チョコレート/バレンタインのおすすめチョコレート

2012バレンタイン 注目の日本人ショコラティエ:前篇(2ページ目)

バレンタイン時期には、大勢の各国ショコラティエが来日します。そんな中、ここ数年、日本人のショコラティエが世界を舞台に活躍し、特に注目を集めています。2012年のバレンタインに合わせて、今、注目したい日本人ショコラティエを2回に分けてご紹介します。第一弾は、1月25日~30日伊勢丹新宿店で開催の「サロン・デュ・ショコラ」に出店しているこの方々です。

平岩 理緒

執筆者:平岩 理緒

スイーツガイド

「パティシエ エス コヤマ」

小山進シェフ

「パティシエ エス コヤマ」の小山進シェフ

昨年秋、フランスのパリで注目を集め、日本でも大いに話題となったショコラ。それが、「パティシエ エス コヤマ」が発表したボンボンショコラのBOXです。

兵庫県・三田市のショップは2003年オープン。平日でも大勢のお客様が遠方から車で訪れることで知られる人気店です。「パティスリー」というイメージが強いかも知れませんが、2005年には敷地内にショコラトリー「Quatrieme Chocolat 進」(キャトリエンム ショコラ・シン)をオープンし、チョコレートについても、日々、研究を重ねてきました。そんな小山進シェフが、京都に生まれた自らのアイデンティティーをも表現した日本人ならではのショコラが、チョコレートの本場フランスでも高い評価を受けたのです。

毎年秋にパリで開催されるチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」。2011年は10月20日から開催され、「パティシエ エス コヤマ」も初出展しました。

この会期中に、ショコラ愛好会「Club des Croqueurs de Chocolat クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ(略称C.C.C.)」の試食品評会の結果が発表され、250名のショコラティエの応募の中から、厳正な試食審査が重ねられ、1~5枚までのタブレット獲得者150名が発表されました。そこで「パティシエ エス コヤマ」は、初出品者として史上初となる最高位のタブレット5枚+星獲得という快挙をとげたのです。

1981年に設立された「C.C.C.」は、チョコレート版ミシュランと呼ばれ、フランスで最も権威あるショコラの愛好会。小山シェフのように海外での修業経験がないパティシエがエントリーすることは、実は「C.C.C.」史上初のことでした。前年まで、「C.C.C.」は、フランス人パティシエ又はパリで出店しているパティシエのみ参加権があったのですが、2011年から、その条件に該当しなくとも参加できることになったのです。

その結果、フランス国外のショコラティエとして初めて、最高位を獲得した小山シェフ。審査員達に「コヤマススムの作品には日本の伝統を感じることができる」と激賞されたというボンボンショコラの内容をご紹介します。

C.C.C.デギュスタシオン No.5(5個入 1470円)

「パティシエ エス コヤマ」の「C.C.C.デギュスタシオン No.5」

「パティシエ エス コヤマ」の「C.C.C.デギュスタシオン No.5」

今回の「C.C.C.」課題作品内容は、ビターガナッシュを使ったボンボンショコラ1種、ミルクガナッシュを使ったボンボンショコラ1種、ナッツを使ったプラリネ1種、オリジナリティのある自信作を1種以上というもの。

小山シェフは、すでに自店で販売していた「es-ガナッシュノワール」「es-ガナッシュオレ」「es-プラリネノワゼット」に加え、ミルクチョコレートと大徳寺納豆を組み合わせた「一休」、ラフロイグ10年のウィスキーの香りにフランボワーズのアクセントを効かせた「スモーキー」の5種で出品しました。

ビターとミルク2種のガナッシュには、赤い果実やシナモンを思わせる個性的な酸味と上質なアロマが特徴のマダガスカル産クリオロ種カカオを使用。ビターガナッシュはフルーティーな風味が楽しめる一方、ミルクガナッシュの方は、まろやかで濃厚なミルクを加えることで、このカカオ独特のベリーのような酸味が心地よく中和され、同種のカカオでも全く違った印象となっています。細身のスタイリッシュな形も食べやすく、箱の中で3本が並んだ姿も美しいですね。

