日本海の魚が目白押し!
輪島といえば魚。9月1日には日本海の底曳漁で甘エビやノドグロが。11月6日にはずわいがにが解禁となり活気づく。器はもちろん、輪島塗。漆器に盛られた夕食は、刺身で、焼いて、煮て、と日本海で水揚げされた魚がたっぷりといただける。
魚だけではなく野菜や米、調味料まで地の物が中心に使われていて、なかでも能登の醤油「いしる」は能登に来たことを実感させる郷土の味だ。漆の温もりを手でじっくりと確かめながら味わいたい。
包丁を握るのはご主人の深見大さん。民宿は、ご主人が包丁を握り、調理師を雇わない分、安くできるという訳だ。
輪島の高級民宿 勝負の鍵は?!
輪島塗の宿と聞いて「どんなに高い宿なのだろう」と想像してしまうが、一泊二食の料金は7800円~。漆にこれだけ触れられるという他にはあまり類を見ない体験ができて、新鮮な魚も美味しくてこの値段。しかし、輪島の民宿の約9割は7500円以下で泊まることができるので、深三は輪島の高級民宿ということなのだが……。
少しだけ高い理由は、「専業民宿」というところにある。
民宿は小規模の農家や漁師の家族が経営する「兼業」というスタイルをとるところが多く、季節の跛行性によるダメージを緩和してきた。「調理も全部自分たちでやる」さらに兼業もしているから「安い」のが民宿。
深三は「専業」だから、兼業民宿よりリスクもあるし大変。それだけに兼業と同じくらいの値段とはいかないし、「個性」が必要であった。それが、漆塗りと料理なのだ。
団体客が減り個人客へシフトしてきた旅の事情を背景に、この「個性」こそが個人が宿選びするうえで最大の動機付けになる。気に入られれば馴染み客になるし、広告宣伝費がかけられない民宿にとってはメディアへの強い武器になるのだ。それだけに難しい。