家族の大切な一員であるペットを喪失すれば、心的ダメージは言葉で表されないもの。心の病気のリスクも高まり、特に、うつ病には要注意です
例えば、昔から自分が辛い思いをしているときに時に、足元にそっと身を寄せて、壊れかけた心を暖めてくれたペットの○○ちゃんはもう10歳……。近い将来、この世から旅立ってしまうなんて、考えたくもないことでしょう。しかし、現実には一緒にいられる期間は限られているのです。
ペットと過ごす時間はかけがえのないものですが、ペット喪失時の衝撃で、心の病気が発症してしまうことは稀ではありません。今回は、ペット・ロスが引き金となる心の病気、特に、うつ病を詳しく解説します。
心の病気の大きな引き金になりうるペット・ロス
心の病気は、一般的に、DNAレベルで定まる脳内環境などの遺伝的要因に、環境、心理的要因が引き金となって発症します。大切な家族の一員であるペットを喪失すれば、誰でも大変な衝撃を受けるはず。多くの人は、時の流れの中、そのペットのいない新しい環境に適応していきますが、なかには、うつ病などの心の病気を発症してしまうケースがあります。
特に、そのペットなしでの生活が考えられないほど心理的絆が強くなっている場合や、対人関係などで何らかの深刻な問題を抱えている場合、慢性的に気持ちが落ち込んでいたり、飲酒問題がある場合などでは、ペット・ロスの心的ダメージが、これらの問題のために増幅されてしまうので、心の病気に注意することが必要です。
ペットロスの悲しみは心に秘めないことが大切
受けた心の衝撃度にもよりますが、ペットの喪失感を乗り切るためには、誰でもある程度の時間が必要になります。ただ、悲しみを心の中に秘めておくのはNG。苦悩を心に閉じ込めておくと、非合理性が増しやすくなるので注意してください。例えるなら、炭酸入りの缶ジュースを持ち歩いていたときに、中の圧力が行き場のないまま高まり、フタを開けた途端に中味が噴出することがあると思います。心の苦悩もこれと非常によく似ていて、溜め込んでいるうちに、知らず知らず、不合理なほど高くなることがあるのです。
苦悩の圧力を減圧するためには、涙を流し、嘆き悲しむ時間が不可欠。そして、ペットを喪失した苦悩を家族、親友など信頼できる人に話すこと! 悲しみを心の外に出し、苦悩のガス抜きをする事で、その喪失を過去の事として向き合えるようになり、新しい環境への適応を、より円滑にします。
喪失感が長引く時は、うつ病の可能性も考慮して
もしもペット喪失後、何も手につかない程、ショックを受けたとしても、それが一時的なら、精神医学的に問題になることではありません。ただ、その時期が長期化している場合、特に1ヶ月経過しても、日常生活に深刻な支障が生じている場合は、心の病気に近くなっている可能性も考慮する必要があります。なかでも、うつ病には要注意。うつ病は脳内環境が悪化したために生じる病気なので、できるだけ早期に薬物療法などで、脳内環境を元に戻す必要があります。早期に治療を開始すればするほど、一般に予後は良好です。
もしも死にたいほどの気持ちが生じている場合には、うつ病が重症化していると考えられるので、すぐに精神科(神経科)を受診する必要があります。また、うつ病の症状には個人差が大きく、場合によっては、気持ちの落ち込みが、頭痛、腹痛などの身体症状の影に隠れてしまう場合もありますので、うつ病に対するアンテナは、高く張っておきましょう。
最後に、楽しいペットライフに水をさすようで恐縮ですが、ペット・ロスがうつ病など心の病気の引き金になることがある、ということは知っておいていただきたいのです。避けられないお別れで心を壊さないためにも、ペット・ロスから正しく立ち直るための心のマネジメントについても理解しておいてください。