暮らすように泊まる
旅行から帰ると「やっぱり自分の家がいいなぁ」と感じることはありませんか? それは、自分の家の中だと気兼ねすることなく自由にできて究極のリラックス状態でいられるからではないでしょうか。そんな「暮らす」ように「泊まれる」宿が、沖縄本島の北、伊是名島(いぜなじま)にある古民家の宿「がーぺーちん」です。「暮らす」のですから手取り足取りという訳にはいきません。困った時はご近所のオジイ、オバアに声をかければ助けてくれるので大丈夫。
「お膳立てされた旅は飽きちゃった」という旅の強者なら、島人になりきってリラックス状態を楽しみましょう。
沖縄県最北の島は伊平屋島、その直ぐ下の北緯26度にあるのが伊是名島(いぜなとう)です。約2000人の島人が東西南北にそれぞれ5つの集落に分かれて住み、宿があるのは南側にある伊是名集落と呼ばれる地区。島は南北に走る山地が分水嶺となり、沖縄では珍しく稲作も行われている離島です。
那覇空港から高速バスで運天港のある今帰仁まで向い、フェリーで約1時間かけて向かいます。着くのは島の東側にある仲田港。到着したら先ずレンタカーを借りたほうが良いでしょう。円形状の島には一周道路が走り見所も点在しているので、車があったほうが便利です。それでは、宿を目指して出発!
鍵もない、看板もない宿
宿の名は「がーぺーちん」。可愛らしい響きですね。白い瓦と高く積まれた珊瑚の石垣は、まるで沖縄の原風景。昔からお互いの家を屋号で呼んできたから宿の名前もその通り。がーぺーちんを漢字で書けば「我喜屋親雲人」。王朝の位で士族を表した親雲人(ぺーちん)、我喜屋(がきや)というのは名前で響きがよくなかったから「ガ」だけ残したという由来だそう。建物は沖縄の伝統建築である平屋造りで、間取りは昔のまま。天井を高くしたり、トイレやシャワー付きの風呂場を建物内に増設したりと、使い勝手が良く改装されているので安心です。
しかしこの宿、鍵がついていません。村の人は鍵をかける習慣がないから宿も鍵を敢えてつけていないという徹底ぶりです。安全よりも安心。田舎暮らしの醍醐味です。ただし、出掛ける時に貴重品は持って出てくださいね。
そして、看板もありません。村に溶け込むよう、民家と違わずに宿は建てられているのです。ですが、曲がり角の目印は覚えておいてくださいね。宿に帰りつけない、ということになりかねませんから。
宿を運営するのは「NPO法人 島の風」。島の風土を残し守り伝える活動を展開しています。その中心になるのが「古民家再生事業」。住民がいなくなり取り壊されてしまうような民家を宿として再生させているのです。がーぺーちんは5年ほど前にオープンさせました。
ただ単に、建物を再生するだけではなく、同時に地域のコミュニティーのなかで小さいビジネスをすることにより、住民の生活と宿業が緩やかな関係を持つ、という発想から「暮らす」という点に趣きを置いた宿になっています。島内にはがーぺーちん同様の宿がもう2軒あり、島暮らしを体験することができます。
次のページではとっておきの絶景スポットをご紹介!