飲酒・アルコール/飲酒・アルコールに関する豆知識

悪酔い、痛風を防ぐ!夏に美味しくビールを楽しむ法

ビールがとりわけ美味しく感じるこの季節。しかし夏バテ気味、脱水気味の状態での飲酒は、悪酔いの元です。飲み会当日の昼食から取り入れられる、悪酔い予防法をご紹介します。また、お酒好きには怖い痛風を防ぐためのポイントも、併せて押さえてください。

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド

夏のビール

ビールが美味しい夏。次の日に不快な悪酔いをしてしまわないために、上手に真夏の一杯を楽しみたいものです

ムシムシとした暑さに比例して、ビールが美味しくなる夏。それでなくても暑さで発汗量の増える季節ですが、今年は節電による室温設定の制限もあり、室内勤務の人でもビールが恋しくなることが多いでしょう。

しかし、悪酔いや痛風に悩まされるのは避けたいもの。夏に美味しく健康的にビールを楽しむコツをご紹介します。


悪酔い防止に大事なのはツマミよりも昼食

飲酒の話は、『アキレスと亀』に置き換えられます。ツマミはアキレスで、アルコールは亀です。代謝を考えると、消化管内で消化される栄養物(ツマミ)と、肝臓で代謝されるアルコールでは差があります。

消化スピードを考えると公平ではないので食事中のブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸と、アルコールとの競争とします。アルコールは一部胃で吸収されますが、肝臓をゴールと考えると、先に吸収されたアルコールにツマミの栄養素が追いつくことはできません。酔い始めは肝臓に蓄えた栄養素でアルコールを分解しないといけないということです。悪酔い防止するには、アルコールと一緒に摂るツマミの工夫だけでは不十分。効率よくアルコールを分解してお酒を楽しむには、ツマミよりも飲み会当日の昼食から身体をスタンバイさせておくことが大事ということになります。

飲み会がある日は、昼食を豚肉メインに

肝臓でアルコールを分解するのに、すぐに必要なのはブドウ糖です。ブドウ糖は糖質(澱粉)を摂取すればよいので、昼食でも簡単に摂れるでしょう。もう一つ重要なのはB群ビタミン、中でもビタミンB1 です。ビタミンB1 が多く、摂取しやすい食べ物は豚肉。牛肉の約10倍のB1が含まれています。

飲み会がある日の昼食には豚肉食がお勧めです。生姜焼き、カツ丼、ハム・ソーセージ、カツカレー、肉そば、安くて強い味方は豚丼です。昼食に豚肉と糖質を摂取しておけば、夜の第一陣のアルコールを肝臓で迎え討つことが可能となります。

夕方の身体は脱水気味? ハッピーアワーのガブ飲みに御用心

喉の渇きを感じる時は実は体は脱水状態となっているとき。経験則でも、ビールは喉が渇いているときほど美味しく感じるものです。

脱水状態で飲酒すると、アルコールが溶ける体積(分布容量)が減った状態で飲酒してしまうことになります。結果的にアルコールの血中濃度が高くなり、悪酔いの可能性もあがります。夕方にアルコール類が安いハッピーアワーを行っている飲食店も多いようですが、一杯目は美味しく一気飲みでもかまわないので、できれば二杯目からは速度を考えましょう。

昔話と同じ……最初に飛ばして飲むウサギ型は眠る運命

古い言い回しですが、駆け付け三杯のように最初に飛ばして飲むのをウサギ飲み型、ゆっくり飲むのを亀飲み型とします。摂取したアルコールの体内動態について、横軸を時間、縦軸(対数)を血中濃度とします。原点からの三角形となります。飲酒した量が同じならばどちらも曲線の下の面積(AUC:AREA_UNDER_CURVE)は同じになりますが、ウサギ型はおとぎ話のように最高血中濃度が高くなり(頂点が高い三角形)、酩酊状態になって眠ってしまう可能性が高いことになります。

夏だ、ビールだ!朝だ、痛風発作だ

以下の痛風発作は、男性限定の話です。酸素を利用している生物は大きな熱量を得る代償に酸化ストレスの問題を抱えています。血中の親水性の抗酸化物質は多くありません。尿酸は痛風発作の原因となるので悪物扱いされていますが、親水性の抗酸化物質。尿酸値は男性の方が血中濃度が女性より2mg/dL程度高く、この差は大きいです。ヒトの体温と同等の37℃程度で、ヒトの血漿水に近い弱アルカリのリン酸緩衝液に尿酸を溶かすと、約7mg/dLで飽和します。血液は循環しているので7mg/dLを越えてもすぐには結晶化することはありません。

ビールをそこそこ飲んだ日に、節電を考えて室温が高い状態で就寝した場合で考えてみましょう。脱水予防に水分は摂取。しかし暑くて発汗。汗が気化して体温は低下。生理的な変化ですね。尿酸を中心に考えるとビール摂取で一時的に血中濃度が上昇します。問題なのは発汗と気化です。汗には尿酸はあまり排出されないので、脱水により血中濃度が上昇します。気化で体温が下がると体温低下を調節するため、四肢に送る血液量が減り、手足の先の温度が下がります。関節内の尿酸濃度は血中濃度と同じと仮定すると温度が低くて流れがない場所で尿酸が結晶化する可能性が高くなります。

結晶化しても直ぐには炎症反応、痛風発作は起きません。尿酸が関節内で結晶化すると貪食細胞が細胞内へ溜め込み、貪食細胞が破裂して別の貪食細胞が破裂した貪食細胞と結晶化した尿酸の処理を繰り返すと関節内で炎症反応が起きます。足親指で痛風発作が起きやすいのは、部分的な体温低下が関係しているのです。

痛風発作を回避しながらビールを楽しむために……

この痛風発作の予防には、残念ながらラクな裏技はありません。しかし、敵をまったく知らない場合の戦いで勝利する可能性は低いもの。ぜひ知っておきたいのが、意外と知らない自分の尿酸値です。採血しないとわかりませんが、機会があればぜひ把握しておきたいところです。

また、冷えは万病とはいいませんが痛風発作の元ともいえます。その意味で、簡単に実行できる朝の足指の痛風発作予防の戦術として、寝る時にスニーカー用の靴下を履いて足指を冷やさないようにすることをオススメしたいと思います。尿酸値が高くならないように、できるだけ生活習慣を整えて、真夏のビールの楽しみを失わない生活を心がけましょう。
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