最悪のシナリオを回避する先手の値下げ
3DSにとって最悪のシナリオとはこうです。子供たちがもらったら飛び上がって喜ぶくらい、魅力的なソフトを投入していく必要があります。(イラスト 橋本モチチ)
そう考えると、もし値下げというカードを切るのであれば、それは早い段階が望ましいことが分かります。今価格を下げて、PSVitaを相対的に高級機に押し上げ、PSPの価格的優位もなくした上、突然の値下げへの賛否も沈静化した秋頃に、年末から春にかけてのソフトラインナップを大きく発表できれば、フラットな形で年末商戦に入り、勝負をかけることができます。
ここで、大事なのは年末、春に向けてのソフトラインナップだということが分かりますね。そうです、3DSの値下げという戦略は、それ単体では大きな効果は期待できません。欲しいハードの価格が下がったら、ユーザーは喜んで買いますが、欲しくないハードの価格が下がっても、誰も欲しがりはしません。
3DSが値下げされた週、本体の販売台数が約20万台となり、一気に発売日翌週の水準まで引き上げましたが、おそらくこの瞬間的な売上は3DSの長期的な展望にとってそれ程大きな意味はありません。タイトルラインナップが変わらないまま価格を下げただけで増えた数字の多くは、いずれにしろ買う予定だった人の需要を先取りしたという側面が大きいと思われます。
この値下げが大きく意味を持つとしたら、子供たちが年末に3DSを欲しがった時です。その時、クリスマスプレゼントを選ぶお母さんの気持ちを想像すれば、1台25,000円なのか、15,000円なのかでは雲泥の差があることが分かります。お兄ちゃんと妹の2人が同時に欲しがっている、なんて状況を想像すれば、それはさらに大きな差になります。
任天堂は、子供たちが目を輝かせて欲しがるような魅力的なソフトラインナップを用意できるのでしょうか。それ次第で今回の新価格が、今後の展開に必要不可欠だった見事な先手となるか、ただ慌てて打ったチグハグな悪手となるか、分かれ道が待っているかもしれません。
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