CRAFTVISM

ロンドンのニュービスポークテーラーを思わせるインテリア。サロンとショップ、アトリエがすべてこの空間に

銀座に新たなテーラーが誕生しました。「ザ クラフティヴィズム」。採寸から縫製までをひとりで手がけているテーラーは信國太志さん、そう「タイシノブクニ」のデザイナーとして知られる人物です。

実は彼、20代の頃、ロンドンの名店でフィッターとして名を挙げた『チャーリー・アレン』の元でテーラーリングの修行を積んだ経験を持っています。ロンドン・セントマーチンを卒業後、活動の場はモードの世界へと変わりましたが、そのクリエイションには多分にテーラリングの手法を用いるなど、実力の程を伺わせてきました。ストリート系モードの旗手として知られていた頃に、取材を介してお会いしたことがあったのですが、数々のファッション誌で名を馳せた彼が、テーラーリングの世界に参画されていたとは。

アトリエは、銀座2丁目の小さなビルの5階にありました。路面店のイメージの強いタイシノブクニのショップとは異なる、隠れ家的なテーラー&アトリエという設定に戸惑いましたが、店の扉を開けるとさらに驚きが。実際に信國太志がハサミと針と糸を持って、作業台に向かっていたのですから。

「じつは40歳のときに、青山の老舗テーラーに出入りさせてもらうことで、スーツの丸縫いにもう一度向きあう機会を得ました。70歳を過ぎたテーラーとコラボレートという形で何着かを手がけ、今年11月に自身のサロンを開いたんです」

日本のサヴィルロウ・銀座に現れたニュービスポークテーラー

そこはニュービスポークに湧くロンドンの、新進テーラーのアトリエのような空間です。伝統と革新、クラシックとパンク、ヴィンテージ生地とリバティプリント。そんな対極が詰まったインテリアは、ストリートモードを華麗に操ってきたデザイナーと、テーラーとして一歩を踏み出した男・信國太志が共存するクロゼットのようです。

「僕のなかでは、なにも変わっていないんですけど(笑)」という信國さんですが、ブランドの運営、大手アパレルのディレクターを経てきた実績とは対極のリテール。それは服と真面目に向き合ってきた結果といえるのかもしれません。「ここでなら希少なヴィンテージ生地を、限られたお客様にも確実にしかもリーズナブルに提供できる」と話すように、服を着る人に、合う服を作り着てもらえるというシンプルな思考の結果なのでしょう。

デザイナーからテーラーへ、服飾との究極の関係性とは

CRAFTVISM

アトリエの一辺は作業場。ここで信國大志さんがアイロンを手に作業に耽る。もちろん接客も彼がひとりで行う。そう、ここは彼が一人で切り盛りしているのだ

「スーツはもちろん、ジャケット、コート、シャツ、帽子や靴までオーダーで仕立てられる場所です。店内の服はすべてサンプルなので、値札はつけてていません。もちろんサイズが合えばお売りすることもできます。値段は生地によって、違うので…」

フルアイテムを揃える店内ですが、けっして数は多くありません。信國さんが手作業で仕立てている服ですから量産が効かないのはもちろん、服はあくまで着る人の希望を叶えることで成立するという「個人」のものであり、マスプロダクト的工業製品ではないことを再確認する場所ゆえ。友人である靴職人やデザイナーのクラフト的なアイテムの取り扱いもあり、帽子はシャポー ド ヤマカワ、靴はダイタキムラ、ケリー・キクチ、ロンドンからヴィヴィアン・ウエストウッドの息子、ジョー・コーレが手がける「チャイルド オブ ザ ジャゴ」なども扱われています。

クライアントとコンサルティングから一緒に服を仕立てるという作業は、ファッションに関わる人間として究極のスタイル。しかも生地を切り、縫うという作業を信國さん自ら、ここで作業をしています。コンピュータと仕様書、細かなサンプル生地と付属見本に囲まれたメガアパレルのデザインルームではなく、針と糸とハサミとアイロン、そして「足踏み式でないと、生地の感覚がつかめないので」と、シンガーのアンティークミシン99K。デザイナーというよりも、クラフツマンとしての生き方を見つけた信國さんのアトリエでは、帽子や靴、ステッキなどもオーダーできるとのこと。老舗テーラーが軒を連ねる銀座に表れたニューテーラー。日本のサヴィルロウに、新風を巻き起こしそうです。


【SHOP DATA】
THE CRAFTIVISM tishi nobukuni
住:中央区銀座2-11-11 第二大和ビル5F
TEL:03-3547-5340
営:アポイント制
休:土・日
URL:www.taishi-nobukuni.co.jp


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