さらに驚かされるのは、ミルクチョコレートのガナッシュの上に大徳寺納豆を3粒のせ、ミルクチョコレートでコーティングした「一休」です。京都の和菓子の中には、大徳寺納豆を和三盆で包んだ干菓子というのがありますが、まさかボンボンショコラに使うとは!ベースのチョコレートは、コスタリカ産トリニタリオ種のカカオのウッディなアロマと濃厚なミルクの風味が特徴。そこに、よく熟成したかつおぶしを思わせるような大徳寺納豆の香ばしさがマッチし、まろやかな甘さに塩気がアクセントを添えます。フランスでなじみのある「塩キャラメル」味を思わせますが、大徳寺納豆を中に練り込んでしまわず、粒のままのせてあるため、インパクトと驚きがあります。まるで、日本で愛される「一休さん」のように頓知の効いた、遊び心あるチョコレート。フランスで注目されたのも納得できます。
「C.C.C.デギュスタシオン No.5」の5粒

品評会で最高位を受賞した「C.C.C.デギュスタシオン No.5」の5粒

そしてこの「C.C.C.」の品評会結果を受けて、「サロン・デュ・ショコラ」では、タブレット獲得者の中から、5枚タブレットを獲得した外国人を含む優秀な20人を表彰する「2011 SALON DU CHOCOLAT AWARD」が行われました。そこで小山シェフは、栄誉ある「外国人部門最優秀ショコラチエ賞」を単独で受賞したのです。

「フランスでの経験がない自分にこんな賞をいただけたことは感動的だった。フランスの方々の“良いものを追及する心”と“異文化を受け入れる寛大さ”に感謝するとともに敬意を示したい」と喜びを語った小山シェフ。

そんな小山シェフが、生まれ育った「京都」で刻み込まれたDNA、日本の食文化を凝縮した、個性豊かなショコラのBOXがこちらです。

DNA京都2011(8個入 2401円 ※伊勢丹での店頭表示価格) 

「パティシエ エス コヤマ」の「DNA京都2011」

「パティシエ エス コヤマ」の「DNA京都2011」

中身は、黒大豆醤油、京番茶、一休、黒七味-YABAI-、抹茶、米こうじ味噌、金胡麻のプラリネ、柚子と、京都の素材を存分に活かした個性的なボンボンショコラ。

金胡麻のプラリネは、香ばしい風味を際立たせる、まろやかで豊かな風味のマダガスカル産クリオロ種カカオ豆のミルクチョコレートを使用した自家製プラリネがベース。さらに、キャラメリゼした金胡麻がプチプチとはじけ、食感も香りもよりいっそう楽しめます。ヨーロッパで一般的なアーモンドやヘーゼルナッツのプラリネとは異なる個性を主張する、日本らしい一粒です。

一見、シナモンパウダーを振っているかのように見えるのは、兵庫県多可産の手作り「米こうじ味噌」のミルクチョコレートガナッシュに、赤味噌パウダーをデコレーションしたもの。日本人の間でも、最近、発酵食品の力が見直され、ブームになっていますね。米こうじの自然な甘さと味噌の醸し出すコク、それがショコラとどのようになじむのか、ぜひ体験してみてください。

京都でよく知られる「黒七味」を使った一粒は、グアナラ産カカオ70%のビターチョコレートをベースに、なんとハチミツを加えています。ビターで芳醇な香り、ハチミツのやさしい甘さ、黒七味のスパイシーな香りが幾重にも重なるのが魅力。黒七味は好きで、自宅でも調味料として使っている私も、この組み合わせの発想には驚かされました。

後篇でも、日本が世界に誇るショコラティエ達をご紹介しています。こちらもぜひ!

<ショップデータ>
「パティシエ エス コヤマ Quatrieme Chocolat 進」
兵庫県三田市ゆりのき台5-32-1
電話 079-564-3192
営業時間 10時~18時
定休日 水曜(祝日の場合は翌日)
http://www.es-koyama.com/
(オンラインショッピングあり)

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