土地活用のノウハウ/土地活用の相続・法律問題

借り手保護……大家さんが避けて通れない法律の話(2ページ目)

先日、最高裁判所で更新料有効判決が出され、2年前の京都地裁判決に端を発した更新料問題にピリオドが打たれました。この問題の背景には消費者契約法がありますので、判決を整理してみましょう。また、国交省、東京都などのガイドライン整備が功を奏し、原状回復トラブルは減っていましたが、また増加しています。この8月に、国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)が出ましたので、ご紹介します。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

敷金・原状回復をめぐるトラブルが増えています

入居時の写真

入居時は綺麗なお部屋でも……

敷金についても見てみましょう。敷金は入居者の退去時における原状回復費用に使われることが多いのですが、近年、原状回復の費用負担をめぐるトラブルが何故か増えています。

一時、原状回復トラブルが激増したため、国土交通省が原状回復のガイドラインを配布しました。東京都においては、東京ルールというガイドラインが出来て、トラブルは減ってきたのですが、ここにきて、入居者側の意識が高まる一方でオーナー側の意識が薄れ、また増加したと考えます。

あるオーナーさんは、退居者から部屋の引き渡しを受けた際、部屋の傷みが予想以上にひどかったので、「後日、リフォーム業者と相談してから修繕費用を伝えます」として、金額について詳しい説明はしないまま引渡しを受けました。

その後、リフォーム会社に見積もりを頼んだところ、壁紙の貼り替えや修繕等で20万円かかるということになり、オーナーさんは妥当な内容と料金だと判断して、退居者に相談せず発注しました。

たまたまた、その20万円という金額は、退居者から預かっていた敷金と同額だったため、オーナーさんはちょうど相殺できると判断し、退居者への連絡をうっかり忘れて放置してしまいました。

2ヵ月後、○○借家人組合という団体から、「敷金を全額返還せよ」という通知が届きました。驚いたオーナーさんは見積書を送り、相殺した旨を伝えました。

ところが、その退居者から少額訴訟を起こされ、簡易裁判所に呼び出されたのです。そして全額返還せよとの判決が出て、20万円全額を返却するという事態になりました。傷みはすべて自然損耗の範囲内であり、オーナーが自己の負担で原状回復すべきもの、とされてしまったのです。

昨今、この手の少額訴訟は全国各地で頻繁に起こっており、ほとんどの場合はオーナー側が敗訴している状況です。

最近は情報に長けている入居者も増えており、「敷金を100%取り戻す本」が発売されたり、ネットでも「敷金返還テクニック」なる情報も出回っており、むしろオーナー様より入居者の方が交渉術に優れていると言っても過言ではありません。
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