帝王切開としている産院がほとんどでしょう。
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