あいうべ体操とは?
あいうべ体操をすると、鼻呼吸がしやすくなります
あるとき今井先生は、関節リウマチの患者さんは口臭が強いことに気がつきました。そして、関節リウマチの症状がひどくなると口臭がさらに強くなり、逆に、症状がよくなると口臭も減ることが分かりました。
初めはその理由が、よく分かりませんでした。しかしそのうち、患者さんの9割以上が、鼻呼吸ではなく口呼吸をしていることも気がつきました。この口呼吸をやめて鼻呼吸になれば、口臭が減り、関節リウマチも良くなるのではないかと考えました。そして、口のまわりや舌の筋肉を鍛えるために、あいうべ体操が作られたのです。
実際、患者さんに体操を指導すると、劇的な変化が出ました。たった数日間、あいうべ体操をしただけで、関節の痛みや腫れがよくなる人がいたのです。
口呼吸は病気のもと
口呼吸をしていると、口から病気の元が入ってきます
人間でも赤ちゃんは、しっかり鼻呼吸をしています。ですから、お母さんのおっぱいを飲みながらでも、息をしていられるのです。しかし、成長するにしたがって、口呼吸の人が増えてきます。口をポカンとあけている人は、ほぼ間違いなく口で呼吸しています。
では、なぜ、口呼吸が悪いのでしょうか? 鼻呼吸をすると、鼻から入ったバイ菌やアレルギーのもとは、鼻毛や鼻の粘液にからみ取られます。さらに鼻の奥にある扁桃リンパ組織が、バイ菌やアレルギーのもとが肺に入らないように守ってくれます。また、鼻を通る時に空気が温められ湿り気も加えられて、のどや肺への刺激を少なくしてくれます。
一方、口の奥には扁桃リンパ組織がありますが、鼻毛に相当するものがないため、口呼吸ではバイ菌やアレルギーのもとを取り逃がしてしまいます。また、口呼吸では、空気に十分な湿り気を与えられないため、乾いた空気がのどや肺を傷めてしまいます。のどが乾燥するとバリアがなくなるため、バイ菌やアレルギーのもとが体に入りやすくなります。
このように、口呼吸をしていると体の抵抗力である免疫が異常になって、関節リウマチが悪くなり、鼻呼吸をすることで免疫が正常化して、症状がよくなるのです。関節リウマチだけでなく、全身エリトマトーデスやアトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、潰瘍性大腸炎、うつ病などにも、鼻呼吸の効果が見られています。
睡眠の質も、口呼吸と大いに関係があります。口を開いて呼吸していると、舌がのどに落ち込みやすくなります。すると、空気の通り道である気道が狭くなるので、そこを通る空気がふるえてイビキになります。さらに気道が狭められると、空気が通れず息ができなくなります。この状態が「睡眠時無呼吸症候群」と呼ばれるものです。イビキや睡眠時無呼吸症候群を治すには、減量も大事ですが、口呼吸を鼻呼吸に変えることも必要です。
口呼吸のチェックリスト
睡眠中の口呼吸は、イビキの原因です
- いつも口を開けている
- 口を閉じると、あごに梅干し状のシワができる
- 食べるときに、クチャクチャ音をたてる
- 朝、起きたときにのどがヒリヒリする
- 歯のかみ合わせが悪い
- 唇がよく乾く
- イビキや歯ぎしりがある
- 口臭が強い
- タバコを吸っている
- 激しいスポーツをしている
(「免疫力を高めて病気を治す 口の体操『あいうべ』」より)
イビキを直すためには、まず、口呼吸をしていることを自覚する必要があります。自分の呼吸の仕方に目を向けることが、治療の第一歩といえます。鼻が詰まっていて口呼吸になっている人も、あきらめないでください。意識して鼻呼吸をしていけば、少しずつ鼻も通りやすくなるはずです。
あいうべ体操のやり方
童心に返って、思いっきり口や舌を動かしましょう
まず、口を楕円形にして、のどの奥が見えるまで大きく開き、「あ~」といいます。つぎに、前歯をむき出しにして、首の筋が浮き出るくらい口をグッと横に開いて、「い~」といいます。「う」は口を閉じる筋肉の体操で、唇を尖らせて前に突き出して、「う~」といいます。最後の「べ」では、舌の付け根が引っ張られるくらい、思い切り舌を前に突き出して、「べ~」といいましょう。
「あいうべ」の4つの動作を1セットとして、1日30セットを目安に体操します。1セットは、おおむね5秒間くらいかけて行います。慣れるまでは、30セットを2~3回に分けて行ってもかまいません。もっと回数を増やしたいときには、1回30セットを朝晩や朝昼晩に行うとよいでしょう。
状況によっては、声は出さなくても結構です。また、顎関節に痛みなどの問題を抱えている人は、顎関節に負担がかかりにくい「い」と「う」の体操だけを行っても効果があります。
あいうべ体操に加えて、眠るときに絆創膏やテープで口をふさぐと、鼻呼吸がしやすくなります。また、片側の歯だけで物をかむクセがある人は、左右の歯で同じようにかむように心がけましょう。さらに、ガムやグミをかんで、顎の筋肉を鍛えると効果が上がります
【参考書籍】
免疫力を高めて病気を治す 口の体操「あいうべ」 今井一彰・著
【関連サイト】
いびきの防止・治療法
睡眠時無呼吸症候群(SAS)