PSPを育て、PSVitaへつなげた
PSPのユーザーを引き継いでいくというのは、日本の市場において普及戦略上最重要課題と言えるかもしれません。
約32万台という数字を出せた理由の1つには、初日にそれだけのハードが用意できたというポイントがあります。冒頭で店頭で在庫が残っていたというお話をしましたが、それは決してネガティブなことではありません。在庫があるのは良いことです。当たり前ですが、お店にハードがなければ売れないんですから。PSPの発売日を振り返ると、初回出荷が少なく、在庫切れで初週の数字を止めました。今回はしっかりと十分な数の商品が店頭に揃いました。
もう1つの理由として、PSPというハードを丁寧に育て続けたことが挙げられると思います。PSPが約17万台でスタートしたのと同じ年にニンテンドーDSが発売され、こちらは約44万台でした。これは大差と言っていい台数です。しかし、次世代でその差はぐっと埋まったわけです。具体的には5万台ほどに。これは携帯ゲームハードに新規参入したソニー・コンピュータエンタテインメントが、PSPという種を、くじけず、投げず、育て続けて信頼を獲得したその結果であると言えるでしょう。
PSVitaの不安
フリーズしたまま電源が切れなくなることもあるようで、その場合は数時間放置して画面が消えてから、修理ということになります。
また、3G/Wi-Fiモデルの売れ行きも気になります。PSVitaには通信手段としてWi-Fiが使えるWi-Fiモデルと、Wi-Fiと3Gの両方が使える3G/Wi-Fiモデルが併売されていますが、現状はWi-Fiモデルの方が多く売れ、発売当日はWiFi/3Gモデルのみの在庫が余っているような店舗もありました。
ゲームハードの為に3G回線の通信料を払ってもらうというのは中々にハードルが高いでしょうから、この結果は予想されていました。3G/Wi-Fiモデルの初回50万台にお得なプリペイドデータプランをつけるなどの工夫をしてはいますが、根本的には将来に渡って通信費を払い続けても3Gを使って遊びたいと思わせる分かりやすいコンテンツがなければ状況の改善は難しいかもしれません。
3G/Wi-Fiモデルは、3G回線だけでなくGPSも搭載されていることから、それらを使った新しい遊びが続々登場することを期待したいところです。3G/Wi-Fiモデルを購入する人が少ないから常時接続やGPSが必要となるようなサービスを提供しにくい、サービスが提供されないからWi-Fiモデルが売れる、そういった悪循環にはまらないようにすることは、PSVitaの将来像に大きく関わります。
PSVitaは良いスタートを切ったと言えますが、より重要なのは、いくつかの不安な点を解消しつつ、これからどう育てるかでしょう。