火災や自然災害などへの備えに最適なのは?
住まいや家財を守れる? 風水害や地震保険については特にチェックを!
「火災保険と火災共済ってどう違うの?」としばしば質問をお受けします。火災や落雷、風水害や地震など、種々の災害をカバーする点は同じですし、商品内容では、おおむねいくつかの補償(保障)が束ねられているパッケージ商品である点も似ています。
私たち利用者側から見れば、火災保険にしろ火災共済にしろ、マイホームや家財の損害をカバーする商品であることに何ら変わりはありません。ただし、この2つは似ていても、同じものではありません。
以下、両者の違いと契約するときの留意点について、見ていきましょう。
対象とする災害は同じ、パッケージ商品なのも同じだが
災害についてカバーできる点も同じですが……?
一方、火災共済は非営利団体である各生活協同組合(生協)により運営されています。厚生労働省が所管する生協には、全労済や都道府県民共済、コープ共済などがあり、これらは認可共済と言われます。さらに農林水産省が所管し、JA共済を取り扱う全共連もあります。
そして、民間保険会社が営利目的で不特定多数の人に保険を販売するのに対して、共済は、生協に加入している組合員の福利厚生を図るために普及推進がなされるといった違いがあります。また共済は、非営利の生協により運営されているため、共済金の支払いが予測より少なかったなどで剰余金が生じた場合には、それを契約者に還元する「割戻金」の制度があります。
非営利団体による運営で、剰余金は割り戻される―。こうした仕組みから、実質的な掛金負担は民間保険よりも安くなることも。ただ、どんな場合も安くなるわけではありません。実際の負担は保障(補償)の内容や住所地等により異なり、共済・保険どちらが安いかは一概には言えません。
また、共済といっても、JA共済の火災共済である建更「むてきプラス」は、保険期間が最低5年間で満期共済金があり、1年更新が中心の他の共済とは異なる異色のタイプ。そのため掛金負担はかなり重くなります。
たとえば神奈川県で火災共済金2000万円の建物の場合、新型火災共済は共済期間1年間、年掛金は年1万6000円。一方、建更「むてきプラス」は、共済期間が5年間、満期共済金額は200万円で、年掛金は48万円あまりです。
こうなると、契約できる層は限られてくるかもしれません。そもそも、JA共済は農家組合員のための共済ですから、誰でも必ず入れるというわけではなく、組合員以外の加入はJAごと組合員加入高の2割までに制限されています。
なお、それぞれの運営団体の監督官庁は異なりますが、火災保険・火災共済いずれも、保険法により同じ規制を受けています。
JA共済以外の火災共済は風水害の保障が弱め
風水害の保障については、各商品により大きなばらつきがあります。「新型火災共済(都道府県民共済)」では、2000万円以上の建物に対し、風水害は最大でも600万円。「火災共済(全労済)」では2000万円の建物に対して最大150万円、自然災害保障を強化した「自然災害保障付火災共済(全労済)」の標準タイプで1150万円、大型タイプでも1550万円まで。建更「むてきプラス(JA共済)」は、2000万円の建物なら、最大2000万円まで保障です。一方、民間保険会社の火災保険は、昨今新規で契約するタイプのものなら、風水害については免責金額を超えた金額について最大100%補償するタイプもラインナップされています。ただ、契約時期が10年以上前の火災保険や、特約火災保険では、最大7割までの補償となっている場合があります。
このように、火災保険・火災共済は同じパッケージ型ですが、商品によりカバー内容には大きな違いがあるわけです。ここで大切なことは、どれがよい、悪いということではなく、ご自身の住まいを守るのに適切な形で掛けられているかどうか。たとえば、川沿いの低地にある一戸建てで、ハザードマップなどでも水害危険が予測される地域の住宅なら、水害が手厚くカバーされるタイプがおススメでしょう。逆に、市街地にあるマンションの高層階なら、風水害のカバーの必要性は薄くなり、新型火災共済(都道府県民共済)、火災共済(全労済)でも対応可能、といった具合です。
火災共済の地震保障は独自保障。国が関与する民間地震保険とは異なるもの
地震のカバーについては具体的に確認を
まず、「地震保険」は、法律に基づき官民一体で運営されている半ば公的な保険です。そのため各損害保険会社で取り扱われる地震保険はすべて同じもので、火災保険金額の最大5割までの保険金額を、民間損保会社の火災保険のみに付帯できます。つまり、2000万円の建物なら、地震保険金額は最大1000万円まで確保できるということです。
一方、各種火災共済に地震保険はセットできないのですが、共済商品にはそれぞれに独自の地震保障がセットされています。
たとえば、自然災害保障付火災共済(全労済)の標準タイプなら、地震保障は火災共済金額の20%。つまり、2000万円の建物なら、地震保障は最大400万円ということです。一方、新型火災共済(都道府県民共済)では、地震等で半焼・半壊以上の損害に対し、加入金額の5%、かつ最大300万円で、合わせて家族の死亡に対して最大500万円(1名100万円)限度の見舞金がセットされます。
なお、「むてきプラス(JA建更)」の地震保障も独自の保障ですが、地震保険と同様、火災共済金額の最大5割までが保障されます。ただし、地震保険が保険始期によって「全損・半損・一部損」の3区分、または「全損・大半損・小半損・一部損」の4区分の認定基準を設けているのに対し、「むてきプラス(JA建更)」は損害額が火災共済金額の5%以上であれば、実損害額の5割までが保障される仕組みとなっています。
こうしてみると、住宅ローン残高が多い、不測の事態で自由に使える貯蓄がないなど、地震発生時に大きな経済的ダメージを被る可能性がある場合には、相対的に大きな補償(保障)を確保できる商品を優先した方がいい、ということになりますね(2017年10月現在)。
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