かわいい飼い猫が化け猫になって、突然人の言葉を話した!? それは幻覚症状かもしれません
心霊現象が純粋に超常現象として存在するのかどうかはガイドには分かりませんが、幽霊やお化けというのは、一般的には非科学的な現象として扱われています。もしも場や人をわきまえずに、「幽霊が出た!」と取り乱してしまったら、ちょっと怪訝な顔をされてしまうかもしれません。幻聴や幻覚など、場合によっては、その人自身のきちんとした治療が望ましい場合もあるでしょう。
今回は、ひと夏の怖い体験ではすまない、心霊現象に関連する心の病気について解説します。
心霊現象の大部分は、ただの錯覚?
例えば子供の頃、窓の外で何かが動いたのを見て、「お化けが出た!」と騒いでしまったことなどはありませんか? 「そんなのは怖くもなんともない。オヤジが怒ったときが一番怖かった」と茶化せる人は、心霊現象には無縁かもしれませんが、風に吹かれた木の枝や、見慣れない鳥、吹き上げられたゴミなどを、子供が幽霊と勘違いして怖がることは珍しいことではないでしょう。大人が訴える心霊現象も、実際はこうした錯覚の延長であることが大部分ではないかと思いますが、錯覚は視覚の他にも、聴覚、嗅覚など、体の知覚器官が受けた何らかの刺激を、脳が別のものと勘違いして認識しまう現象です。
おなかがペコペコな時に、帽子をかぶった人の頭がスイカなどの食べ物に見えたとしたら、それは錯覚というべきか幻覚というべきかちょっと微妙ですが、思わず相手の頭にかぶりついたりしない限り、特に問題はありません。ただ、落ち着けばすぐに正しい認識ができる「錯覚」ではなく、もう少し重度な「幻覚」となると、脳内環境に深刻な問題が生じている可能性が出てきます。
幽霊が見えた? 心霊現象にも似た幻覚症状
幻覚は錯覚よりも深刻な精神症状です。幻覚には、見えないはずのものが見える「幻視」、聞こえないはずのない声が聞こえてくる「幻聴」などがあります。もしも、お盆の夜に、数年前に亡くなった故人が現われたら……? まさしく故人の霊が現われたことになり、心霊現象として語られるでしょう。しかしこうした心霊現象も、精神医学的な解釈は可能です。脳内環境、特に、脳内神経伝達物質の、ドーパミンの働きに問題が生じたために、知覚に異常が生じて、幻を見てしまうわけです。
幻覚は心の病気の代表的症状。統合失調症などでよく見られますが、脳内に腫瘍などの器質的病変がある場合にも生じます。また、日常的にも、たとえば寝入りばなのように、覚醒レベルが低下しているときには、何かの声が聞こえてくることがあります。
幻覚の問題点は、他人には非現実であっても、本人にとっては、れっきとした現実として知覚されてしまうことです。幻覚が出現するようになったら、日常生活に何らかの支障が出てしまいます。
もっとも、例えばお盆の夜に幽霊が出たと信じ込み、「亡くなった祖母が自分を励ますために現われてくれたのだ」と解釈して、本人が励みにするような場合は、特に問題はありませんが、もしも、幻覚が頻発したり、それによって日常生活や人間関係に支障をきたしてしまうような場合、脳内環境に深刻な異変が起きている可能性があります。一度はかかりつけの医師や、精神科(神経科)で相談してみることをお薦めします。
霊に取り憑かれた……心霊現象にも似た解離性障害
憑依現象はホラー映画などでもよく描かれます。かわいらしい少女が急に不気味な表情になり、恐ろしい言葉を口走るようになったら……。「悪霊が取り憑いた!」と表現されるいわゆる憑依現象は、精神医学的には「解離性障害」の範疇に入ります。解離性障害の「解離」とは、日常的にも軽度なものが見られます。例えば、ボーッとしている時に背中を誰かに叩かれて、ハッと我にかえるような状態は、誰にでもあるでしょう。このボーッとしている状態が解離です。解離の程度が大きくなると、病的な症状が出現するようになります。例えば、記憶のない時間が現われる「解離性健忘」。さらに、解離の程度が大きくなると、俗に言う多重人格の「解離性同一性障害」を発症することもあります。
憑依現象も、心が病的に解離した結果だと解釈できます。どうしていわゆる悪霊のような行動をとってしまうのかという問題に関しては、「憑依という現象がある」という知識が深層心理にある場合に、知らないうちにそういう行動をとってしまうことがあるためと考えられます。
例えばキツネ憑きなど、動物の霊が憑くと信じられている地域では、その文化的背景があるために実際に動物の霊が憑いてしまったような症状が出る人がいるのです。「キツネ憑き」を知らない人が「キツネ憑き」のような行動をとることは、精神医学的には考えにくいと思います。
憑依現象は稀なことだと思いますが、万が一起きてしまった場合は、すぐに精神科(神経科)でご相談ください。