近江の仏像、エリア別攻略法
よい仏像がある寺は、滋賀県内に幅広く点在しています。地域によっていろいろと事情も違うので、ここでは、大きく3つの地域に分けて、それぞれに関する基礎知識をまとめてみました。大津市内
この地域の寺は、電車やバスの便も比較的よく、事前予約なしでいつでも拝観できるところも多いので、近江の旅の初心者はここから始めましょう。三井寺、石山寺、延暦寺が基本です。それらを回った後は、大津の坂本地区にある西教寺にも行ってみましょう。また、こちらは事前に拝観予約が必要ですが、聖衆来迎寺(しょうじゅらいごうじ)などもおすすめです。
ただし、どの寺でも、すべての仏像が拝観できるわけではなく、一定期間しか見られないものや、博物館にしか出さないものなどもありますので、常時拝観可能な寺だからと言って、必ずしも目的の仏像に会えるわけではありません。どうしても見たい仏像がある人は、事前に「この仏像を見たいが、いつなら拝観可能か?」と電話で聞いておくこと。
湖南と湖東
琵琶湖の南側と東側の地域で、湖岸の田んぼの中や山に分け入ったところに、よい仏像がある寺が点在しています。東海道線の駅から近いところならまだいいですが、車でないと行けない寺も多く、より綿密な計画が必要となります。この地域で、常時拝観可能で仏像が多い寺は、東近江市の石馬寺。また、湖東三山と呼ばれる西明寺、金剛輪寺、百済寺も、常時拝観可能です。
湖東三山も、それぞれに少し離れており、普段、公共の交通機関を使っていくのは、なかなかたいへんです。しかし、湖東三山は滋賀県内でも人気の観光地なので、毎年、春と秋にシャトルバスが運行されます。こ2011年秋は、11月13日(日) ~ 30日(水) ・ 12月3日(土) ・ 4日(日)に運行予定。この間は、普段見られない仏像も、特別に開帳されることがあります。ただし、このシーズンには、関東や関西方面からも観光バスが大量に押し寄せますので、人の多さを覚悟してお出かけください。
湖東三山シャトルバスの詳細
近年は、湖南三山と呼ばれる3つの寺もクローズアップされています。そのうち善水寺は常時拝観可能ですが、常楽寺、長寿寺は、事前予約が必要です。紅葉の時期に、湖南三山めぐり臨時直行バスも運行されるようになりました。2011年は、11月12日(土)~11月30日(水)。この間は、事前予約をしなくても、3つの寺を拝観できます。全国から観光客が押し寄せる湖東三山とくらべれば、まだ知名度がさほど高くないので、紅葉狩りと仏像ウォッチングを兼ねた旅の穴場と言えるかも知れません。
湖南三山臨時直行バスの詳細
湖北
琵琶湖の東北に当たる地域で、十一面観音像が多く、「観音の里」として、近年、仏像マニアたちの聖地となっているエリアです。ただし、湖東や湖南よりもさらに交通の便が悪く、多くの寺が無住のため、事前予約をしっかり入れねばなりません。主にJRの高月駅周辺とJRの木ノ本駅周辺に、訪ねるべき寺が点在しています。
高月駅近くには、数年前に東京国立博物館に展示されて、仏像好きの目を釘付けにした向源寺の十一面観音があります。こちらは常時拝観可能で、駅から徒歩で行けるので、湖北に行ったら、まずここ、という人も多いです。
そのほかにも、何とか徒歩、あるいはレンタサイクルで回れる範囲内に、優れた観音像を祀る寺がありますが、そのほとんどは無住、あるいは、誰かがいるとしても、事前予約が必要となります。湖北の無住の寺は、周辺住民が、年ごとに「観音様係」を決めて専用の携帯電話を持ち、「着きました」と連絡すると、鍵を開けに来てくれるシステムになっていることもあります。所定の番号に電話すると「はい、観音様です」と言われることもあって驚きます。その係の人が、トラクターに乗って田んぼ道を走ってくるという光景も、湖北ならではでしょう。湖北の人々は、はるばる仏像を拝みに来る人に優しいのです。
木ノ本駅周辺の寺は、少し山間に入るところも多く、一部は徒歩でも何とか行けますが、数多く回ろうと思うなら、やはり、車があった方がよいと思われます。このエリアのおすすめは、まず、己高閣、世代閣という小さな博物館。2つは隣り合っており、鶏足寺という、かつて背後の山で栄えていたが、今はほとんど消えてしまった寺にあった仏像を集めています。
博物館なので予約なしで見られますが、月曜日は休みです。そのすぐ近くに、井上靖さんが絶賛された美しい観音様がある石道寺があります。こちらも予約なしで見られますが、やはり月曜日はお休み。つまり、木ノ本周辺の寺を巡るなら、月曜日は避けた方がいいということです。また、鶏足寺周辺は、滋賀県内有数の紅葉の名所です。
鶏足寺跡付近の紅葉
観音めぐり定期観光バスの詳細
※以上は、近江の寺めぐりの入門者さん向けの基本情報です。滋賀県内には、ここで紹介した以外にも無数の優れた仏像がありますが、とても一度の記事に書ききれるものではなく、拝観が可能かどうか、また、どうやったら拝観できるかも、それぞれの寺で違います。行きたい寺、見たい仏像を発見したら、各自、インターネットなどで詳しく調べて、旅のコースをお考えください。